MR拮抗薬「ケレンディア」がCKDの進行を抑制し心血管イベントも減少傾向 日本人を含むアジア人で確認 2型糖尿病合併のCKD

2024.06.19
 バイエル薬品は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の適応をもつMR拮抗薬「ケレンディア」(一般名:フィネレノン)の、日本人を含むアジア人集団を対象とするサブグループ解析の結果を発表した。

 ベースラインの腎障害の程度にかかわらず、CKD進行の抑制および心血管イベントの減少傾向が示された。

 腎不全の発症などの腎複合評価項目では、フィネレノン群ではプラセボ群と比較し、発現の低下が示された[HR 0.64、95%CI 0.50~0.82]。

 心血管死あるいは非致死的心血管イベントの心血管複合評価項目でも、発現の低下傾向が示された[HR 0.90、95%CI 0.70~1.15]。

 高カリウム血症により投与中止に至る頻度は、アジア人集団および全体集団ともに低率だった(アジア人集団 1.5%、全体集団 1.7%)。

フィネレノンはベースラインの腎障害の程度にかかわらず心腎アウトカムを改善 安全性プロファイルは全体集団と同様

 バイエル薬品は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応をもつ唯一のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬「ケレンディア」(一般名:フィネレノン)の有効性・安全性について、事前規定された統合解析FIDELITYの日本人を含むアジア人集団を対象とするサブグループ解析の結果を発表した。

 ケレンディアは、2型糖尿病を合併するCKD患者計1万3,000人以上が参加した2つの大規模臨床試験(FIGARO-DKD、FIDELIO-DKD)のデータにもとづき承認された。FIGARO-DKD試験は、比較的重症度の低い集団を含むCKD患者が対象である一方、FIDELIO-DKD試験は、比較的進行したCKD患者が対象となった。FIDELITYはこれら2試験を事前規定した統合解析。

 アジア人集団(10ヵ国・地域)を対象としたFIDELITYの新たなサブグループ解析(事後解析)では、有効性および安全性評価項目の詳細が検討された。

 その結果、有効性の解析(対象2,858人)で、腎複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から57%以上の持続的な推算糸球体濾過量[eGFR]、腎臓死)は、フィネレノン群105人(2.56%、100人年当たりの発生率)、プラセボ群170人(4.12%、同)に発現し、低下が示された[HR 0.64、95%CI 0.50~0.82]。

 心血管複合評価項目(心血管死あるいは非致死的心血管イベント[非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院])は、フィネレノン群121人(2.85%、同)、プラセボ群138人(3.19%、同)に発現し、低下傾向が示された[HR 0.90、95%CI 0.70~1.15]。

 これらの腎および心血管複合評価項目で観察された傾向は、ベースラインのeGFR(60mL/min/1.73m²未満・60mL/min/1.73m²以上)および尿アルブミン/クレアチニン比(UACR、300mg/gCr未満・300mg/gCr以上)によって変わらなかった(交互作用のP値は有意ではなかった)。

 一方、安全性の解析(対象2,854人)で、フィネレノン群での高カリウム血症の発現頻度は、全体集団と比較してアジア人集団で高かったものの、血清カリウム値が5.5および6.0mmol/Lを超える頻度は両集団で同様だった。

 高カリウム血症により投与中止に至る頻度は、アジア人集団および全体集団ともに低率だった(アジア人集団 1.5%、全体集団 1.7%)。また、急性腎障害の頻度も、アジア人集団および全体集団ともに低率だった(アジア人集団 2.1%、全体集団 3.4%)。アジア人集団の安全性プロファイルは全体集団と同様だった。

 詳細は、6月に開催されたアジア太平洋腎臓学会(Asian Pacific Congress of Nephrology)2024で発表された。

 「今回の解析結果から、日本人を含むアジア人集団で、ベースラインの腎障害の程度にかかわらず、フィネレノンが心腎アウトカムを改善させることや、安全性プロファイルは全体集団と同様であることが示唆された」と、同社では述べている。

 ケレンディア(一般名:フィネレノン)は、1日1回経口投与の非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与するが、同剤はMRの過剰活性化による悪影響を抑制する。

 同剤は、日本では2つの第3相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの結果にもとづき、厚生労働省より「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。」を効能・効果として2022年3月に承認され、同6月よりバイエル薬品が販売している。

Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2021年8月28日)
Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2020年10月23日)
Cardiovascular and kidney outcomes with finerenone in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease: the FIDELITY pooled analysis (European Heart Journal 2021年11月22日)

ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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