1型・2型・妊娠糖尿病の妊婦におけるCGM・AID適用に関する国際コンセンサスステートメント発表 CGM目標値を提示
1型・2型・妊娠糖尿病の妊婦における持続グルコースモニタリング(CGM)および自動インスリン注入(AID)システムの適用に関する国際コンセンサスステートメントがこのたび発表された。
日本糖尿病学会を含む世界の24学会・団体によって承認されたもので、急速に普及するCGM・AIDを妊娠期にどう適用すべきか、エビデンスに基づいた推奨事項と具体的な血糖管理目標値が示された。
本ステートメントは、「The Lancet Diabetes & Endocrinology」オンライン版に2025年12月17日付で公開され、2026年2月号に掲載された。

妊娠はインスリン抵抗性が増大する状態であり、妊娠前からの1型または2型糖尿病を有する女性、および妊娠糖尿病(GDM)の女性において、母体および新生児の合併症リスクを低減するために厳格な血糖管理が求められる。糖尿病テクノロジーの進歩により、非妊娠時の1型糖尿病管理ではCGM・AIDシステムが標準治療となりつつあるが、妊娠期におけるCGM・AIDシステムの安全性と有効性に関するデータも蓄積されつつある。
本ステートメントは、妊娠中の1型・2型糖尿病およびGDM管理に対するCGM・AIDシステムを用いた最適なケアについて、エビデンスに基づいた推奨事項をまとめている。なお、本ステートメントで提示された推奨事項や目標値は、今後さらなる研究データが得られるにつれて更新される可能性がある。特に2型糖尿病およびGDMにおけるCGMの役割や具体的な目標値については、より大規模なRCTが必要とされている。
1型糖尿病
妊娠合併症(NICU入室、LGA児、新生児低血糖の発生など)を減らすために、妊娠前の血糖を最適化する目的で、すべての1型糖尿病女性にCGMの使用が推奨されている。本ステートメントでは、妊娠前のHbA1c目標として7.0%未満、可能であれば6.5%未満を推奨している。また、AIDシステムについては、妊娠中の使用に関するランダム化比較試験(RCT)のエビデンスがあり、可能であれば妊娠前から開始することを推奨しているが、計画外妊娠の場合でも妊娠が確認され次第(通常、妊娠7〜8週)開始すべきとしている。
妊娠中の1型糖尿病管理においても、CGMの使用は強く推奨されている。国際的なRCTであるCONCEPTT試験では、CGMの使用は自己血糖測定(SMBG)と比較して、LGA児の出生率低下、NICU入室率低下、重症新生児低血糖の減少に関連することが示されている。また、AIDシステムの使用は、標準的なインスリン療法と比較して、妊娠中のTime in Range(TIR)を有意に改善し、母体の低血糖や高血糖時間を短縮することが示されている。
妊娠中のCGM指標として、通常のTIR(70~180mg/dL)とは異なる、妊娠期特有のTIRp(Pregnancy Time in Range:63~140mg/dL)が設定されている。この範囲は、より厳格な血糖管理が求められる妊娠期において、母児の安全性を確保するために定義されたものである。
AIDシステムは、分娩中および産後直後においても継続して使用することが推奨されている。これにより、インスリン静脈内投与への切り替えを回避しつつ、良好な血糖管理を維持できる可能性がある。産後はインスリン感受性が急激に上昇するため、インスリン投与量を妊娠後期と比較して50%以上減量(多くの場合妊娠前の20%減)し、授乳中の女性ではさらに減量する必要がある。
妊娠中のCGM目標値については、TIRpは1日あたり70%超が推奨されている。低血糖の指標であるTime Below Range(TBRp:63mg/dL未満)に関しては1日あたり4%未満(1時間未満)、より重篤な54mg/dL未満を1%未満(15分未満)、また、高血糖の指標であるTime Above Range(TARp:140mg/dL超)は1日あたり25%未満(6時間未満)とすることが推奨されている。HbA1cについては達成可能な場合6.5%未満を目標とし、平均グルコース濃度は108~120mg/dLが提案されている。
2型糖尿病
2型糖尿病の女性では、先天異常を減らすために妊娠前のHbA1c目標を6.5%未満とすることが推奨されている。しかし、周産期死亡、妊娠高血圧腎症、早産、LGA児、NICU入室の率を減らすためには、妊娠中のHbA1c目標を6.0%未満とすることがより適切である可能性があるとしている。妊娠中の安全性が示されている治療法を優先的に使用すべきであり、このことは妊娠前の血糖目標を達成するためにインスリンがしばしば必要になることを意味する。
すべての2型糖尿病女性に対し、妊娠前および妊娠中にSMBGによる血糖管理が推奨されている。一方、妊娠中のCGM使用に関するエビデンスは現在乏しく、実質的なRCTデータはない。しかしながら、2型糖尿病の女性は妊娠前からCGMを使用することが増えており、CGM使用中に妊娠することも多いため、利用可能なリソースや個人の希望に応じてCGMを使用してもよいとされている。
2型糖尿病妊婦に対する最適なCGM目標値について、十分なエビデンスは存在しないが、一日あたりTIRpを80%超、TBRpを4%未満、TARpを15%未満とすることが提案されている。2型糖尿病女性は1型糖尿病女性と比較して、妊娠中の血糖目標の達成率が高い傾向にあるにもかかわらず、死産や周産期死亡率が高いことが報告されており、より低い血糖目標値が必要である可能性が示唆されている。
妊娠糖尿病(GDM)
GDMにおけるCGMの使用に関するエビデンスは現時点で不十分であり、そのためすべてのGDMと診断された女性に対し、SMBGによる血糖管理が標準治療として推奨されている。一部の研究では、SMBGと比較してLGA児の減少やTIRの改善が報告されている。エビデンスは乏しいが、利用可能なリソースと個人の希望に応じてCGMの提供を考慮してもよいとされている。
一部の研究では、GDMのスクリーニング・診断としてのCGMの可能性が示唆されている。観察研究であるGLAM研究では、妊娠24~28週でGDMと診断された女性において、妊娠早期(13~14週)の段階ですでにCGM上の平均グルコース濃度が高く、TIRpが低い傾向にあった。
GDMにおけるCGM目標値は確立されていないが、国際的なコンセンサスに基づき、TIRpを1日あたり90%超とすることが提案されている。



