糖尿病の眼疾患の合併リスクは血糖管理が不十分の高齢患者では3倍に上昇 糖尿病網膜症リスクは2割増

糖尿病の血糖管理が不良だと眼疾患の診断が増加
5,000人超を14年間追跡して調査
血糖管理が十分でない高齢の糖尿病患者は、適切に管理できている患者と比較し、眼疾患を合併する性が3倍高いことが、英ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン(UCL)の新しい研究で示された。
研究は、同大学疫学ヘルスケア研究所のStephen Jivraj氏、グローバル ビジネス スクール フォー ヘルスのCaitlin Lin氏らよるもの。研究成果は、「BMJ Open」に掲載された。
研究グループは、英国高齢者縦断研究(English Lotudinal Studios of Ageing)に参加したイングランド在住の50歳以上の成人5,672人(平均年齢 66歳、女性 53%)の2004~2019年のデータを用いて、糖尿病性眼疾患、緑内障、黄斑変性症、白内障の診断のリスク因子として、血糖管理がどう影響するかを調査した。
糖尿病性眼疾患は一般的に糖尿病網膜症を示すが、糖尿病は緑内障、黄斑変性、白内障のリスクも高めることが知られている。
研究グループは、参加者をベースラインの血糖管理により、非糖尿病群(糖尿病診断歴なし、HbA1c 6.5%未満)、管理良好群(糖尿病診断歴あり、HbA1c 6.5%未満)、管理不良群(糖尿病診断歴あり、HbA1c 6.5%以上)、未診断群(糖尿病診断歴なし、HbA1c 6.5%以上)に分類し比較した。ベースラインの年齢、性別、身体活動レベル、BMI、喫煙状況のコントロールを回帰分析に含め解析した。
その結果、研究開始時に血糖値が高かった管理不良の糖尿病患者は、14年間で糖尿病性眼疾患の発症率が31%であることが示された。対照的に、血糖値が正常範囲内の管理良好群では、同時期の発症率は9%に抑えられた。管理不良群では、緑内障と黄斑変性症の発症率も高かった。
管理良好群と比較すると、糖尿病性眼疾患の発症は、管理不良群で1.20倍[95%信頼区間 1.00~1.45]に、緑内障の発症の調整オッズは、非糖尿病群で1.29倍[同 1.01~1.65]に、黄斑変性症発症の発症は、未診断群で1.38倍[同 1.04~1.82]にそれぞれ上昇した。白内障の発症については、血糖管理のカテゴリーによる有意差はなかった。
糖尿病の未診断群でも、管理良好群と比較すると眼疾患を発症するリスクが高く、14年間で糖尿病性眼疾患を発症する可能性は23%高く、黄斑変性症は38%高かった。
「糖尿病性眼疾患を発症するオッズは、研究開始から2年後には、管理良好群で5%、管理不良群で7%と予想していたが、研究終了時にはそれぞれ9%と31%に上昇した」と、Jivraj氏は述べている。
「眼疾患の発症を抑制するために、血糖管理が重要であることがあらためて示された。糖尿病リスクのある高齢者グループでの眼疾患のスクリーニング対策のさらなる定期実施が望まれる」と、Lin氏は指摘している。
High glucose levels in people with diabetes linked to tripling of eye disease risk (ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン 2025年6月8日)
Are diabetes and blood sugar control associated with the diagnosis of eye diseases? An English prospective observational study of glaucoma, diabetic eye disease, macular degeneration and cataract diagnosis trajectories in older age (BMJ Open 2025年6月30日)