GIP/GLP-1受容体作動薬を中止したら減らした体重の多くが1年でリバウンド 投与を継続するとさらなる減量効果 糖尿病のない肥満患者

2023.12.21
 GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」は、過剰な体重を減らす大きな効果があることが実証されているものの、投与を中止すると1年以内に、減らした体重の多くがリバウンドするという試験結果を、米国のワイルコーネル医科大学が発表した。

 チルゼパチドを36週間投与したところ、20.9%の体重減少が得られたが、それに続く52週間、チルゼパチドの投与を継続した群は、さらに5.5%の体重減少が示されたものの、プラセボに切り替えた群では、体重の14%がリバウンドした。

 「チルゼパチドの投与を続けることで、体重減少がさらに促進されるだけでなく、代謝と心臓血管の健康状態の改善を維持することを期待できる」と、研究者は述べている。

チルゼパチドの投与を中止すると減らした体重の多くがリバウンド

 GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」は、過剰な体重を減らす大きな効果があることが実証されているものの、投与を中止すると1年以内に、減らした体重の多くがリバウンドするという試験結果を、米国のワイルコーネル医科大学が発表した。

 チルゼパチドの投与を続けると、体重減少がさらに促進されるだけでなく、代謝と心臓血管の健康状態の改善を維持することを期待できるとしている。

 研究は、ニューヨーク市にあるワイルコーネル医科大学とプレスビテリアン病院により主導された第3相ランダム化比較試験「SURMOUNT-4」によるもの。詳細は「JAMA」に掲載された。

 イーライリリー アンド カンパニーの支援を受け実施されたこの試験で、チルゼパチドは肥満に関連した健康障害に苦しむ患者を実質的に助けることができ、即効性はあるものの、減量に対する持続性のある解決策を提供するものではないことが示された。

 「肥満症を治療することは、肥満が関連する高血圧、心臓病、2型糖尿病、脂肪性肝疾患などの病気を改善することにつながる」と、サンフォード ワイル研究所および同医科大学内分泌学・糖尿病・代謝部門の教授であるLouis Aronne氏は言う。「効果が実証されている糖尿病と肥満症の治療薬があることは歓迎されるべきことだ」としている。

米国では肥満あるいは過体重の治療薬として承認

 チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬だ。

 2022年に公表された、肥満または過体重で2型糖尿病のない成人を対象とした第3相試験「SURMOUNT-1」、および肥満または過体重のある2型糖尿病の成人「SURMOUNT-2」で、チルゼパチドの72週間の投与により体重が減少することが示された。

 SURMOUNT-1では、チルゼパチドの最大用量を投与された群の3人に1人で、体重の25%に相当する減量がみられた。

 SURMOUNT-2では、チルゼパチド15mgを投与した患者は、体重が平均14.7%減少し、10mgを投与した患者は、体重が平均12.8%減少し、プラセボの3.2%と比較して大幅な体重減少が示された。

 これを受けて、米国食品医薬品局(FDA)は2023年11に月、BMI30以上の肥満、またはBMI27以上過体重の成人で、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・心血管系疾患など、体重に関連した医学的問題を有する成人での体重減少および抑制を適応として、肥満症治療薬「Zepbound」を承認した。

チルゼパチド投与により20.9%の減量 投与を継続するとさらに5.5%の減量

 ただし、チルゼパチドの減量効果は明らかであるものの、積極的な治療介入よる体重減少が、介入期間を超えて持続するかどうかについてはよく分かっていなかった。

 それを解明するために実施されたのが「SURMOUNT-4」で、2021年3月~2023年5月にアルゼンチン・ブラジル・台湾・米国の70ヵ所の医療施設で、糖尿病のない肥満あるいは過体重の患者670人を対象に実施された。

 チルゼパチドの最大用量を36週間投与したところ、血圧・血糖値・脂質値の改善とともに20.9%の体重減少が得られた。36週間の導入期間を完了した参加者の平均年齢は48歳、女性が71%、平均体重は107.3kgだった。

 それに続く1年間(52週間)、670人の対象者をチルゼパチドの投与を継続する群と、プラセボに切り替える群のいずれかにランダムに割り当てられ、試験は続けられた。

 その結果、チルゼパチド群では、さらに5.5%の体重減少がみられたが、プラセボ群では、体重の14%がリバウンドした。両群の差は-19.4%だった[95%CI -21.2%~-17.7%、P <0.001]。

 また、チルゼパチド群ではプラセボ群と比較して、BMI・脂質値・糖尿病の指標、血圧などの大幅な改善がみられた。

 プラセボ群では体重は、依然として試験開始時の体重よりも9.9%少なかったものの、心臓代謝の危険因子の改善は示されなかった。

 まお、もっとも一般的にみられた有害事象は、主に軽度から中等度の胃腸事象で、吐き気(35.5%)、下痢(21.1%)、便秘(20.7%)、嘔吐(16.3%)がみられた。有害事象は、プラセボ群よりもチルゼパチド群でより多く発生したが、多くは時間の経過とともに解消された。

投与中止で体重の約半分がリバウンド それでも10%の減量効果

 「チルゼパチドの投与を続けた患者では20%の体重減少が得られ、投与を継続することでさらに5%の体重が減少し、計25%の減量効果が示された。一方で、チルゼパチドの投与を中止した群では、減った体重の約半分が戻り、減量効果は10%に落ち込んだ」と、Aronne教授は述べている。

 「この試験結果は、体重の増加を防ぐために、チルゼパチドの服用を続ける必要がある可能性を示唆している。薬を止めてしまうと体重は元に戻ることを疑う余地はない。2型糖尿病も肥満症、高血圧と同じように慢性疾患であり、継続的な治療が必要になる」としている。

 なお研究グループは今回、減量を維持するための食事や運動などの集中行動療法の影響を評価しておらず、それがチルゼパチド中止後の体重増加に違いをもたらしている可能性を指摘している。

Tirzepatide Enhances Weight Loss with Sustained Treatment but Discontinuation Leads to Weight Regain(ワイルコーネル医科大学 2023年12月11日)
Continued Treatment With Tirzepatide for Maintenance of Weight Reduction in Adults With Obesity: The SURMOUNT-4 Randomized Clinical Trial (JAMA 2023年12月11日)
Lilly's Zepbound™ (tirzepatide) achieved additional 6.7% weight loss following a 36-week open-label lead-in period, for a total mean weight loss of 26.0% from study entry over 88 weeks (イーライリリー アンド カンパニー 2023年12月11日)

関連情報

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料