MR拮抗薬「フィネレノン」 幅広い心不全患者を対象に新たに3試験を開始 心不全治療薬としての確立をめざす
幅広い心不全患者を対象にMR拮抗薬「フィネレノン」の新試験を開始
ドイツ・バイエルは、MR拮抗薬「フィネレノン」(商品名:ケレンディア)を用いたHF臨床試験プログラムMOONRAKERを拡大するため、新たに3試験の開始を支援すると発表した。
左室駆出率(LVEF)が軽度低下または保たれたHF患者6,000人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較する進行中の第3相試験FINEARTS-HFに加え、新たな試験では、LVEFの低下したHF(HFrEF)、軽度低下したHF(HFmrEF)、保たれたHF(HFpEF)の患者計約9,300人を追加して、フィネレノンの有効性と安全性を評価する。
全体で1万5,000人以上を対象とするMOONRAKERプログラムは、これまでで最大規模のHF臨床試験プログラムになる見込み。新試験3件は、研究者主導共同研究であり、幅広いHF患者を対象に、HFイベントおよび心血管死の発現率減少に関して標準治療に上乗せしたフィネレノンとプラセボ、またはフィネレノンとSGLT2阻害薬の併用と標準治療とを比較検討する。
これらの試験のスポンサーは、米国コロラド大学付属の非営利アカデミック臨床研究機関であるCPC Clinical Research (CPC)。CPCは、他のアカデミック臨床研究機関、および同プロブラムに資金提供するバイエルと共同で、MOONRAKERプログラムの新試験3件を実施する。
フィネレノンは非ステロイド型選択的MRAで、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化による悪影響を抑制する。MRの過剰活性化は、代謝・血行動態・炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性がある心血管系および腎臓の障害に寄与する。
フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKDの治療薬として、中国・欧州・日本・米国を含む世界70ヵ国以上で承認されている。
また、心不全(HF)を、心機能の指標であるLVEFで分類すると、3つのカテゴリーに分けられる。
- LVEFが低下したHF(HFrEF)は、収縮期に酸素を豊富に含む血液を十分に送り出す心臓のポンプ機能が低下していることが特徴(LVEF40%未満)。
- LVEFの保たれたHF(HFpEF)は心臓の硬化が特徴で、左心室が血液で満たされて十分に拡張できないため、充満異常をきたす(LVEF50%以上)。
- LVEFが軽度低下したHF(HFmrHF)は、ほかの2つのカテゴリーの中間に位置するカテゴリー(LVEF40-49%)。
とくにHFpEFでは、利尿薬によるうっ血症状の治療、原因・併存疾患に対する治療が長らく、症状の負荷軽減と入院の予防を目的とした治療の中心となっている。HFrEFでは治療は進歩しているが、HFpEFでは治療の選択肢が限られている。
「MOONRAKERプログラムは、いくつかの重要な目的に対応するようデザインされている。FINEARTS-HF試験の知見を、HFmrEFまたはHFpEF患者のなかでよりリスクが高く、より急性期の集団に拡大すること、また、LVEFにかかわらず、HFで入院している患者さんに集中的な併用療法を早期に実施するためのエビデンスを構築すること、さらに、ステロイド型MRAに不耐容または不適応のHFrEF患者の大部分に対する貴重な追加エビデンスを創出することだ」と、米Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのMikhail Kosiborod氏は述べている。
第3相臨床試験REDEFINE-HFでは、非代償性HFで入院または退院直後のHFmrEFまたはHFpEF患者を対象とするフィネレノンの投与開始に関し、プラセボと比較したデータが得られる。第3相臨床試験CONFIRMATION-HFでは、LVEFにかかわらず、入院したHF患者を対象に、フィネレノンとSGLT2阻害薬の早期同時併用療法の開始が標準治療と比較して、優れた臨床的有用性をもたらすかどうかが検討される。第3相臨床試験FINALITY-HFでは、スピロノラクトンやエプレレノンなどのステロイド型MRAが不耐容または適さないHF患者を対象に、フィネレノンとプラセボが比較検討される。
「3件の新たな試験は、バイエルの第3相臨床試験FINEARTS-HFを補完し、得られた知見より、HFの多大な疾病負荷を軽減して患者さんの予後を改善するためのフィネレノンの臨床使用の可能性について、新たな指針が得られることをと期待している」と、同社では述べている。
ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
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