GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病患者の認知症リスク低下と関連

2025.08.21

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が認知症リスクを低下させる可能性を示すデータが報告された。鄭州大学人民医院(中国)のMingyang Sun氏らの研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」に7月22日掲載された。

 GLP-1RAやメトホルミンは、2型糖尿病患者に対する潜在的な神経保護作用のあることが報告されているが、認知症予防という点での有用性を直接比較した研究はこれまでなかった。Sun氏らは、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベース(TriNetX global federated health research network)を用いた後ろ向きコホート研究を行い、認知症罹患に対する両薬剤の影響を検討した。

 2004~2024年に、第一選択の単剤療法としてGLP-1RAまたはメトホルミンが処方されていた患者から、傾向スコアマッチングにより背景因子を一致させ、各群8万7,229人から成るデータセットを作成し、認知症の累積罹患率をCox比例ハザードモデルで比較した。共変量としては、年齢、性別、人種/民族、BMI、HbA1cを含む臨床検査値、併存疾患(高血圧、虚血性心疾患、脳血管疾患など)、併用薬(インスリン、SU薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、スタチンなど)を考慮した。

 認知症の累積罹患率は、GLP-1RA群が2.4%、メトホルミン群は4.8%であり、前者が有意に低かった(調整ハザード比〔aHR〕0.90〔95%信頼区間0.85~0.95〕)。認知症のサブタイプ別に見ると、アルツハイマー病(GLP-1RA群1.2対メトホルミン群2.6%、aHR0.92〔同0.85~0.99〕)と、その他のタイプ(アルツハイマー病、血管性認知症以外)の認知症(同順に1.0対2.4%、aHR0.88〔0.81~0.96〕)のリスク差が認められ、血管性認知症については有意差がなかった(0.7対1.3%、aHR1.00〔0.91~1.14〕)。

 サブグループ解析の結果、年齢や性別を問わず、GLP-1RAの認知症抑制効果は一貫しており、特に高齢者と女性において群間差がより大きかった。具体的には、年齢については60~79歳がaHR0.85(0.80~0.90)、80歳以上はaHR0.80(0.74~0.88)であり、性別については男性がaHR0.90(0.84~0.97)、女性はaHR0.83(0.79~0.89)だった。アルツハイマー病に限ると、60~79歳がaHR0.84(0.77~0.91)、80歳以上はaHR0.81(0.71~0.92)、男性はaHR0.90(0.81~1.00)、女性はaHR0.82(0.75~0.89)だった。

 著者らは、「残余交絡が存在する可能性などの限界点があるものの、結果は全体として堅牢であり、GLP-1RAが2型糖尿病患者の認知症の予防に寄与する可能性を示唆している。この結果を確認するため、ランダム化比較試験の実施が必要とされる」と総括している。

(HealthDay News 2025年7月23日)

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