MR拮抗薬「フィネレノン」に対し欧州医薬品委員会が肯定的見解 2型糖尿病を合併する幅広いCKD患者で心血管イベントを減少

2023.01.11
 ドイツ・バイエルは、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)が、「ケレンディア」(一般名:フィネレノン 10mg/20mg)の添付文書に、第3相臨床試験FIGARO-DKDから得られた心血管アウトカムに関する結果の追記を推奨する肯定的見解を採択したと発表した。

 2型糖尿病を合併する、ステージ1~4の幅広い慢性腎臓病(CKD)患者に対して、フィネレノンが心血管イベントのリスクを有意に減少したことを評価している。

2型糖尿病を合併する成人CKD患者で心血管イベントのリスクを有意に減少

 ケレンディアは、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与する。

 CHMPは、ケレンディア(10mg/20mg)について、2型糖尿病を合併する早期のCKDへの適応を拡大し、「ケレンディアは2型糖尿病を合併する成人CKD(アルブミン尿をともなう)の治療に適応する。腎臓および心血管イベントに関する試験結果についてはセクション5.1を参照のこと」とすることについて、承認を勧告した。欧州連合(EU)での販売承認を認可する欧州委員会(EC)の最終決定は、2023年の早い時期になる見込み。

 第3相臨床試験FIGARO-DKD試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者7,400人を対象に、標準治療に上乗せしたフィネレノンまたはプラセボについて、心血管疾患の罹患率と死亡率の減少に関して有効性と安全性を比較検討したもの。フィネレノンが2型糖尿病を合併する成人CKD患者で、心血管イベントのリスクを有意に減少させることが示された。

 同試験の結果は、2021年の欧州心臓病学会(ESC)学術集会で発表されると同時に、「New England Journal of Medicine」に掲載された。

 デンマーク・コペンハーゲンにあるステノ糖尿病センター合併症研究部門責任者であるピーター・ロシング教授は次のように述べている。
 「2型糖尿病を合併するCKDの早期ステージで、患者さんはすでに心血管イベントのリスク上昇に直面しています。心血管イベントのリスクは腎機能の低下とともに高まっているため、CKDの進行を抑え、心血管系の合併症や死亡を予防するためには、タイムリーな診断と治療が重要です。FIGARO-DKD試験は、アルブミン尿をともなう早期ⅰのCKDが大部分を占める2型糖尿病を合併するCKD患者で、心血管系への有用性を示した第3相臨床試験です」。

 「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、2型糖尿病のみの患者さんより心血管イベントで亡くなる可能性が約3倍高くなります。これらの患者さんには、腎疾患の進行を遅らせるとともに、心血管イベントのリスクを低減する治療選択肢が必要ですCHMPによる添付文書改訂の勧告は、ケレンディアが2型糖尿病を合併する幅広いCKD患者集団を対象に腎臓および心血管系への有用性を示した特徴的な治療選択肢であることを強調しています」と、同社では述べている。

 なお、国際的腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)の「CKDにおける糖尿病管理のための診療ガイドライン」は10月に改訂され、2型糖尿病を合併するCKD患者への包括的治療計画の一環として、腎臓および心血管系への有用性が示された非ステロイド型MRAとして、ケレンディアが提案されている。

 「レニンアンジオテンシン系阻害薬の最大忍容量にもかかわらず、推算糸球体濾過量(eGFR)が25ml/min/1.73m²以上、血清カリウム値が正常、アルブミン尿が30mg/g以上(3mg/mmol以上)の場合、2型糖尿病合併患者を対象に腎臓または心血管系への有用性が示された非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を提案(2A)」としている。

 ケレンディアは日本では、2つの第3相臨床試験FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDの結果にもとづき、2022年3月に厚生労働省より承認された。さらに、他の複数の国で審査当局より承認が得られたほか、現在販売許可の承認申請中としている。

ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書、適正使用ガイド、患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2021年12月9日)
KDIGO 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease: Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Diabetes Work Group (Kidney International 2022年11月1日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料