チルゼパチドの処方が糖尿病網膜症のリスク低下に関連

2026.03.09
過体重または肥満を伴う糖尿病患者では、チルゼパチドによる治療が生活習慣の改善のみによる治療に比べて、糖尿病網膜症(DR)の新規発症および介入を要する状態への進行リスクを低下させる可能性を示唆するデータが報告された。米ワイルコーネル医科大学のJaffer Shah氏らの研究によるもので、詳細は「Ophthalmology」に1月21日掲載された。

 DRは糖尿病の最も一般的な細小血管合併症であり、米国の成人糖尿病患者の4分の1以上が罹患している。近年、薬物による肥満治療の普及に伴い、急激な血糖コントロールの改善がDRの早期発症や進行を促す可能性があるという懸念が高まっており、一部のGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を用いた先行研究では実際に、対照群よりも肥満治療薬での介入群でDRの発症率が高かったと報告されている。

 一方、チルゼパチドはGLP-1受容体に加えGIP受容体にも作用するデュアルアゴニストであり、米食品医薬品局(FDA)により2型糖尿病または肥満治療の治療薬として承認されている。同薬の代謝に対する有効性は既に確立されているが、実臨床におけるDRの発症や進行に対する有効性のエビデンスはいまだ少ない。これを背景にShah氏らは、大規模な多施設電子医療記録ネットワークのデータを用いた人口ベースの後ろ向きコホート研究により、同薬のDRリスクに及ぼす影響を評価した。

 過体重または肥満を伴う糖尿病患者のうち、チルゼパチドの処方が開始されていた患者8万6,923人を特定。これに対して、生活習慣介入のみを受けていた29万1,652人から、人口統計学的因子、代謝関連指標、および全身的共変量に基づく傾向スコアマッチングにより、1対1の割合で抽出した対照群を設定。合計17万3,846人(平均年齢56.9±12.7歳、女性52.0%)のコホートを作成した。共変量は全て標準化平均差が0.10未満であり、バランスが取れていた。

 解析の結果、チルゼパチド群は対照群に比べて、12カ月間でのDRの発症および進行リスクが低いことが示された。具体的には、軽度の非増殖性DR(リスク比〔RR〕0.864〔95%信頼区間0.758~0.985〕)、増殖性DR(RR0.705〔同0.564~0.882〕)、黄斑浮腫を伴うDR(RR0.624〔0.536~0.727〕)、硝子体出血(RR0.607〔0.429~0.860〕)、牽引性網膜剥離(RR0.370〔0.179~0.765〕)、抗VEGF薬硝子体内注射(RR0.479〔0.368~0.625〕)、および汎網膜光凝固(RR0.610〔0.403~0.924〕)だった。

 Shah氏は、「われわれの研究結果および先行研究の報告から、チルゼパチドやセマグルチドのような同系統の薬剤が、DRに対しては同じ影響を及ぼすとは言えない可能性が示唆される。網膜細小血管への潜在的な影響を含め、より広範な代謝変化に対する差異を理解することは、長期的な視機能を視野に入れた治療選択の際に極めて有用であり、大変興味深い」と述べている。

[HealthDay News 2026年2月20日]

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