アジア太平洋諸島系で過体重・肥満の若者は前糖尿病の有病率が2倍以上

2025.08.07
 若年の過体重・肥満者における前糖尿病の有病率が、人種/民族によって異なることを示すデータが報告された。米国在住のアジア太平洋諸島系(Asian/PI)の集団の有病率は、非ヒスパニック系白人に比べて2倍以上に上るという。米スタンフォード大学アジア人健康研究・教育センターのAdrian Matias Bacong氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に6月30日掲載された。

 この研究は、米カイザー・パーマネンテ北カリフォルニア加入者の医療データを用いて実施された。解析対象は、2012~2019年の小児科受診時に、過体重(BMIが85~95パーセンタイル未満)または肥満(同95パーセンタイル以上)で、過去1年以内にHbA1cが測定されていて、糖尿病既往のない10~17歳の若年者。このうち白人が2万540人で、Asian/PIは1万6,508人。糖尿病は、HbA1c6.5%以上、糖尿病の診断または血糖降下薬処方の記録で定義されている。なお、Asian/PIの解析対象者の内訳は、フィリピン人4,247人、中国人1,445人、南アジア人1,324人、ハワイ先住民/太平洋諸島民(NHPI)1,130人、ベトナム人440人で、残り7,922人はその他の人種/民族。

 HbA1c5.7~6.4%を前糖尿病と定義すると、その有病率は非ヒスパニック系白人が11.9%であるのに対して、Asian/PIは26.9%で有意に高かった(P<0.001)。より細かく上記のサブグループ別に有病率を見た場合、NHPIが32.0%、南アジア人が31.0%、フィリピン人28.2%、中国人25.9%、ベトナム人18.4%となった。

 次に、修正ポアソン回帰法により年齢、性別、BMI、近隣の貧困指数、受診年を調整し、非ヒスパニック系白人を基準として前糖尿病の調整有病率比(aPR)を算出。その結果、南アジア人はaPR2.80(95%信頼区間2.57~3.05)、NHPIはaPR2.44(同2.23~2.67)、フィリピン人はaPR2.18(2.06~2.32)、中国人はaPR2.18(1.99~2.39)、ベトナム人はaPR1.68(1.38~2.04)となり、すべての人種/民族で非ヒスパニック系白人より有意に高いaPRが観察された。

 これらの結果は、性別および過体重/肥満で層別化した解析でも同様であった。例えば、過体重では南アジア人がaPR2.98(2.57~3.45)で最もaPRが高く、ベトナム人がaPR2.02(1.50~2.71)でAsian/PIの中では最も低かった。肥満でも同様に、南アジア人がaPR2.73(2.46~3.04)、ベトナム人がaPR1.50(1.16~1.95)だった。

 著者らは、「過体重または肥満のAsian/PIの若者は前糖尿病リスクが高い。この集団に対する前糖尿病のスクリーニングが不可欠である」と述べている。

(HealthDay News 2025年7月29日)

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