GLP-1受容体作動薬の処方が糖尿病患者の新生血管型加齢黄斑変性と関連
糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方と、新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)の発症リスクとの関連を示すデータが報告された。交絡因子調整後にもリスクが2倍以上高いという。トロント大学のReut Shor氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に6月5日掲載された。

この研究は、カナダのオンタリオ州の公的医療制度で収集されたデータを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。組み込み基準は、糖尿病と診断後12ヵ月以上の追跡が可能な66歳以上の患者であり、除外基準はデータ欠落、およびGLP-1RAが処方された患者においてその期間が6ヵ月に満たない患者。
これらの条件を満たす111万9,517人から、傾向スコアマッチングにより背景因子を一致させた13万9,002人(平均年齢66.2±7.5歳、女性46.6%)を抽出し、GLP-1RA処方群4万6,334人、非処方群9万2,668人から成る、患者数1対2のデータセットが作成された。
追跡期間3年におけるnAMD発症率は、GLP-1RA非処方群が0.1%であるのに対して処方群は0.2%であった。Cox比例回帰分析では、交絡因子調整の有無にかかわらず、GLP-1RA処方群のnAMD発症リスクが2倍以上有意に高いことが示された[粗モデルではハザード比(HR) 2.11、95%信頼区間 1.58~2.82]、調整モデルではHR2.21[同 1.65~2.96]。
著者らは、「得られた結果は、nAMD、糖尿病網膜症、非動脈炎性前部虚血性視神経症の増悪に、GLP-1RAが関与する可能性のある組織低酸素状態という機序を示唆する既報文献と一致している。ただし、本研究で明らかになった関連性に真の因果関係があるのか否かを判断し、その上でGLP-1RAを用いることのメリットとリスクのトレードオフの関係を理解するため、さらなる研究が求められる」と総括している。
一方、本研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスのTalia Kaden氏は、「網膜にGLP-1受容体が存在していることはすでに知られている。よってGLP-1RAの網膜に対する薬理的な作用を理解しようとし、その作用がどのような結果をもたらすのかを知ろうとするのは当然である。ただし、これまでに明らかにされたGLP-1RAが持つさまざまなメリットを考慮すると、本研究に登録された特定のコホートで見られたわずかなリスクの増加は、多くの人々にとってGLP-1RAの使用を避けるという判断の根拠にならないのではないか」と述べている。
なお、1人の著者が複数の医薬品・医療機器関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年6月6日]
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