重度精神疾患患者におけるGLP-1受容体作動薬、死亡率および心血管イベントリスクの低下と関連

双極性障害、大うつ病性障害、統合失調症をはじめとする重度精神疾患(SMI)の患者は、一般集団と比較して平均寿命が10年から25年短いとされており、その過剰な早期死亡の主な原因として心血管疾患が挙げられている。
GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者において全死亡および心血管死亡を減少させることが示されているが、近年の臨床試験では、抗精神病薬を服用しているSMI患者の代謝指標をGLP-1受容体作動薬が改善するとの報告もされている。そこでカナダ・トロント大学らの研究グループは、SMI患者に対してもGLP-1受容体作動薬が心血管疾患のリスクや死亡率を低下させる効果があるかどうかを検証することを目的として、本研究を実施した。
本研究は、多国籍の電子化医療情報ネットワーク(TriNetX)のデータを用いた大規模な後ろ向きコホート研究(ターゲット・トライアル・エミュレーション)。GLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬の新規処方を受けた18歳以上の成人を対象とし、傾向スコアマッチングを用いてSMIを有するコホートと有しないコホートに分けて比較を行った。主要評価項目は4年間の全死亡率、主要な副次評価項目は1年間の全死亡率とし、さらに3項目および5項目複合MACE(主要心血管イベント)などを評価した。
4年時点の主要解析には、152万8,230人の成人が傾向スコアマッチングされた(SMIコホート19万5,184組、非SMIコホート56万8,931組)。SMIコホートにおいて、GLP-1受容体作動薬群の4年全死亡率は4.91%であり、SGLT2阻害薬群の6.45%と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]0.76、95%CI 0.74~0.78、絶対リスク差[ARD]-1.54%ポイント、P<0.001)。非SMIコホートにおけるARDが-0.60%であったのに対し、SMI患者ではより大きな絶対的リスク減少が認められた。
また、2型糖尿病を合併するSMI患者を対象とした解析では、セマグルチドの導入はSGLT2阻害薬の導入と比較して、3項目複合MACE(HR 0.77、95%CI 0.76~0.79、RR 0.72)、5項目複合MACE、心筋梗塞、脳卒中、心不全、および冠動脈バイパス術のリスク低下と関連していた。さらに、SMIコホートにおける1年時点の全死亡率もGLP-1受容体作動薬群で有意に低く(1.46%対2.84%、相対リスク[RR]0.52、ARD -1.38%ポイント)、治療開始から比較的早い段階で生存率に差が出ることが確認された。
探索的解析として10年間の追跡を実施した結果、2型糖尿病を合併するSMI患者において、セマグルチドはSGLT2阻害薬と比較し、大うつ病性障害(RR 0.55)、双極性障害(RR 0.57)、統合失調症(RR 0.67)のいずれのサブグループにおいても死亡率の低下と関連していた。薬剤別の解析では、死亡率の低下は主にセマグルチドおよびチルゼパチドによって牽引されていることが示された。
著者らは本研究結果について、GLP-1受容体作動薬の導入はSGLT2阻害薬と比較して死亡率および心血管イベントリスクの低下と関連しており、特にSMI患者においてその絶対的効果が大きいと結論づけている。また、これらのベネフィットは導入後1年以内に現れ、SMIの各サブグループで一貫しており、今後は前向きランダム化比較試験による検証が求められるとしている。



