人工知能により糖尿病を5つのサブタイプに分類 糖尿病診断時に腎臓病発症、透析導入リスクを予測

DKD予防における課題の一つは、糖尿病と診断された時点で、腎臓の機能が、将来どの程度悪くなるか予測できないことです。健診などで腎機能低下や蛋白尿が判明したときは、すでにDKDが進行しており透析導入が防げないことがしばしばある。そこで共同研究チームは、「データ駆動型糖尿病クラスター分類」の方法を用いて、日本人の糖尿病をもつ人の腎臓病リスクを予測できるか調べた。
本研究では、日本の代表的な糖尿病データベースである、J-DREAMS(診療録直結型全国糖尿病データベース事業)レジストリの1万人以上の糖尿病をもつ人で、AIの技術(機械学習)を用いて、糖尿病を以下の5つのサブタイプに分類できることを確認した。
- 若い年齢で発症し自己免疫が関わるSAID(重症自己免疫糖尿病)
- インスリンの分泌する能力が著しく低下したSIDD(重症インスリン不足糖尿病)
- インスリンの効果が悪く肥満傾向があるSIRD(重症インスリン抵抗性糖尿病)
- 軽度の肥満があるが合併症が起こりにくいMOD(軽症肥満関連糖尿病)
- 高齢で発症するMARD(軽症加齢関連糖尿病)
また分析の結果、インスリンの効きが悪く肥満傾向にある「重症インスリン抵抗性糖尿病(SIRD)」サブタイプで腎臓病の発症や増悪リスクが最も高いことがわかった。また、それぞれのサブタイプで腎臓病の発症要因が異なることもわかった。このことは、同じ糖尿病でも、サブタイプによって注意すべき点が違うということがいえる。
共同研究チームは本研究の意義について、従来「糖尿病」として一つの疾患と扱われていたものを、サブタイプに分類することで、それぞれに適した予防策、治療法を提供できる可能性を示したことにあるとし、今後、健診や病院など実際の現場で、一人ひとりの糖尿病のサブタイプを早期に判定するなど、個人の特性に合わせた「個別化医療」の実現が期待されるとしている。
本研究は、福島県立医科大学 糖尿病内分泌代謝内科学講座(助教 渡邊桐子氏、主任教授 島袋充生氏ら)、国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所(糖尿病情報センター長 大杉満氏、植木浩二郎氏)らの共同研究チームによって実施され、研究成果が2025年11月17日付で欧州糖尿病学会発行の医学雑誌「Diabetologia」に公開された。





