(扉)糖尿病をもつ人への社会的スティグマに対するアドボカシー活動

2021.03.15
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特集■糖尿病:社会的スティグマへのアドボカシー活動の現状―糖尿病とともに無理なく不利なく暮らせるために―
(扉)糖尿病をもつ人への社会的スティグマに対するアドボカシー活動
Vol.38 No.2(2021年3・4月号)pp.157

2021年3・4号 目次

山田 祐一郎Yamada, Yuichiro
関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター

 糖尿病患者を治療するにあたり,どのような目標を考えられているだろうか.従来,血糖などの改善を通じて,糖尿病合併症である細小血管症や大血管症の発症・進展を阻止することで,健康な人と同じ寿命あるいは健康寿命を達成することが糖尿病治療の目標とされてきた.それだけでは不十分であり,サルコペニア・フレイル・認知症・悪性腫瘍など,超高齢社会の到来に伴い増加する併存症の予防・管理もまた重要とえられるようになってきた.もうひとつ重要な課題が,糖尿病患者のスティグマ,社会的不利益,いわれなき差別の除去であると認識され,2019 年から日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が合同のアドボカシー委員会を立ち上げた.2019 年の世界糖尿病デーに合わせた新聞広告や2020 年の第56 回全国糖尿病週間で,「偏見にNo ! 糖尿病をもつ人は,あなたと同じ社会で活躍できる人です」というポスターをご覧になった方も多いと思う.
 本特集では,この合同アドボカシー委員会にも関与していただいている方に,それぞれの立場で糖尿病診療のスティグマとは何か,それに対するアドボカシー活動のありかたを語っていただいた.社会における糖尿病に対する知識不足,誤ったイメージの拡散により,糖尿病患者は「特定の属性に対して刻まれる負の烙印=スティグマ」(社会的偏見による差別,差別されるのではないかという恐怖)に苦しんでいる.スティグマを放置すると,糖尿病であることを周囲に隠し,適切な治療の機会を失うことになり,その結果として糖尿病の重症化につながる.糖尿病の正しい理解を促進する活動を通じて,糖尿病患者が安心して社会生活を送り,人生100 年時代の日本でいきいきと過ごすことができる社会形成を目指す活動(アドボカシー活動)に,糖尿病の診療を行う医療者の皆さんにぜひ積極的に関与していただきたいと思う.

特集 ■糖尿病:社会的スティグマへのアドボカシー活動の現状 ―糖尿病とともに無理なく不利なく暮らせるために―

(扉)糖尿病をもつ人への社会的スティグマに対するアドボカシー活動

 山田 祐一郎/関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター

1. 世界における糖尿病のアドボカシーの現状

 津村 和大/川崎市立川崎病院 臨床研究支援室/病態栄養治療部

2. 「生活習慣病」というラベルの歴史と国内外の動向,そして功罪

 橋本 英樹/東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 保健社会行動学分野

3. 「糖尿病」という病名と糖尿病への偏見

 庄嶋 伸浩 山内 敏正/東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科

4. 看護においてスティグマはどう考えられてきたか

 黒江 ゆり子/岐阜県立看護大学

5. 実臨床における糖尿病患者のもつスティグマ

 田中 永昭/関西電力病院 糖尿病・内分泌代謝センター

6. Self-stigma(セルフスティグマ)が糖尿病療養に及ぼす影響

 加藤 明日香/東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 保健社会行動学分野

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