【米国糖尿病学会】月1回注射の肥満症治療薬を開発 第2相試験は有望な結果に

この研究は、アムジェン社が開発中の新規肥満症治療薬MariTideの第2相試験として実施された。MariTideは、既存の肥満症治療薬と同様にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の受容体刺激作用を発揮するとともに、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体拮抗作用も有する。また、モノクローナル抗体を組み合わせることで、薬剤が体内に長くとどまるように工夫されている。このため投与間隔を長く設定でき、月に1回の注射で減量効果を示す。
米デューク大学のMichelle Ponder氏は、「治療選択肢は多ければ多いほど良く、新たな選択肢が加わることは、患者にとっても処方する医師にとっても恩恵と言える」と、NBCの取材に答えている。また、「糖尿病を有する肥満症患者で特にメリットがより大きい」とし、その理由として、「糖尿病患者はインスリン注射だけで1日に複数回注射していることもあるため、減量のための注射の回数は少ないほど負担が減る」と述べている。
第2相試験は、肥満症のみの患者465人(平均年齢47.9歳、女性63%、BMI37.9)、および肥満2型糖尿病患者127人(同55.1歳、女性42%、BMI36.5)が参加し、プラセボ対照二重盲検比較試験として実施された。肥満症のみの患者でMariTideが割り当てられていた群は1年間で、投与量により-12.3~-16.2%の体重変化が認められた。一方、プラセボが割り当てられていた群は-2.5%の変化だった。肥満2型糖尿病患者では、実薬群-8.4~-12.3%、プラセボ群-1.7%の体重変化だった。
アムジェン社のJay Bradner氏はNBCに対し、「実薬群の体重減少は1年経過した時点でも停滞していなかった」と語っている。これは、治療期間を延長することで、さらなる減量が期待できることを示唆している。
このほかに、肥満2型糖尿病患者の実薬群ではHbA1cが最大2.2パーセントポイント低下していた。また、血圧やコレステロール、炎症マーカーの改善作用も認められた。一方、有害事象に関しては既存のGLP-1受容体作動薬と同様に、消化器症状が多く見られた。
MariTide開発の次のステップは、72週間にわたる第3相試験であり、正式に承認されるのはまだしばらく先と見込まれる。なお、同社は月1回ではなく、隔月投与の試験も行っており、Bradner氏によると、体重減少効果は月1回投与と同等だが有害事象がより多く見られるという。
ADA2025ではこのほかに、イーライリリー社やノボノルディスク社の新薬に関する治験データが報告された。
イーライリリー社のeloralintideは、胃からの排出を遅らせるホルモンであるアミリンのアナログ製剤(類似薬)で、第1相試験の結果、12週間での体重変化は-11.3%であり、同社の既存の肥満症治療薬に比べて消化器系の副作用が少ないという。また同社の別の薬剤で、GLP-1、GIP、およびグルカゴン受容体に働きかけるretatrutideについては、約24%の減量効果が示されたことが報告された。
ノボノルディスク社は、セマグルチドとアミリンのアナログであるcagrilintideの配合剤CagriSemaに関する第3相試験の結果を報告し、糖尿病のない参加者では68週間で-20.4%、2型糖尿病をともなう参加者では-13.7%の体重変化が認められたという。
[HealthDay News 2025年6月25日]
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