MR拮抗薬「ケフィネレノン」がeGFRスロープを改善させ慢性腎臓病(CKD)の進行を抑制 アジア人集団の新たな解析データを発表

フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD患者計1万3,000人以上が参加した2つの大規模臨床試験(FIGARO-DKD1、FIDELIO-DKD2)のデータにもとづき、日本でも2型糖尿病を合併するCKDの適応で承認された。FIDELITYはこれら2試験の事前規定された統合解析。アジア人集団(10ヵ国・地域、解析対象2,858人)を対象としたFIDELITYの新たなサブグループ解析では、フィネレノンの有効性に関して、CKDの進行速度を示す指標であるeGFRスロープ(eGFRの年間変化率)の低下、腎障害の指標のひとつである尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)のベースラインから4ヵ月目までの変化、UACR値の退縮(regression)、および安全性が評価された。
その結果、eGFRスロープ(4ヵ月目から投与中止または試験終了まで)は、フィネレノン群でプラセボ群と比べ改善し[フィネレノン群:-2.598mL/分/1.73m²、プラセボ群:-3.673mL/分/1.73m²、群間差1.08mL/分/1.73m²、95%CI 0.53~1.63]、この改善はベースラインのUACR値にかかわらずみられた。UACR値は、フィネレノン群で、ベースラインから4ヵ月目までに幾何平均で34%減少した[ベースライン:526.17mg/g、4ヵ月目:345.03mg/g]。UACR値の減少や退縮は、ベースラインのeGFR値、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用有無にかかわらず認められた。また、「微量アルブミン尿」(UACR30mg/g以上300mg/g未満)から「正常アルブミン尿」(UACR30mg/g未満)への退縮は、フィネレノン群が39.5%、プラセボ群が14.8%だった[HR 3.04、95%CI 2.21~4.18]。
安全性の解析(解析対象2,854人)では、治験薬投与下で発現した有害事象の発現頻度は、ベースラインのeGFR値にかかわらず両群で同程度だった。ベースラインのeGFR値が低い集団(60mL/分/1.73m²未満)では高い集団(60mL/分/1.73m²以上)と比べ、高カリウム血症[フィネレノン群:eGFR低値集団23.2%、eGFR高値集団14.7%、プラセボ群:14.7%、9.6%]、急性腎障害[同:2.5%、1.4%、同:3.6%、2.7%]ともに多くみられたが、入院(高カリウム血症1.5%以下、急性腎障害1.5%以下)や投与中止(1.8%以下、0.2%以下)に至った頻度は両群ともにいずれも低値で、安全性プロファイルは全体として臨床的に管理可能であることが示された。
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学教授の川浪大治先生は、この解析について次のように述べている。
「今回の解析結果より、日本人を含むアジア人集団で、CKDの進行速度を示す指標chronic eGFR slopeやUACRをフィネレノンが改善させること、UACRの改善はベースラインの腎機能や併用薬の影響を受けないこと、フィネレノンの安全性プロファイルは管理可能であることが示唆されました。2型糖尿病を合併するCKDは腎臓だけでなく心血管イベントのリスクも高く、疾病負荷の高い病態です。今回の解析結果から得られた知見が日常臨床の参考になることを願っています」。
ケレンディアは、1日1回経口投与のMR拮抗薬。ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。同剤は日本で、2つの第3相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの結果にもとづき、厚生労働省より「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」を効能・効果として2022年3月に承認され、同6月よりバイエル薬品が販売している。同剤は、CKDの治療薬として米国、欧州など90ヵ国以上で承認されており、また心不全(HF)の治療薬として日本のほか、米国、中国、欧州でも承認申請中としている。