MR拮抗薬「ケレンディア」の新データを発表 糖尿病合併CKD進行の要因となる炎症・線維化に作用 米国腎臓学会腎臓週間
実臨床でフィネレノン治療を受けた2型糖尿病合併CKD患者の特徴
FIGARO-BM試験は、フィネレノンの作用機序を解明することを目的とした探索的バイオマーカー試験。同試験により、2型糖尿病を合併したCKD進行の主な要因である炎症および線維化に、フィネレノンが作用することを示すヒトバイオマーカーのデータがえられた。
また、第3相臨床試験FIGARO-DKDでは、プラセボまたはフィネレノンが24ヵ月以上投与された21ヵ国の被験者945人より採取した生体試料を用いて、2,900以上の血漿バイオマーカーが解析された。治療反応性のバイオマーカー解析の結果、炎症・線維化・ミネラルコルチコイドの分子生物学に関連する経路のクラスターが同定され、フィネレノンが炎症・線維化に作用する可能性を示した前臨床の知見と一致することが示された。
FINE-REAL試験は、実臨床でフィネレノンによる治療を受けた2型糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)患者の臨床的特徴と治療パターンを評価する前向き試験。その中間解析(追跡期間中央値7ヵ月)では、次の知見がえられたとしている。
- 患者の88%がフィネレノン10mg、12%が同20mgを使用。
- フィネレノンの投与開始後に治療を継続した患者は92.3%、中断した患者は5.4%、中止した患者は1%。
- 国際的腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)リスク分類での割合は、低リスクが2%、中リスクが22%、高リスクが27.9%、超高リスクが48.2%。
- フィネレノン投与下での高カリウム血症の発現率は、第3相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDで観察された発現率と同程度。
なお、FINE-REAL試験の全体解析結果は、2028年にえられる見込みとしている。
埼玉医科大学名誉教授・名誉病院長、かわごえクリニック客員教授の片山茂裕先生は次のように述べている。
「臨床医にとって、フィネレノンが炎症および線維化に作用することを示すヒトバイオマーカー試験の結果は、歓迎すべきニュースです。また、FINE-REAL試験の中間解析結果より、実臨床におけるフィネレノン投与下での高カリウム血症の発現率は、第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの発現率と同程度と示されたことは非常に重要です。実臨床におけるフィネレノンの使用について知識を深め、患者の治療を最適化するため、全体解析結果の発表を楽しみにしています」
フィネレノンは日本では2022年に発売 効能・効果は「2型糖尿病を合併した慢性腎臓病」
ケレンディア(一般名:フィネレノン)は、ドイツ・バイエル社が創製した1日1回経口投与の非ステロイド型選択的MR拮抗薬(MRA)。代謝・血行動態・炎症・線維化により引き起こされるCKDの進行や心血管障害に寄与するミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化を抑制することが示されている。
ケレンディアは日本では2022年に、「2型糖尿病を合併した慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く」を効能・効果として承認された。これは、2つの第3相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの結果にもとづくもの。
CKDは、糖尿病に起因するもっとも多い合併症のひとつで、心血管疾患の独立した危険因子でもある。2型糖尿病患者の最大40%がCKDを発症する報告されているが、ガイドラインにもとづく治療にもかかわらず、2型糖尿病を合併したCKD患者は、CKDの進行および心血管イベント発現のリスクが依然として高いことが課題になっている。
2型糖尿病を合併したCKDは、透析あるいは腎移植を必要とする末期腎不全の主な原因であり、2型糖尿病を合併したCKD患者は、2型糖尿病のみの患者よりも心血管系疾患で死亡する可能性が約3倍高くなる。