糖尿病治療薬の安定供給に関する要望書を厚労省に提出 GLP-1受容体作動薬の不足などを懸念 患者が安心して治療を受けられる環境を 日本糖尿病協会など
糖尿病治療薬の安定した供給体制の構築を求め要望書を提出
日本糖尿病協会(理事長:清野裕・関西電力病院 総長)は、日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会とともに、GLP-1受容体作動薬など糖尿病治療薬の安定した供給体制の構築を求め、厚生労働省に要望書を提出した。
同協会などが要望書を提出したのは、2023年11月6日で、提出者は日本糖尿病協会の清野裕・理事長、中園徳斗士・業務執行理事、矢部大介・理事(兼日本糖尿病学会監事/岐阜大学大学院)、日本くすりと糖尿病学会の佐竹正子・副理事長。
要望書の内容は以下の通り――。
- 厚労省で「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を設置し、現状把握と対策を検討していること、また、先発品だけでなく、後発品にも不安定供給が発生しているが、それらの薬価見直しについて検討していることへの謝意を表明。
- しかし、状況はいまだ改善しているとは言いがたく、現在も糖尿病医療の現場では、医療者、患者双方から、不安な思いが寄せられていることを報告。この状況の早期解消へのいっそうの注力を要望。
- また、問題解決には、医薬品を用いた治療を受ける患者の視点が重要であるため、今後の検討を進める際は、日本糖尿病協会の患者代表理事を加えて、当事者の意見を聴くことを要望。
医薬品の供給不足は患者のQOLに直結する 安心して治療を受けられる環境の早期実現を要望
日本糖尿病協会によると、今般、糖尿病の治療薬では、薬の原材料費や配送料の高騰により、先発品のみならず採算性が厳しい後発品(ミグリトール、アカルボース、ミチグリニドなど)の供給も不安定化しているという。
また、多くが海外生産に依存する薬剤は、為替の影響で海外製薬メーカーが日本への輸出にメリットをみいだせなくなるため、今後国内需要を満たすことができなくなる状況も予想される。
さらに、GLP-1受容体作動薬が、糖尿病医療以外の目的で使用されていることにより、一部製剤での限定出荷が生じているなどの影響も受けている。
「こうした状況は、治療継続が必須である糖尿病患者への影響が多大で、医薬品の供給不足は患者のQOLに直結するものとして、当事者および家族から不安の声が日糖協に寄せられている」としている。
要望書を提出して、同協会の清野・理事長と中園・患者代表理事は次のように述べている。
清野・理事長のコメント「日本の現状をふまえると、医薬品の安定供給を受ける状況とは必ずしも言えません。厚労省には医薬品の安定供給の観点から、国内生産の奨励や薬価の見直しなど、適切な対応を取っていただき、本当に医薬品を必要とする患者さんが安心して治療を受けることができる環境を早期に実現していただくことを希望します。」
中園・理事のコメント「医薬品のエンドユーザーは患者と考えます。薬が多様化するなかで、今回のような医薬品の供給不足が生じても、患者は薬の情報を自らえることができず、医師からの情報や指示に頼るしかありません。医療を受ける当事者として、行政をはじめ関係者すべての方々に対し、患者あっての医薬品であることをご理解いただき、医薬品の安定供給を検討する仕組みの中に、患者も入れていただければ幸いです。」
日本糖尿病協会では、「アドボカシー活動の一環として、今回の要望を行いました。当協会は、糖尿病のある人が安心して治療を継続できる環境づくりに、これからも注力して参ります」としている。