(扉)特集にあたって
植木浩二郎 Ueki, Kohjiro
国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター
野田光彦 Noda, Mitsuhiko
国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科
糖尿病臨床の領域において,もとより腎障害は究極のテーマであるが,最近の新たな治療手法の開発によって格別に関心の高い領域になっているといって間違いないであろう.ことにSGLT2阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に関する近年の臨床研究の成果は,まさに新時代への時を告げたともいえ,Nrf2活性化薬の開発とも相俟って,治療スキームの急転回への号砲が鳴っているともいえるであろう.
今回の企画は,このような状況下で,糖尿病における腎障害というすこぶる重要な命題に対して,いずれも各分野に造詣の深い先生方に執筆をお願いした.一読してご理解いただけるように,各論文とも,基礎的な概念から実際の治療の方策に至るまで,広く,かつ掘り下げて論述されており,味読すべき内容となっている.
まず冒頭では,伊藤麻里江先生と南学正臣先生に,糖尿病性腎臓病において酸化ストレスが作用する機序を皮切りに,Nrf2活性化薬について,その基礎から臨床までを詳細に論考していただいた.次いで,福田顕弘先生と柴田洋孝先生に,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬について,糸球体の血行動態の変化を含め,豊富なデータを展開していただき,また,久米真司先生には尿細管再吸収の観点から,SGLT2阻害薬のさまざまなエビデンスについて,具体的な情報を手際よくおまとめいただいている.
後半では,内田啓子先生に,腎性貧血の病態と治療について,日本腎臓学会のHIF-PH阻害薬の適正使用に関するrecommendationもふまえてわかりやすく情報発信していただき,辻本吉広先生と繪本正憲先生には,深化を続ける腎代替療法について,その現在地とチーム医療の到達点を幅広にご解説いただいた.最後に本田佳子先生には,糖尿病性腎症の栄養食事療法について,微量アルブミン尿期から保存期,腎不全期を俯瞰するかたちで,最新の知見に立脚した治療プラニングを明瞭にご提示いただいている.
さらに,今回の企画を担当した編者の一人である植木は,糖尿病に関するわが国の代表的な臨床研究の一つであるJ-DOIT3からみたわが国の糖尿病性腎臓病の重症化予防について,特集冒頭の“特別寄稿”で論じている.
本特集の執筆陣は,深い見識と専門性を有する方々であり,それぞれに糖尿病における腎障害の側面に光を当てていただいている.ご執筆の先生方のご尽力を多とするとともに,格好の話題を提供する今回の解説群によって,読者諸賢の本領域への理解がさらに深まり,得られたものを臨床の現場にフィードバックしていただければ,編者としてこのうえない喜びである.
特集 ■糖尿病性腎臓病:守りから攻めへ ─ネフロン回復への号砲が鳴る─
(扉)特集にあたって(3月23日up)
植木浩二郎/国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター
野田光彦/国際医療福祉大学市川病院 糖尿病・代謝・内分泌内科
特別寄稿 J-DOIT3にみるわが国の糖尿病性腎臓病の重症化予防(3月23日up)
植木浩二郎/国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター
1.糖尿病性腎臓病の病態生理と薬物療法 ─酸化ストレスとNrf2活性化薬(3月23日up)
伊藤麻里江/マイアミ大学 腎臓内科
南学正臣/東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
2.糖尿病性腎臓病の病態生理と薬物療法 ─血行動態とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(3月23日up)
福田顕弘 柴田洋孝/大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座
3.糖尿病性腎臓病の病態生理と薬物療法 ─尿細管再吸収とSGLT2阻害薬(3月23日up)
久米真司/滋賀医科大学 糖尿病内分泌・腎臓内科
4.腎性貧血の病態生理と治療 ─HIF-PH阻害薬,エリスロポエチン製剤を含めて(3月23日up)
内田啓子/東京女子医科大学医学部 内科学講座 腎臓内科学分野
5.腎代替療法:最新の動向 ─透析医療と移植医療(3月23日up)
辻本吉広/社会医療法人愛仁会井上病院 腎臓・透析部門
繪本正憲/大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学
6.糖尿病性腎症の栄養食事療法 ─微量アルブミン尿期・保存期・不全期(透析期)(3月23日up)
本田佳子/女子栄養大学 栄養学部 医療栄養学研究室