MR拮抗薬「フィネレノン」とSGLT2阻害薬の同時併用 2型糖尿病合併の慢性腎臓病(CKD)に効果 尿中アルブミン/クレアチニン比が有意に低下

2025.06.11
 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者へのMR拮抗薬「フィネレノン」とSGLT2阻害薬の同時併用療法により、各単剤療法と比べ、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が有意に低下したという、第2相臨床試験CONFIDENCEの結果を、ドイツ・バイエル社が発表した。

 ベネフィットは治療開始後14日目と早期に認められ、フィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法の可能性を支持するものとしている。

 UACRは腎障害の早期指標、CKD進行の重要な予後マーカーで、心血管有害事象の予測因子になる。

 詳細は、6月にウィーンで開催された第62回欧州腎臓学会(ERA)学術集会で発表されるとともに、「New England Journal of Medicine」に掲載された。

フィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法が2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者で良好な結果

 CONFIDENCE試験では、2型糖尿病を合併するCKD患者で、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時併用療法により、UACRが早期かつ相加的に低下し、180日時点にはべースラインから52%の低下が示された。

 同時併用療法ではフィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比べ、ベースラインから180日時点までのUACRの相対低下はそれぞれ29%、32%だった。

 UACRの30%以上の低下は、2剤による同時併用療法から14日以内に認められた。米国糖尿病学会(ADA)は、CKD患者の腎疾患進行抑制のためにUACRの30%低下を推奨している。

 同時併用療法では、およそ4人中3人の被験者がベースラインに対して30%のUACR低下を示し、30%以上のUACR低下の割合はいずれかの単剤療法より20%高い結果になった。

 フィネレノンとSGLT2阻害薬の同時併用療法の安全性プロファイルは、いずれかの単剤療法と同様だった。同時併用療法のベネフィットは、疾病負荷が大きい集団を含め、事前規定されたすべての部分集団でみられたとしている。

 米インディアナポリスにあるインディアナ大学医学部、インディアナポリスVAメディカルセンター医学部名誉教授で、本試験運営委員会委員長であるラジブ・アガルワル氏は次のように述べている。
 「CONFIDENCE試験で、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時投与開始は、2型糖尿病を合併するCKD患者でいずれかの単剤療法の結果よりもUACRが有意に低下し、UACRが52%の早期かつ相加的な低下を示された。UACRが腎アウトカムおよび心血管アウトカムで重要な因子であることを考慮すると、これは疾患管理を最適化する方法を検討する際に臨床医にとって重要な知見となり、フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用が患者の予後に好影響となることを支持している」。

 MR拮抗薬であるフィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD(ステージ1~4)の幅広い患者集団を対象に、2本の第3相臨床試験(FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験、試験完了し公表済み)で、標準治療に上乗せしたフィネレノンとプラセボの腎および心血管アウトカムへの効果が評価された。SGLT2阻害薬による治療を受けている被験者も2試験の対象だった。

 FIDELITY(第3相臨床試験2本の事前規定された統合解析)のデータより、2型糖尿病を合併するCKD患者で早期アルブミン尿(UACR)の低下が、フィネレノンのCKD進行抑制効果の大部分を仲介することが確認されている。

 「今回の知見は、フィネレノンとSGLT2阻害薬の積極的な同時併用療法がUACRの早期かつ相加的な低下をもたらし、腎臓および心血管の保護に関連していることを示唆している。フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期併用療法が、世界中の数百万人の患者の長期的な予後を改善する可能性を示した」と、同社では述べている。

 CONFIDENCE試験は、無作為化、二重盲検、二重ダミー、多施設、3群並行群間比較、第2相臨床試験。主要目的は、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、UACR低下に関して、フィネレノンとエンパグリフロジンの同時併用療法がいずれかの単剤療法と比べて優越性があるかどうかを検討すること。

 主要評価項目は、併用療法群と各単剤療法群でベースラインから180日時点までのUACRの相対変化だった。CONFIDENCE試験では、スクリーニング時の推算糸球体濾過率(eGFR)とUACRにより層別化し、被験者818人が1対1対1の割合で無作為割り付けされた。被験者は、フィネレノン(10または20mgを1日1回)とエンパグリフロジン(10mg)、フィネレノン(10または20mg)とプラセボ、またはエンパグリフロジン(10mg)とプラセボのいずれかを服用した。

 なお、フィネレノン(ケレンディアおよびFirialta)は、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に関与する。

 フィネレノンの日本で効能・効果は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析試行中の患者を除く。」。

Combination finerenone and empagliflozin shows superior efficacy in reducing albuminuria in chronic kidney disease and type 2 diabetes patients (欧州腎臓学会 2025年6月5日)
Finerenone with Empagliflozin in Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2025年6月5日)

ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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