2型糖尿病の薬物療法の追加オプションはどれが最適か SGLT-2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・MR拮抗薬を含む13種類の製剤を比較
■ SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬は心血管死を減少 ■ MR拮抗薬も全死因死亡と心血管死を低下させる可能性 |
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13種類の製剤のネットワークプロット
研究は、中国の四川大学内分泌代謝部のQingyang Shi氏らによるもの。研究成果は、「BMJ」に掲載された。研究グループは、従来治療薬に追加する治療オプションとして、SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・MR拮抗薬を含む、13種類のうちから追加投与した場合の、心血管系および腎臓系の有害アウトカムや死亡の減少、体重減少などについて比較した。
研究グループは、47万1,038人の患者を対象とした、ランダム化比較試験(RCT)を含む816件の試験のシステマチックレビューとメタ解析を実施。
解析の対象となった薬剤は、▼SGLT2阻害薬、▼GLP-1受容体作動薬、▼DPP-4阻害薬、▼チアゾリジン薬、▼SU薬、▼メトホルミン、▼αグルコシダーゼ阻害薬、▼グリニド薬、▼インスリン製剤(基礎インスリン、追加インスリン、基礎-追加インスリン(Basal-Bolus)の3種類)、▼GIP/GLP-1受容体作動薬、▼MR拮抗薬の13種類。
解析した結果、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全による入院、末期腎臓病のそれぞれの減少に有益であることが示された。
MR拮抗薬のフィネレノンも心血管死を減少しており、おそらく心不全・末期腎不全・心血管死を減らすだろうとしている。
■ SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が全死因による死亡と心血管死を減少 ■ MR拮抗薬も全死因死亡と心血管死を低下させる可能性 |
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全死因による死亡と心血管死の減少について、解析の対象となった257件の試験が、34万2,237人の参加者と1万5,371件のイベントを含み、144件の試験が、27万5,679人の参加者と、9,120件のイベントを含んでいた。
全死因による死亡の減少は、SGLT2阻害薬[オッズ比 0.88、95%CI 0.83~0.94、エビデンスの確実性は高い]、GLP-1受容体作動薬[同0.88、同0.82~0.93、確実性は高い]で認められた。
心血管死の減少は、SGLT2阻害薬[同0.86、同0.80~0.94、確実性は高い]と、GLP-1受容体作動薬[同0.87、同0.81~0.94、確実性は高い]で認められた。
MR拮抗薬についても、これまで慢性腎臓病患者でのみ試験が行われていたが、おそらく全死因死亡率を低下させ[同0.89、同0.79~1.00、中程度の確実性]、心血管死も低下させる可能性が示された[同0.88、同0.75~1.02、確実性は低い]。
メトホルミンは、全死因死亡率を低下させる可能性があるものの[同0.84、同0.67~1.04、確実性は低い]、心血管死にはほとんど影響しないとみられている。
DPP-4阻害剤は、おそらく心血管死に対しては影響を与えず(中程度の確実性)、SU薬は、全死因死亡率を上昇させる可能性があり(確実性は低い)、心血管死には影響を及ぼさない可能性が示された。
■ SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミンは非致死性心筋梗塞を減少 ■ GLP-1受容体作動薬は非致死性脳卒中を減少させる唯一の薬剤クラス ■ 心不全による入院を減らすためにSGLT-2阻害剤・MR拮抗薬は効果的 |
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非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中の減少との関連については、解析の対象となった209件の試験が、29万3,042人の参加者、8,906件の非致死性心筋梗塞を含み、178件の試験は、28万3,728人の参加者、非致命的な脳卒中4,878件を含んでいた。
非致死性心筋梗塞の減少との関連は、SGLT2阻害薬[オッズ比 0.90、95%CI 0.82~0.98、確実性は高い]と、GLP-1受容体作動薬[同0.91、同0.85~0.98、確実性は中等度]で認められ、メトホルミンでも可能性が示された[同0.86、同0.68~1.09、確実性は低い]。
さらに、GLP-1受容体作動薬は、非致死性脳卒中を確実に減少させる唯一の薬物クラスとしている[同0.85、同0.77~0.94、確実性は高い]。
心不全による入院の減少については、142件の試験が、25万2,055人の参加者と6681件のイベントを含んでいた。SGLT-2阻害薬[同0.66、同0.60~0.73、確実性が高い]で認められ、GLP-1受容体作動薬[同0.91、同0.83~0.99、中等度の確実性]、およびMR拮抗薬[同0.78、同0.66~0.92、 中程度の確実性]でも可能性が示された。
心不全による入院を減らすために、SGLT-2阻害剤とMR拮抗薬は、もっとも効果的な薬剤のひとつであり、SGLT-2阻害薬はGLP-1受容体作動薬よりも優れているとしている(中程度の確実性)。
チアゾリジン薬は、おそらく心不全による入院を増加させ[同1.54、同1.27~1.88、確実性は中程度]、メトホルミンなどの他の薬剤は、効果がみられないか、不確実である可能性がある(確実性が低いか非常に低い)。
■ 末期腎不全の減少はSGLT-2阻害薬がもっとも効果的 ■ MR拮抗薬「フィネレノン」もGLP-1受容体作動薬と同等 ■ 体重減少効果はGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が最大 |
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末期腎不全の減少については、54件の試験が、20万9,754 人の参加者と6,972 のイベントを含んでいた。
末期腎不全の減少は、SGLT2阻害薬[オッズ比 0.61、95%CI0.55~0.67、確実性は中等度]、GLP-1受容体作動薬[同0.83、同0.75~0.92、確実性は中等度]、MR拮抗薬(同0.83、同0.75~0.92、確実性は中等度]で可能性が示された。
SGLT-2阻害薬はもっとも効果的な薬剤のひとつであり、GLP-1受容体作動薬やMR拮抗薬よりも優れている可能性がある(確実性は低い)。他の薬剤は、標準的な治療法と比較して、末期の腎疾患に対して効果がみられず、不確実である可能性があるとしている(確実性が非常に低い~低い)。
体重変化については、27万9,118人の参加者を対象とした531件の試験を分析。GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」がもっとも体重減少効果が大きかった[平均減少量-8.57kg、95%CI -7.75~-9.40kg、確実性は中等度]。
体重減少は、GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬・メトホルミンでも中程度の効果が認められた(平均減少量 -4.62kg~-0.72、確実性は高~中程度)。
■ 重度の低血糖はSU薬とインスリンで多い ■ SGLT-2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・MR拮抗薬は低血糖リスクを増加させない |
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重度の低血糖については、30万2,457人の参加者と5,595件のイベントを含む202件の試験を分析。SU薬[オッズ比 5.22、95%CI 3.88 ~ 7.01]、および基礎-追加インスリン[同4.94、同1.06~22.96]で、重度の低血糖イベントのリスクが高かった(中程度の確実性)。
SGLT-2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、重度の低血糖イベントのリスクを増加させない(高い確実性)。MR拮抗薬もおそらく標準治療に比べ重度の低血糖症の発生が少ない[同0.64、同0.43~0.96、中程度の確実性]。
研究グループでは以上をふまえ、「今回のメタ分析では、MR拮抗薬であるフィネレノンと、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチドに関する情報を追加して検討した」と述べている。
「結果として、SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用による、心血管および腎臓の有害転帰と死亡を減少させる利点について確認することになった。MR拮抗薬も心血管と腎臓の両方に利点をもたらす可能性がある。さらに、GIP/GLP-1受容体作動薬による体重減少とQOLの改善も報告されている」。
「標準治療と比較して、MR拮抗薬を追加することで、全死因による死亡、心不全による入院、末期腎臓病を減少し、GIP/GLP-1受容体作動薬を追加すると、体重減少をえられる可能性がある」。
「今回の調査結果は、2型糖尿病の臨床診療ガイドラインに最新の更新情報を提供するもので、科学的なエビデンスと進歩を継続的に評価する必要性を強調するものだ」としている。
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