GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病患者の大腸がんリスクを低下 肥満や糖尿病に関連するがんの予防に有用である可能性
GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病患者の大腸がんリスクを低下 インスリンやメトホルミンなどと比較
2型糖尿病の治療に使用されているGLP-1受容体作動薬が、大腸がん(結腸がん・直腸がん)のリスクも低下させる可能性があるという研究を、米国のケース ウェスタン リザーブ大学が発表した。研究成果は、「JAMA Oncology」に掲載された。
「GLP-1受容体作動薬の結腸がん・直腸がんの発症予防の効果は、メトホルミンやインスリンなどの一般的な血糖降下薬に比べ、大幅に高いことが示された」と、同大学がん総合センターのNathan Berger教授は言う。
「GLP-1受容体作動薬など、ある種の薬剤が結腸がん・直腸がんのリスクを低下させる可能性を検証する臨床試験の実施が期待される。こうした致死性の高いがんは、罹患数と死亡数が世界的に多く、肥満や糖尿病とも関連している」としている。
研究グループは今回、GLP-1受容体作動薬の、血糖降下・減量・免疫機能の調節などに対する多面的な効果に着目し、大腸がんの発生率の低下にもつながる可能性について検討した。
2型糖尿病患者を対象に、大腸がんの発生率との関連を、7種類の糖尿病薬[GLP-1受容体作動薬・メトホルミン・インスリン・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・SU薬・α-グルコシダーゼ阻害薬・チアゾリジン薬]で比較する全国的な後ろ向きコホート研究を実施した。
米TriNetX社が保有する全米の59の医療機関の約1億120万人の患者の匿名化された電子医療記録(EHR)データベースを使用した。このEHRには約740万人の2型糖尿病患者が含まれおり、最終的に122万1,218人の2型糖尿病患者を平均15年間追跡して調査した。
その結果、GLP-1受容体作動薬による治療を受けた患者では、インスリン治療を受けた患者に比べ、大腸がんの発症率が44%減少したことが示された[HR 0.56、95%CI 0.44~0.72]。
メトホルミンとの比較でも、GLP-1受容体作動薬では大腸がんの発症率が25%減少した[HR 0.75、95%CI 0.58~0.97]。
とくに過体重・肥満のある2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬はインスリンやメトホルミンなどに比べ大幅に有利であることが示された[対インスリン:HR 0.50、95%CI 0.33~0.75、対メトホルミン:HR 0.58、95%CI 0.38~0.89]。
DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・SU薬・α-グルコシダーゼ阻害薬・チアゾリジン薬に関しては、統計的な有意差は示されなかった。
なお、インスリン治療を受けた糖尿病患者2万2,572人のうち、167人が大腸がんを発症し、GLP-1受容体作動薬による治療を受けた患者2万2,572人うち94人が大腸がんを発症した。
研究グループは今夏キイ、性別・民族・年齢などの人口動態、健康の社会経済的不利な決定要因、既存の病状、がんや結腸ポリープの家族歴や個人歴、生活スタイル要因(運動・食事・喫煙・アルコールなど)について、傾向スコアを一致したうえで解析した。
「今回の研究は、GLP-1受容体作動薬が他の血糖降下薬に比べて大腸がんの発症率を減少させることをはじめて示したものだ。過体重や肥満の有無にかかわらず、糖尿病患者の大腸がんの発症率を減らすために非常に重要となる」と、Berger教授は述べている。
過体重・肥満および2型糖尿病の患者は、大腸がんなどの発症率が高いことが知られている。米国国立衛生研究所(NIH)によると、米国の成人の約75%が過体重あるいは肥満であり、2歳~19歳の小児・若年者の約20%が肥満だという。
米国がん学会は、米国でがんの部位別にみて大腸がんの新規症例数は男女とも3番目に多く、年間の15万3,000人と推定している。大腸がんによる死亡数は年間5万2,550人で、がんの第2位になっている。
New Case Western Reserve University study finds diabetes drug may reduce risk for colorectal cancer (ケース ウェスタン リザーブ大学 2023年12月7日)
GLP-1 Receptor Agonists and Colorectal Cancer Risk in Drug-Naive Patients With Type 2 Diabetes, With and Without Overweight/Obesity (JAMA Oncology 2023年12月7日)