GLP-1受容体作動薬の新規開始、2型糖尿病患者の脱毛症リスク上昇と関連

2026.07.28
米ペンシルバニア大学の研究グループは、大規模電子カルテデータの解析の結果、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の新規開始が、SGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と比較して、非瘢痕性脱毛症のリスク上昇と関連することが明らかになったと報告した。本研究結果は、2026年7月22日付けで「BMJ」に掲載された。

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症の治療において広く処方されているが、米国食品医薬品局(FDA)への有害事象報告等において、セマグルチドやチルゼパチドの使用開始後に脱毛症が生じる事例が指摘されていた。急激な体重減少や栄養状態の変化は、一般的な非瘢痕性脱毛症である休止期脱毛症の危険因子であり、この関連を裏付ける機序と考えられている。しかし、これまで大規模集団ベースでGLP-1受容体作動薬に関連する脱毛症リスクを系統的に評価した研究はなかった。

 そこで研究グループは、米ペンシルバニア大学の医療システム(Penn Medicine)の電子カルテデータを用いたターゲット・トライアル・エミュレーションを実施。2019年1月から2024年9月までにGLP-1受容体作動薬(エキセナチド、リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチド、リキシセナチド、チルゼパチド)、SGLT2阻害薬、あるいはDPP-4阻害薬を新規に開始した18歳以上の2型糖尿病患者を対象とした。過去1年間にこれら対象薬剤の処方歴がある者、脱毛症の診断歴がある者、1型糖尿病患者、末期腎不全/透析患者は除外された。

 主要評価項目は、診断コードから特定された脱毛症の新規発症とした。交絡因子の調整には安定化逆確率重み付け(IPTW)法を用い、人口統計学的要因や併存疾患、検査値などのベースライン特性を群間で均等化した上で、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

 解析の結果、GLP-1受容体作動薬群12,004人とSGLT2阻害薬群15,221人の比較において、GLP-1受容体作動薬群の脱毛症発症リスクは有意に高かった(HR:1.37、95%CI:1.08~1.73)。また、GLP-1受容体作動薬群11,964人とDPP-4阻害薬群11,238人の比較においても、同様にGLP-1受容体作動薬群で有意なリスク上昇が認められた(HR:1.68、95%CI:1.28~2.20)。

 さらに脱毛症のサブタイプ別解析を行ったところ、このリスク上昇は「非瘢痕性脱毛症」に特異的であることが示された。非瘢痕性脱毛症に限定した場合のHRは、SGLT2阻害薬に対して1.53(95%CI:1.18~1.97)、DPP-4阻害薬に対して1.72(95%CI:1.28~2.31)であった。

 以上の結果より研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の新規開始は、他の血糖降下薬と比較して非瘢痕性脱毛症のリスク増加と関連することが示されたと結論付けている。また、発症の絶対リスクは低いものの、この潜在的なリスクを認識しておくことは、患者への十分な説明と適切な治療方針の決定において有用である可能性があるとしている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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