2型糖尿病患者の40%が第2選択薬を中止 GLP-1受容体作動薬は50%が中止 胃腸症状が理由

2024.01.05
 GLP-1受容体作動薬が第2選択薬として処方された2型糖尿病患者のうち、半数(50.3%)は投薬が中止されていたという調査結果を、米ノースウェスタン大学が発表した。中止の理由は、悪心・嘔吐・下痢などの胃腸症状が多かった。

 不適切に投薬を中止したり、別の薬剤に変更する、治療を強化する(投与量を増やす、薬剤を追加する、インスリン治療を開始するなど)ことで、医師と患者の双方が時間を失い、医療システムで不必要な出費が発生するとしている。

 また、多くの患者が処方された薬を指示通りに服用できていないという、服薬アドヒアランスの課題もあると指摘。2014年~2017年に米国の8万2,624人の患者を調査。

GLP-1受容体作動薬を処方された糖尿病患者の50%が中止

 米国では2型糖尿病の第1選択薬としてメトホルミンが処方されることが多く、第2選択薬として何を選択するかは課題になっている。

 GLP-1受容体作動薬が第2選択薬として処方された2型糖尿病患者のうち、半数(50.3%)は投薬が中止されていたという調査結果を、ノースウェスタン大学が発表した。中止の理由は、悪心・嘔吐・下痢などの胃腸症状が多かった。

 研究は、同大学医学部一般内科研究のDavid Liss准教授らによるもので、研究成果は、「American Journal of Managed Care」に掲載された。

 研究グループは、米国の2型糖尿病の成人8万2,624人を対象に、民間医療保険の請求を2014年~2017年のうち12ヵ月追跡し、第2選択薬として使用されたインスリン製剤以外の5つのクラスの血糖降下薬[SU薬・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・チアゾリジン薬]について、投薬の中止・切り替え・強化の3つの治療変更について調査・評価した。

 その結果、3分の2(63.6%)の患者で1年以内になんらかの治療変更が発生しており、もっとも一般的にみられたのは中止(38.6%)であり、とくにGLP-1受容体作動薬が処方された患者で50.3%と顕著だった。さらに、薬剤の変更は5.2%で、強化は19.8%で、それぞれ発生していた。

 調整分析では、投薬中止はSU薬が処方された患者に比べ、DPP-4阻害薬が処方された患者で7%高く[HR 1.07、95%CI 1.04~1.10]、GLP-1受容体作動薬が処方された患者で28%高いことが示された[HR 1.28、95%CI 1.23~1.33]。チアゾリジン薬やSGLT2阻害薬についてはSU薬と有意差がなかった。

 薬剤変更は若い年齢層と女性の患者で多い傾向がみられ、また、内科の医師や家庭医による処方と比較して、内分泌専門医による処方では投薬の中止が低く、強化は高い傾向が示された。

GLP-1受容体作動薬の中止の理由は胃腸症状が多い

 「2型糖尿病患者のほとんどは、1年以内に治療変更を経験している。第2選択薬の中止は、すぐに高血糖症状や医学的な緊急事態につながるわけではないにしても、GLP-1受容体作動薬をはじめとする5クラスの薬剤のすべてに共通して、投薬中止は好ましいことではない」と、Liss准教授は述べている。

 「患者の服薬アドヒアランスを最大限に高め、医療システムの無駄を削減するために、新しい処方アプローチと患者に対するサポートが必要であることが浮き彫りになった」としている。

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の血糖管理および減量のために使用されており、その中止の理由は、悪心・嘔吐・下痢などの胃腸症状が多かった。

 「OzempicやWegovyなどのGLP-1受容体作動薬は、米国では2型糖尿病だけでなく肥満症の治療でも使用されている。これらの薬剤に、胃腸への副作用があることが知られている」と、Liss准教授は指摘する。

 さらに、内科の医師や家庭医による2型糖尿病の第2選択薬の処方では、内分泌専門医による処方と比較して、投薬の中止や増悪のリスクが高い傾向が示された。

 この違いについて、専門医は糖尿病治療薬について専門の最新情報を知っており、処方を決定する際に薬剤の長所と短所についてより慎重に検討している可能性を指摘している。

糖尿病患者の服薬アドヒアランスも課題に

 また、今回の調査では確認できていないが、治療の変更や強化を経験した糖尿病患者は、原則としてかかりつけ医との相談のうえでそれを選択しているが、医師に相談せずに勝手に投薬中止に踏み切った患者も多いだろうと推測している。

 「多くの患者が処方された薬を指示通りに服用できていないという、服薬アドヒアランスの課題もある。医療従事者が患者による服薬中止の事象を十分に把握できていない可能性がある」と、Liss准教授は指摘している。

 「今回の結果は、患者と医師などのあいだで、薬の効果、副作用、医療費などについて、薬剤の投与の開始時だけでなく、時間の経過とともにコミュニケーションを継続していく必要があることを浮き彫りにしている」としている。

Nearly 40% of Type 2 diabetes patients stop taking their second-line medication (ノースウェスタン大学 2023年12月12日)
Treatment Modification After Initiating Second-Line Medication for Type 2 Diabetes (American Journal of Managed Care 2023年12月12日)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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