2.糖尿病性腎臓病の病態生理と薬物療法 ─血行動態とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
─ネフロン回復への号砲が鳴る─
2.糖尿病性腎臓病の病態生理と薬物療法
─血行動態とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
Vol.39 No.2(2022年3・4月号)pp.145-152

福田顕弘 Fukuda, Akihiro
柴田洋孝 Shibata, Hirotaka
大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座
はじめに
世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており,2019年現在で糖尿病有病者数は4億6,300万人に上り,有効な対策を施さなければ,2030年までに5億7,800万人に,2045年までに7億人に増加すると予測されている.また,糖尿病性腎症(diabetic nephropathy:DN)を原疾患とする新規血液透析導入患者の数は2000年以降増え続けており,患者の生活の質(QOL)低下が問題となっている.さらに,2019年の糖尿病関連医療費は約83兆円で2017年から4.5%増加し,世界の主な国で全医療費の10%を占め,医療経済上も深刻な問題となっている 1).
典型的なDNは,初期にはアルブミン尿は認めないが徐々に微量アルブミン尿が出現し,その後顕性蛋白尿を経て,急速な腎機能低下による末期腎不全に至る病態である.近年,糖尿病治療の進歩による糖尿病コントロールの改善,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬の使用,高齢化などにより微量アルブミン尿や蛋白尿を伴わずに腎機能が低下する非典型的な症例が増加しており,さまざまな臨床経過をたどる糖尿病がその病態に関与している慢性腎臓病を,包括して糖尿病性腎臓病(DKD)と呼ぶようになった.DKDの病態については解明されていない点も多く,本稿では典型的なDNにおける糸球体の血行動態の変化と,ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の役割および効果について大規模臨床試験の結果も含めて概説する.
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