MR拮抗薬「フィネレノン」 LVEFが40%以上の心不全患者で心血管へのベネフィットを示す
心血管死およびHFイベントの抑制に対するケレンディアの有効性と安全性を検討
バイエル薬品は、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬であるケレンディア(一般名:フィネレノン)について、左室駆出率(LVEF)が40%以上の心不全(HF)患者を対象に、標準治療に上乗せしたときの有効性と安全性を検討した第3相臨床試験FINEARTS-HFの結果を発表した。
試験の結果、主要評価項目を達成され、ケレンディアは心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目で、統計学的に有意で、臨床的に意味のある減少を達成したことが示された。
ケレンディアの忍容性は良好であり、ケレンディアの既知の安全性プロファイルと一貫していた。
心不全患者の約半数を占めるLVEF 40%以上のHFには、多疾患併存が関連し、患者の50%は5つ以上の重大な併存疾患を有しており、症状の管理は複雑だ。時間的傾向から、LVEF 40%以上のHF患者は今後さらに増加し、HFによる入院患者の大部分を占めるようになると示唆されている。
ケレンディア(フィネレノン)は、非ステロイド型選択的MR拮抗薬であり、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のある慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管障害に関与する。同剤は、2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国、欧州、日本、米国を含む世界90ヵ国以上で承認されている。
LVEF 40%以上のHF患者の心血管死およびHFイベントを複合評価
FINEARTS-HF試験は、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、イベント主導型の第3相臨床試験。過去12ヵ月以内に何らかの検査法によりLVEF 40%以上と確認され、無作為割り付け前の少なくとも30日間、利尿薬を投与されている症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会心機能分類II~IV度)を対象に、心血管死およびHFイベントの抑制に対するケレンディア(フィネレノン)の有効性と安全性を検討した。
FINEARTS-HF試験の主要評価項目は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院または緊急受診と定義)からなる複合評価項目だった。被験者約6,000人が無作為割り付けされ、フィネレノンまたはプラセボが1日1回、最長42ヵ月間投与された。
FINEARTS-HF試験を含む、フィネレノンを用いた現在進行中のMOONRAKER臨床試験プログラムは、1万5,000人以上を対象とするこれまでで最大規模のHF試験プログラムのひとつ。幅広い被験者および臨床設定のHFにおけるフィネレノンの包括的な理解を確立することを目指すとしている。
フィネレノンは、MRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることで、心筋線維化などの進行がみられるLVEF 40%以上のHFの特徴に対応する。
「LVEFが軽度低下または保たれたHF患者に対して現在使用できる選択肢は限られている」と、ドイツ・バイエル社では述べている。
LVEFが軽度低下または保たれたHF患者は併存疾患の負担がより大きい
LVEF(左室が収縮するたびにどれくらいの血液を送り出すかを示す心機能の指標)により分類すると、HFは以下3つの異なるカテゴリーに分けられる。
・ LVEFの低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴で、LVEFは40%以下。
・ LVEFが軽度低下したHF(HFmrHF)は、ほかの2つのカテゴリーの中間に位置するカテゴリーで、LVEFは41~49%。
・ LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため充満異常を来しており、LVEFは50%以上。
LVEF 40%以上のHF患者では、心血管疾患および心血管疾患以外の併存疾患の負担がより大きくなる。時間的傾向からも、LVEF 40%以上のHF患者が、HFで入院する患者の大部分を占めるようになると示唆されている。
FINEARTS-HF試験の臨床データは、2024年欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表される予定。同社は、承認申請について規制当局とデータを協議する予定としている。
ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
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