チルゼパチドの処方が糖尿病網膜症のリスク低下に関連

DRは糖尿病の最も一般的な細小血管合併症であり、米国の成人糖尿病患者の4分の1以上が罹患している。近年、薬物による肥満治療の普及に伴い、急激な血糖コントロールの改善がDRの早期発症や進行を促す可能性があるという懸念が高まっており、一部のGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を用いた先行研究では実際に、対照群よりも肥満治療薬での介入群でDRの発症率が高かったと報告されている。
一方、チルゼパチドはGLP-1受容体に加えGIP受容体にも作用するデュアルアゴニストであり、米食品医薬品局(FDA)により2型糖尿病または肥満治療の治療薬として承認されている。同薬の代謝に対する有効性は既に確立されているが、実臨床におけるDRの発症や進行に対する有効性のエビデンスはいまだ少ない。これを背景にShah氏らは、大規模な多施設電子医療記録ネットワークのデータを用いた人口ベースの後ろ向きコホート研究により、同薬のDRリスクに及ぼす影響を評価した。
過体重または肥満を伴う糖尿病患者のうち、チルゼパチドの処方が開始されていた患者8万6,923人を特定。これに対して、生活習慣介入のみを受けていた29万1,652人から、人口統計学的因子、代謝関連指標、および全身的共変量に基づく傾向スコアマッチングにより、1対1の割合で抽出した対照群を設定。合計17万3,846人(平均年齢56.9±12.7歳、女性52.0%)のコホートを作成した。共変量は全て標準化平均差が0.10未満であり、バランスが取れていた。
解析の結果、チルゼパチド群は対照群に比べて、12カ月間でのDRの発症および進行リスクが低いことが示された。具体的には、軽度の非増殖性DR(リスク比〔RR〕0.864〔95%信頼区間0.758~0.985〕)、増殖性DR(RR0.705〔同0.564~0.882〕)、黄斑浮腫を伴うDR(RR0.624〔0.536~0.727〕)、硝子体出血(RR0.607〔0.429~0.860〕)、牽引性網膜剥離(RR0.370〔0.179~0.765〕)、抗VEGF薬硝子体内注射(RR0.479〔0.368~0.625〕)、および汎網膜光凝固(RR0.610〔0.403~0.924〕)だった。
Shah氏は、「われわれの研究結果および先行研究の報告から、チルゼパチドやセマグルチドのような同系統の薬剤が、DRに対しては同じ影響を及ぼすとは言えない可能性が示唆される。網膜細小血管への潜在的な影響を含め、より広範な代謝変化に対する差異を理解することは、長期的な視機能を視野に入れた治療選択の際に極めて有用であり、大変興味深い」と述べている。
[HealthDay News 2026年2月20日]
Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock



