どのGLP-1受容体作動薬が治療効果がもっとも大きいか? 日本の2型糖尿病患者を対象に検証 横浜市立大学
日本人患者でGLP-1受容体作動薬の治療効果の違いを解析
横浜市立大学は、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(商品名:オゼンピック、リベルサス)や、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)について、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析により解析した。
その結果、▼チルゼパチドは、もっとも体重減少/HbA1c低下効果が高い、▼セマグルチドは、注射製剤も経口製剤も、従来のGLP-1受容体作動薬に比べて、体重減少とHbA1c低下効果が高い、▼HbA1c7%未満の達成は、チルゼパチドとセマグルチドで同等――といったことが明らかになった。
GLP-1受容体作動薬は、血糖管理と体重減少の効果を併せもつ糖尿病治療薬として知られている。研究グループは今回、セマグルチドやチルゼパチドを含んだ複数の臨床試験の結果を統合して解析することで、日本人患者でのこれらの薬剤の治療効果の違いを解析することを目的とした。
セマグルチド(注射・経口)は、従来のGLP-1受容体作動薬に比べて、体重減少とHbA1c低下効果が高い
3,875人の日本人患者を含む18件の研究を解析
研究グループは今回、Pubmed、Embase、Cochrane Libraryで文献検索を行い、日本人の2型糖尿病患者を対象にGLP-1受容体作動薬の効果を検証したランダム化比較試験を用いて、ネットワークメタ解析を行った。ネットワークメタ解析は、治療薬などの複数の臨床研究の結果を統計学的に統合する解析方法。解析の対象となったのは18件の研究で、3,875人の日本人患者が含まれた。
その結果、HbA1c低下効果については、全薬剤のなかでチルゼパチド(15mg)がもっとも治療効果が高く、プラセボと比較してHbA1cをおよそ2.8%低下させた。またその効果は、薬剤の用量が多いほど増加した。
注射製剤と経口製剤のセマグルチドを比較すると、注射製剤のセマグルチドの方が治療効果は大きかったものの、どちらの製剤もプラセボや従来のGLP-1受容体作動薬と比べて優れたHbA1c低下効果が認められた。
体重についても、HbA1cと同様にチルゼパチドが全薬剤のなかでもっとも体重減少効果が高く、プラセボと比較しておよそ9.5kg体重減少効果が認められた。
セマグルチド注射剤はプラセボと比較し4.4kg、セマグルチド経口剤はプラセボと比較して2.6kgそれぞれ体重を減少させた。
なお、糖尿病患者での血糖管理の目標であるHbA1c 7%未満の達成率については、チルゼパチド、セマグルチド(注射製剤、経口製剤)のいずれも同等だった。
(B) プラセボと比較したときのHbA1c低下効果
(B) プラセボと比較したときの体重減少効果
より個々の患者に適した薬剤選択につなげることを期待
研究は、横浜市立大学循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本俊一郎氏、田中翔平氏、涌井広道准教授、田村功一主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に掲載された。
「本研究は、日本人の2型糖尿病患者で新規GLP-1受容体作動薬(セマグルチドやチルゼパチドなど)の治療効果を比較した初めての研究となる。今回の研究では、薬剤間だけでなく用量による効果の違いも検証しているため、より個々の患者さんに適した薬剤選択につながることが期待される」と、研究グループでは述べている。
「セマグルチドは、糖尿病だけでなく、肥満症に対する治療薬としても2023年に承認されている。セマグルチドやチルゼパチドに関しては、体重減少や血糖低下だけでなく、心血管イベントや腎イベントのリスク低下効果も報告されはじめており、今後ますます注目される薬剤となっている」としている。
横浜市立大学循環器・腎臓・高血圧内科学教室
Effect of tirzepatide on glycaemic control and weight loss compared with other glucagon-like peptide-1 receptor agonists in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus (Diabetes, Obesity and Metabolism 2023年10月12日)