単一遺伝子糖尿病の臨床的・遺伝学的特徴を全国規模で解明 日本糖尿病学会

2025.10.10
日本糖尿病学会「単一遺伝子異常による糖尿病の成因・診断・治療に関する調査研究委員会」は、単一遺伝子糖尿病の国内における実態を明らかにするための研究を実施し、10月1日にその成果を報告した。本研究の詳細は、学術誌「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」(2025年8月25日付)に掲載された。

 糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病以外に、発症年齢や家族歴などの特徴から特定の遺伝子の変化(バリアント)が主な原因として疑われる糖尿病(単一遺伝子糖尿病)が存在している(若年発症成人型糖尿病〔MODY〕、新生児糖尿病、ウォルフラム症候群など)。

 単一遺伝子糖尿病は、原因となる遺伝子の種類によって治療方針が大きく異なるため、治療方針や予後、生活の質に大きく影響しうり、早期の診断が重要となる。ただし、日本では標準的なスクリーニング基準が整備されておらず、単一遺伝子糖尿病の実態が十分に把握されていないため、多くの患者が診断に至っていない可能性がある。

 以上の背景から、日本糖尿病学会の「単一遺伝子異常による糖尿病の成因・診断・治療に関する調査研究委員会」(委員長:稲垣暢也)は2019年以降、単一遺伝子糖尿病が疑われる症例に対して遺伝子解析を行う全国規模の研究を進めてきており、今回その成果を報告した。

 解析の結果、本邦における若年発症で非肥満、かつ膵島関連自己抗体が陰性の糖尿病症例の約3割(28.9%)に、病的または病的可能性の高い遺伝子バリアントが存在することが明らかになった。さらに、その大部分は治療方針に直結する重要な情報であり、単一の臨床指標や従来のスクリーニング基準だけでは十分に診断されないことも分かった。これらの結果から、単一遺伝子糖尿病が疑われる症例には、遺伝子解析を幅広く提供することが重要であると示された。

 委員会は本結果を受け、「今後も遺伝子解析を幅広く提供し、より多くの患者が正確な診断と適切な治療に結びつくよう努めていくことが重要と考える」としており、また「これまでの成果を基盤として、遺伝子解析支援の継続や新たな原因遺伝子の探索に引き続き取り組んでいく」とコメントしている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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