日本における妊娠糖尿病既往女性、産後糖尿病スクリーニング率は3割にとどまる 横浜市立大学

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常であり、日本では妊婦の約7〜9%に見られる比較的頻度の高い疾患である。妊娠糖尿病の多くは出産後に一旦改善するが、その後の人生で2型糖尿病を発症するリスクが7〜10倍に上昇することが知られている。実際に、出産直後もしくは数年以内に糖尿病あるいは耐糖能異常を発症する女性も少なくないため、出産後早期に血糖値の検査を行い、リスクのある人を早期に発見して生活習慣改善や治療につなげることが重要である。「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」では、妊娠糖尿病を経験した女性に対し、産後6〜12週の時点での75g OGTT実施が推奨されている。しかし、日本における出産後の 75g OGTTの実施状況については、これまで十分に調べられていなかった。
そこで研究グループは、全国の健康保険組合のレセプトデータ(JMDC Claims Database)を用い、妊娠糖尿病を経験した女性が出産後6~12週の推奨期間に75g OGTTをどの程度受けているのかを調べた。対象は2012~2020年度に出産した2,282人の女性であった。その結果、産後6~12週の推奨期間内に検査を受けた人は28.7%にとどまった。また、2012年度から2020年度にかけてその割合は増加傾向にあったが、最も高かった2020年度においても33.2%(181人/546人)にとどまった。
解析対象期間を産後4週から1年以内に拡大すると、受検率は約65%と高まったものの、依然として3人に1人以上が検査を受けていなかった。さらに、分娩施設と妊娠糖尿病を管理した施設が異なる場合には、同一施設で管理された場合に比べ受検率が低いこともわかった。
また、妊娠糖尿病既往女性の産後の血糖管理推進を目的として2020年度から国が新たに導入した「在宅妊娠糖尿病患者指導管理料2」の算定率は13%と低く、制度がまだ十分に活用されていない実態も明らかになった。
研究グループは「本研究は、日本における出産後の糖尿病予防体制の課題を示すとともに、政策立案や医療現場での改善に重要な示唆を与えるものである」と述べている。
本研究は、横浜市立大学医学部公衆衛生学の教授 後藤温氏、同公衆衛生学・産婦人科学 吉岡俊輝氏(博士課程3年)らの研究グループによって実施され、研究成果が2025年10月6日付けで国際学術誌「BMJ Open」に掲載された。





