DPP-4阻害薬の効果発現には内因性GIPシグナルが不可欠 肥満マウスで確認 岐阜大学ら

2026.03.05
岐阜大学らは、肥満マウスを用いて、DPP-4阻害薬の「血糖値の改善効果」「体重増加の抑制効果」に対し、GIPがどのように関与しているか詳細に検討し、その結果を報告した。DPP-4阻害薬が体内のインクレチンを増加させ効果を発揮する際、少なくともマウスにおいて、中心的な役割を担っているのはGLP-1ではなくGIPであることが示されたという。

 糖尿病治療薬として日本で広く使用されるDPP-4阻害薬は、食事に伴い腸から分泌されるホルモン「インクレチン」の働きを高め、食後早期のインスリン分泌を促進することで血糖値を改善すると報告されている。これまでの研究から、DPP-4阻害薬は高脂肪食で肥満状態となったマウスにおいて、血糖値を下げるだけでなく、体重増加を抑えることも明らかになっている。

 一方で、インクレチンにはGIPとGLP-1の2種類があるが、これまでの研究は、GLP-1に注目して進められていたものが多かったため、もう一つのインクレチンであるGIPが果たす役割は十分に解明されていなかった。そこで研究グループは、遺伝子操作でGIP受容体を欠損させたマウスを用いて、DPP-4阻害薬による代謝改善効果にGIPがどのように関与しているかを詳しく検討した。

 検討の結果、GIP受容体が欠損していないマウス(野生型マウス)では、DPP-4阻害薬投与による耐糖能改善と体重増加抑制が認められた。その一方、GIP受容体欠損マウスでは、これらの効果が完全に失われていることが明らかになった。

 具体的には、高脂肪食を与えた野生型マウスに、DPP-4阻害薬であるアナグリプチンを長期間投与したところ、経口糖負荷試験において負荷後早期にインスリン分泌が増加し、血糖値の上昇が抑制された。体重増加は、食事量の変化がない中、有意に抑制されていた。GIP受容体欠損マウスでは、アナグリプチンの長期間投与によるインスリン分泌、血糖値、体重のいずれにも改善効果は認められなかった。

 GLP-1 の血中濃度は、アナグリプチンの長期投与で、GIP受容体欠損マウスでも野生型マウスと同程度に上昇していた。それにもかかわらず、GIP受容体欠損マウスでは血糖改善効果が見られなかった。この結果は、他のDPP-4阻害薬であるリナグリプチンでも同様であった。これにより、DPP-4阻害薬全般において、GIPシグナルが喪失すると、内因性GLP-1シグナルの活性化だけでは十分な血糖改善効果が得られない可能性が示唆された。

 なお、GIP受容体欠損マウスにGLP-1受容体作動薬デュラグルチドを投与した場合は、血糖値の上昇が抑制された。このことから、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬では、血糖値の上昇抑制に必要なシグナルが異なることが示唆された。

 以上から、内因性GIPシグナルはDPP-4阻害薬の血糖改善および体重増加抑制効果に不可欠であり、GLP-1単独ではその代替ができないことが明らかとなった。

 研究グループは「本研究により、高脂肪食で肥満状態になったマウスにおいて、DPP-4阻害薬の主たる効果発現に、内因性GIPシグナルが不可欠であることが示された」と結論付けた。また、「今回の研究はマウスでの結果であり、ヒトへの外挿性には注意が必要だが、糖尿病治療におけるGIPシグナルの重要性を強く示唆するものである。GIPシグナルに関するさらなる研究を通して、糖尿病や肥満症に対する新規治療の創出が期待される」と述べている。

 本研究は岐阜大学、藤田医科大学、関西電力医学研究所、京都大学の共同で実施され、研究成果が2026年2月3日付で「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に掲載された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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