MR拮抗薬フィネレノンの1型糖尿病を合併する成人CKD患者を対象とした第3相試験を開始 1型糖尿病の最大40%がCKDを発症
1型糖尿病を合併するCKD患者の治療選択肢は限られている 4分の1が末期腎不全に移行
フィネレノンは、ミネラルコルチコイド受容体(MR)に選択的に結合する非ステロイド型選択的MR拮抗薬で、MRの過剰活性化による悪影響を抑制する。MRの過剰活性化は、代謝、血行動態、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与する。
同薬は、2型糖尿病を合併するCKDの治療薬としては、すでに70ヵ国以上で承認されており、「ケレンディア」の名称で販売されている。
一方、1型糖尿病は、主に慢性代謝疾患である2型糖尿病とは異なり、遺伝や環境要因により膵β細胞が破壊されていると考えられている。1型糖尿病患者の最大40%がCKDを発症し、CKDの有病率は1990年~2007年に58.2%増加し、2007年~2017年には21.7%増加したとみられている。
1型糖尿病を合併する成人CKD患者には限られた治療選択肢しかなく、新しい治療薬は約30年間承認されていない。
1型糖尿病患者でのCKDの臨床経過は、腎障害の最初の兆候である尿中アルブミン排泄率の上昇によって特徴づけられ、後期には顕性アルブミン尿や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下へと移行する可能性がある。1型糖尿病患者の高血糖、高血圧、アルブミン尿を管理するためにガイドラインで推奨されている治療法があるにもかかわらず、残余リスクは依然として高く最大4分の1が末期腎不全に移行し、CKDは1型糖尿病での死亡の主要原因となっている。
FINE-ONE試験では、1型糖尿病を合併するCKDの成人被験者約220人を対象に、標準治療に上乗せしたフィネレノンをプラセボと比較検討する。
被験者は、標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]などのレニンアンジオテンシン系[RAS]阻害薬)に、フィネレノンまたはプラセボのいずれかを上乗せ投与する群に、1対1の割合で無作為割り付けされる。
同試験で、CKDの進行抑制に対するフィネレノンの有効性は、アルブミン尿の減少にもとづき評価され、主要評価項目は、プラセボと比較したときの治験薬投与6ヵ月にわたる尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)のベースライン時点からの変化(ベースライン時点に対する比率)。UACRはCKDの進行抑制を示すマーカーとして使用される予定。
2型糖尿病を合併するCKD患者を対象とした第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDに関し、事前規定された統合解析FIDELITYで、フィネレノンはCKDの進行ならびに致死的・非致死的心血管イベントのリスクを低下させるとともに、プラセボと比べUACRを一貫して持続的に30%以上低下させた。
副次評価項目はフィネレノンの安全性評価で、治験薬投与下で発現した有害事象、重篤な有害事象および高カリウム血症(特に注目すべき有害事象)を発現した患者数が含まれる。
「糖尿病と高血圧の管理は別として、1型糖尿病を合併するCKD患者さんの腎疾患の進行を遅らせる治療選択肢は現在、非常に限られている。2型糖尿病に対するリスク低減が進んでいるにもかかわらず、1型糖尿病を合併するCKDは依然として十分な研究が行われておらず、末期腎不全や心血管イベントのリスク低減に対する大きなアンメットニーズが残されている。腎機能の低下速度を遅らせるためには新たな戦略が必要とされている」と、ワシントン大学内分泌・代謝・脂質研究部門内科学のジャネット マッギル教授述べている。
1型糖尿病研究・支援団体JDRFのサンジョイ デュッタ氏は次のように述べている。
「長期にわたる腎合併症が1型糖尿病患者を苦しめているにもかかわらず、1型糖尿病を合併するCKDの患者での腎疾患進行の高い残余リスクに対処するための研究は極めて不十分だ。JDRFは、規制当局へ検討のために提出する目的で、バイエルが1型糖尿病を合併するCKD患者の腎アウトカムを改善するフィネレノンの効果を評価する臨床試験を実施していることに感動している」。
ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書、適正使用ガイド、患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
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