eGFRcrとeGFRcysの乖離が予後不良と関連――ASN

eGFRの推算にはクレアチニンまたはシスタチンCが用いられ、筋肉量が少ない高齢者などでは前者は実際よりも高値となりやすいことが知られている。ただし、実臨床において両者の乖離が発生する頻度や程度、およびその乖離と予後との関連は明らかにされていない。Estrella氏らは、慢性腎臓病(CKD)の国際コンソーシアム(Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium;CKD-PC)参加者のデータを用いてこの点を検討した。
解析対象は、23件の外来患者コホートからの82万1,327人(平均年齢59±12歳、女性48%、糖尿病13.5%、高血圧40%)と、2件の入院患者コホートからの3万9,639人(67±16歳、女性31%、糖尿病30%、高血圧72%)。eGFRcysがeGFRcrより30%以上低い場合を「eGFRの極端な負の乖離(eGFRdiff)」と定義し、その頻度を主要評価項目とした。また、そのような極端なeGFRdiffと、全死亡、心血管死、動脈硬化性心血管疾患、心不全、および腎代替療法を要する腎不全のリスクとの関連を副次的に評価した。
主要評価項目であるeGFRdiffの極端な負の乖離は、外来患者の11%に認められ、入院患者では35%に認められた。外来患者を平均11±4年追跡したところ、eGFRdiffが-30~30%の群と比較して、eGFRの極端な負の乖離が認められた群は、全死亡(1,000人年当たり28.4対16.8、ハザード比〔HR〕1.69〔95%信頼区間1.57~1.82〕)、心血管死(同6.1対3.8、HR1.61〔1.48~1.76〕)、動脈硬化性心血管疾患(13.3対9.8、HR1.35〔1.27~1.44〕)、心不全(13.2対8.6、HR1.54〔1.40~1.68〕)、腎代替療法を要する腎不全(2.7対2.1、HR1.29〔1.13~1.47〕)のリスクが、いずれも有意に高いことが示された。
論文の共著者の1人である米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のMorgan E. Grams氏は、「われわれの研究結果は、特に高齢者や重度の疾患を有する患者において、腎機能を正確に把握するためにクレアチニンとシスタチンCの両方を測定することの重要性を強調するものだ」と述べている。
なお、数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年11月10日]
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