糖尿病とCKDの国際ガイドライン SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・MR拮抗薬の推奨事項を更新

2023.01.19
KDIGOがCKD患者の糖尿病管理ガイドラインを改訂

 腎疾患ガイドラインに関する国際機関(KDIGO)による、慢性腎臓病(CKD)患者の糖尿病管理に関するガイドラインが改訂され、米ベイラー医科大学のSankar D. Navaneethan氏らによる概要の解説が、「Annals of Internal Medicine」に1月10日掲載された。

 KDIGOが先ごろ発表したガイドラインは、2020年版の改訂版に当たり、13項目の推奨事項と52項目の実践ポイントが掲げられている。主要な改訂点は、SGLT2阻害薬(SGLT2-i)やGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関する新たなエビデンスを反映して推奨事項が更新されたこと、および新規ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)に関する推奨事項が追加されたこと。全体的な体系は2020年版を踏襲しており、ライフスタイル介入、自己管理などをベースとして、病態に応じてSGLT2-iやGLP-1RA、MRAなどを加えるという階層化されたアプローチを示している。

 SGLT2-iについては、腎臓と心血管の保護に関するエビデンスがあり、2型糖尿病でないCKD患者でも安全性とベネフィットが確認されているとし、血糖管理状態にかかわりなく、2型糖尿病およびCKD患者にとって好ましい第一選択薬であると述べられている。具体的には、従来よりも腎機能が低下した患者に対しての使用が推奨された。その内容は、「eGFRが20mL/分/1.73m²以上の2型糖尿病またはCKD患者への使用を推奨する(強い推奨/エビデンスレベル:高)」というもの。また、実践ポイントとして、SGLT2-iで治療されている患者のeGFRが20mL/分/1.73m²を切った場合も、腎代替療法が開始されるまで継続使用することは合理的であると記されている。

 GLP-1RAについては、肥満、2型糖尿病、CKD患者には優先的に使用することで、意図的な減量を図ることが可能とする、実践的ポイントが加えられた。同薬の心血管系へのメリットは、eGFRレベルにかかわらず認められ、メトホルミンやSGLT2-iでは血糖管理目標に到達していない患者、またはそれらを使用できない患者に推奨されるとしている。

 新規MRAについては、主として非ステロイド型選択的MRAであるフィネレノンに関するエビデンスをもとに、新たに推奨が加えられた。その内容は、「最大耐用量のRAS阻害薬(RASi)を使用しているにもかかわらずアルブミン尿(30mg/gCr以上)が認められ、eGFR25mL/分/1.73m²以上で血清カリウムレベルが正常な2型糖尿病患者には、非ステロイド型選択的MRAの使用を推奨する(弱い推奨/エビデンスレベル:高)」というもの。

 非ステロイド型選択的MRAに関する実践ポイントとしては、2型糖尿病やCKD治療のためのRASiやSGLT2-iに上乗せ可能であること、高カリウム血症のリスク抑制のため、血清カリウムレベルが正常な患者を投与対象とし、投与開始後は血清カリウムレベルを定期的にモニタリングすること、腎臓または心血管系にベネフィットのある薬剤を非ステロイド型選択的MRAに優先して用いることなどが示されている。

 なお、論文中では、「新たな治療法の適用によって発生する医療コストは、明らかに臨床上の障壁だ。ただし、それらの治療が腎代替療法の回避または遅延につながり、結果として費用対効果は高くなる可能性がある」との考察も付け加えられている。

[HealthDay News 2023年1月9日]

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