糖尿病予防プログラム(DPP)の終了後も糖尿病の予防効果は21年間持続 生活習慣介入はメトホルミンよりも優れている

メトホルミン投与よりも徹底的な生活習慣改善のほうが効果的
米国糖尿病予防プログラム(DPP)で実施された、前糖尿病(prediabetes)の成人3,234人を対象とした3年間のランダム化臨床試験の終了後に、集中的生活習慣介入(ILS)群では2型糖尿病の発症率は58%減少し、メトホルミン投与群の31%減少よりも優れていることが示された。
このほど新たに完了した追跡調査では、DPPの生活習慣改善の介入による健康効果は、20年以上持続していることが示された。21年の追跡期間中の糖尿病の発症は、生活習慣介入群で24%減少し、メトホルミン群では17%減少した。2型糖尿病のリスクのある成人の糖尿病発症を予防するには、メトホルミンの投与よりも徹底的な生活習慣改善のほうが効果的であることが明らかになった。
研究は、米ジョージワシントン大学公衆衛生学部のWilliam Knowler氏、ニューメキシコ大学健康科学センターのVallabh Shah氏らによるもの。研究成果は、「Lancet Diabetes and Endocrinology」に掲載された。
米国糖尿病予防プログラム(DPP)は、1996年に開始された大規模なランダム化臨床試験で、主に生活習慣の改善や薬剤(メトホルミン)の投与により、2型糖尿病の危険因子に介入することで、糖尿病の発症を予防あるいは遅延できるかを調査した。
DPPの開始当時、メトホルミンは2型糖尿病の治療薬として、新たに米国食品医薬品局(FDA)により承認された。
DPPには、米国の22の州の30施設で3,234人の糖尿病前症の成人が登録され、ベースラインの平均年齢は50.6歳、追跡期間は0.2~23.2年だった。DPPはプロトコルを修正してDPPアウトカム研究(DPPOS)として継続され、DPPOSではプラセボ投与が中止され、メトホルミンの忍容性に応じた850mgの1日2回投与が継続された。生活習慣介入群にはグループベースのより積極的な生活習慣介入クラスが年2回提供され、加えてすべての参加者にグループベースの介入が年4回提供された。
DPPおよびDPPOSでの主要評価項目は、米国糖尿病学会(ADA)の基準で定義された糖尿病発症だった。DPPOSのプロトコルでは、継続的な糖尿病発症をアウトカムとして指定。糖尿病発症に対する介入効果の長期持続性と、ベースラインの糖尿病リスク因子によって定義されたサブグループでの効果を評価した。
その結果、21年の追跡期間中の、糖尿病の発症率のプラセボ群との比較は、生活習慣介入群はハザード比(HR) 0.76になり[95%信頼区間 0.68~0.85]、発生率差(RD)は100人年あたり-1.59[同 -2.25~-0.93]だった。それに対して、メトホルミン群はHR 0.83になり[同 0.74~0.93]、RDは-1.17[-1.85~-0.49]とだった。糖尿病発症を予防するには、メトホルミンの投与よりも徹底的な生活習慣改善のほうが効果的であることが示された。
糖尿病の累積発症率曲線は、最初の3年間で早期に分離し、メトホルミン群と生活習慣介入群の発症率はプラセボ群よりも低かった。メトホルミン群と生活習慣介入群の曲線は、追跡期間が長くなるにつれて徐々に収束した。全体的な治療効果は、DPPの期間中の大きな初期効果に起因するものと考えらるとしている。
プラセボに対するRDとして測定した絶対介入効果は、ベースラインの空腹時血糖値、HbA1c、および多変量臨床・生理学的リスク指標の高い参加者では、生活習慣介入群の方が大きく、若い参加者ではメトホルミン群の方が大きかった。
「DPPで観察された初期の大きな介入効果に続き、糖尿病の累積発症率は20年以上にわたり持続的に減少した。介入効果はいくつかのベースライン変数によってばらつきはあるものの、今回の研究で得られた知見は、現在の2型糖尿病の蔓延に対処するための精密医療による介入の指針となる可能性がある」と、Shah氏は述べている。
Over Decades, A Healthy Lifestyle Outperforms Metformin in Preventing Onset of Type 2 Diabetes (ニューメキシコ大学 2025年7月2日)
Long-term effects and effect heterogeneity of lifestyle and metformin interventions on type 2 diabetes incidence over 21 years in the US Diabetes Prevention Program randomised clinical trial (Lancet Diabetes and Endocrinology 2025年6月)