インスリン治療下であってもケトアシドーシスや重症低血糖が一定頻度で残存 1型糖尿病急性合併症に関する全国規模調査

2026.06.02
 日本糖尿病学会「我が国における1型糖尿病の実態の解析に基づく適正治療の開発に関する研究委員会」は、同委員会のレジストリー班において、1型糖尿病の急性合併症に関する全国規模の調査研究を実施し、その結果を報告した。
 インスリン治療を受けている1型糖尿病患者の7.8%で治療中にケトアシドーシスを発症した経験があり、12.7%で他人の介助を要する重症低血糖を経験していたことが判明した。さらに、これらの急性合併症を経験していた患者群では経験していない患者群に比べて、自身の膵臓からのインスリン分泌が有意に低下していることも明らかとなった。

 1型糖尿病では、原則的にインスリン治療が必要になるが、さまざまなインスリン製剤の登場や投与法の進化にも関わらず、生命に影響しうる急性合併症を併発することがある。このことは1型糖尿病治療における重大な課題であるが、これまでその発症率や発症と関連する因子などを全国規模で調査されたことはなかった。

 日本糖尿病学会は、2019年に「我が国における1型糖尿病の実態の解析に基づく適正治療の開発に関する研究委員会」(委員長:島田朗)を設置し、種々のデータベースを用いて日本における1型糖尿病診療の実態を解明し、その結果から導き出される対応策を検討している。今回その成果の一つとして、本研究の結果が同委員会より報告された。

 本研究では、2019年11〜12月に全国125の医療機関を受診した1型糖尿病患者4,405例が登録され、このうち急性発症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、劇症1型糖尿病のいずれかに明確に分類された2,679例が解析対象となった。対象者の平均年齢は50.0歳、男性は42.0%であった。

 電子データ収集システムを用いて、参加医療機関より患者背景、1型糖尿病の病型、発症年齢、インスリン治療期間、HbA1c値、自己インスリン分泌能の指標である空腹時血清Cペプチド値、膵島関連自己抗体、糖尿病性ケトーシス/ケトアシドーシスの既往、重症低血糖の既往、インスリン治療の内容、CGMから得られる血糖管理指標などを収集した。収集されたデータを用いて、ケトアシドーシスや重症低血糖などの急性合併症を経験した患者の割合や、急性合併症の発症に影響を与えうる臨床的因子について解析した。

 解析の結果、1型糖尿病発症時には、糖尿病性ケトーシスを53.1%、糖尿病性ケトアシドーシスを33.0%の患者が併発していた。さらには、インスリン治療開始後においても、18.8%の患者がケトーシスを、7.8%の患者がケトアシドーシスを経験していた。これらの発症後合併症は、直近HbA1cの高値、長期のインスリン治療、直近Cペプチド値の低値と関連していた。

 また、重症低血糖は12.7%、過去1年以内では4.1%、無自覚性低血糖は28.9%に認められ、いずれも長期のインスリン治療、直近Cペプチド値の低値、持続グルコースモニターにおける低血糖が長いことと関連していた。

 緩徐進行1型糖尿病全体では、他の病型と比較して急性合併症の頻度は比較的低い結果だったたが、空腹時Cペプチド0.6ng/mL未満の緩徐進行1型糖尿病「definite」例では、急性発症型や劇症型の同様の頻度でケトアシドーシス、重症低血糖、無自覚性低血糖を経験していた。

 以上の結果より、1型糖尿病においては、インスリン治療下であってもケトアシドーシスや重症低血糖など生命を脅かし得る急性合併症が一定頻度で残存していることが示された。特に、Cペプチド低値に示される膵β細胞機能低下が、ケトアシドーシスだけでなく重症低血糖や低血糖無自覚とも関連する点は重要であると考えられた。

 本研究結果について研究委員会は、「今後は、インスリン投与量自動制御機能搭載インスリンポンプをはじめとする高度なデバイス治療の普及、血糖変動を詳細に把握するためのCGMのさらなる活用が望まれる。また、自己インスリン分泌の低値と急性合併症の発症が関連していたことから、膵β細胞機能温存を目指す免疫修飾療法などの発展が期待される」と述べている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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