日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」 糖尿病領域ではGLP-1受容体作動薬とGIP/GLP受容体作動薬を追記

GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP受容体作動薬を「特に慎重な投与を要する薬物」に追加
日本老年医学会は、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。高齢者で薬物有害事象の頻度が高く、重症例が多いことを背景に、高齢者薬物療法の安全性を高める目的で作成したガイドライン。「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」「開始を考慮するべき薬物のリスト」も大幅アップデートした。
ガイドラインの対象となっているのは、75歳以上の高齢者や、75歳未満のフレイルのある患者や要介護者。遭遇頻度が高い疾患ごとにクリニカルクエスチョンと薬物リストを提示し、診療での具体的な注意点を、最新エビデンスにもとづいて解説している。
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用指針」をふまえ、高齢患者向けの処方を見直すプロセスでは、高齢者総合機能評価(CGA)なども利用し、総合的に評価してポリファーマシー関連の問題点を確認することや、多職種共同の必要性などを表記した。
糖尿病の治療薬では、GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬が「特に慎重な投与を要する薬物」に追加された。吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振などに注意し、加齢にともなうフレイルやサルコペニアのある患者では、体重減少に注意しながら投与の可否を慎重に判断する必要があるとしている。
抗コリン薬による薬物有害事象と相互作用の減少を狙いとした「日本版抗コリン薬リスクスケール」なども盛り込み、過活動膀胱の治療でつかうβ3受容体作動薬なども「開始を考慮するべき薬物」に追加した。
日本老年医学会
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025 主な内容 |
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Ⅰ | ガイドライン改訂にあたって |
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II | 高齢者薬物療法の注意点 1 薬物有害事象の回避 2 服薬管理・支援と一元管理 |
III | 高齢者の処方適正化スクリーニングツール 「特に慎重な投与を要する薬物」のリスト 「開始を考慮するべき薬物」のリスト |
IV | 領域別指針 1 BPSD 2 不眠症 3 うつ病 4 認知症(中核症状) 5 パーキンソン病 6 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 7 肺炎 8 不整脈 9 抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬) 10 心不全 11 高血圧 12 慢性腎臓病(CKD) 13 脂質異常症 14 糖尿病 15 便秘 16 GERD 17 骨粗鬆症 18 過活動膀胱 19 前立腺肥大症 20 薬剤師の役割 |
付録 | 日本版抗コリン薬リスクスケール |
「高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024」「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドブック」の公開も開始

日本老年医学会は、「高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024」の全文と、「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドブック」の公開も開始した。
高齢者診療では、主訴の疾患に加えて、背景にある疾患や併存症、認知機能、社会的背景など多くが重なり、診療を難しくしている。高齢者総合機能評価(CGA)は、高齢者を身体面、精神・心理面、社会・環境面などから、総合的に評価するためのツールで、疾患に加えて、日常生活動作(ADL)、認知機能、気分・意欲・生活の質(QOL)、療養環境、社会的背景なども評価項目に含まれる。
日本老年医学会 |
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