「食行動のクセ」がGLP-1受容体作動薬の2型糖尿病治療効果と関連  岐阜大学・京都大学ら

2025.10.17
岐阜大学、京都大学らの研究チームは、2型糖尿病および肥満症治療薬として臨床使用されているGLP-1受容体作動薬の治療効果が、「食行動のクセ」と関連していることを明らかにしたと報告した。

 GLP-1受容体作動薬は、膵臓でのインスリン分泌促進による血糖低下作用とともに、中枢神経における食欲抑制作用を持つ。しかしながら、血糖値や体重の改善度合いには個人差があり、その理由の一部は明らかになっていない。血糖値への効果の違いには膵β細胞の残存量が関係していることがわかっている。一方で体重への効果の違いには、「食べ方のクセ(食行動)」が影響している可能性があるとされてきたが、これまで十分な研究は行われていなかった。

 そこで、研究チームは、岐阜県内の4つの病院(岐阜大学医学部附属病院、松波総合病院、岐阜市民病院、岐阜県総合医療センター)でGLP-1受容体作動薬(リラグルチド、デュラグルチド、経口セマグルチド、注射セマグルチド)を服用開始する2型糖尿病をもつ人を対象に前向きに観察研究を行い、食べ方のクセとGLP-1受容体作動薬の効果(HbA1cや体重の変化)との関係を検討した。

 食べ方のクセは、「日本語版オランダ摂食行動質問票(DEBQ-J)」を使い、「外発的摂食行動=食べ物の見た目や匂いといった外からの刺激につられて食べてしまう傾向」「情動的摂食行動=怒りや不安など、感情の変化で食べてしまう傾向」「抑制的摂食行動=ダイエットや健康管理のために、自分で食事を控えようとする傾向」という3つのタイプに分類して評価された。質問票で得られるスコアが高いほど、その行動が強く出るタイプとされる。

 GLP-1受容体作動薬による治療を1年間続けた結果、HbA1c、体重、体脂肪率は統計学的に有意に改善した(いずれもp<0.001)。また、GLP-1受容体作動薬治療による食行動の改善を見ると、外発的摂食行動のスコアは治療開始3ヵ月後から1年後まで有意に低下していた(p<0.01)。一方、情動的摂食行動と抑制的摂食行動は治療の初期には変化が見られたが、1年後には元の状態に戻ってしまう傾向が見られた。

 本研究ではさらに、ベースラインにおける食行動のクセと薬剤効果の関係を分析している。その結果、ベースライン時に外発的摂食行動の傾向が強かった患者では統計学的に有意に体重が減っており(p=0.03)、HbA1cの改善も大きい傾向にあった。一方で、情動的摂食行動や抑制的摂食行動の傾向が強かった患者では体重もHbA1cも統計学的に改善されなかった。

 以上の結果より、GLP-1受容体作動薬の治療を始める前に、質問票を使って患者の食行動のクセを把握することで、治療効果をある程度予測できる可能性が示された。

 研究チームは「今回の研究は、GLP-1 受容体作動薬を使い始める2型糖尿病をもつ人を対象にした観察研究であり、因果関係までははっきり示すことができない。そのため今後は、より多くの人のデータを集めて詳しく分析したり、ランダム化比較試験を行ったりすることで、「食べ方のクセ」と GLP-1受容体作動薬の効果の関係をさらに明らかにしていく」と述べている。

 本研究は岐阜大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌代謝内科学の小出祐也氏、加藤丈博氏、恒川新氏、京都大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・栄養内科の矢部大介氏および岐阜大学医学部附属病院、松波総合病院、岐阜市民病院、岐阜県総合医療センターのメンバーで構成されるG-DIET研究チームにより行われた。研究結果は2025年9月17日付で学術誌『Frontiers in Clinical Diabetes and Healthcare』オンライン版に公開されている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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