【米国糖尿病学会】GLP-1受容体作動薬による筋肉減少を防ぐ ビマグルマブとの併用により筋肉量を維持・増強 筋肉減少を検知するセンサーも開発

2025.07.15
 GLP-1受容体作動薬とビマグルマブの併用は、除脂肪体重を維持し、サルコペニア管理に有用である可能性があることが、セマグルチドとビマグルマブを併用したBELIEVE試験で示された。

 GLP-1受容体作動薬などによる筋肉損失を防ぐためのツールとして、筋肉の減少を検知する新規タンパク質センサーを開発しているという研究も発表された。

 詳細は、6月にシカゴで開催された第85回米国糖尿病学会学術集会(ADA2025)で発表された。

GLP-1受容体作動薬とビマグルマブの併用により筋肉量を維持・増強

 GLP-1受容体作動薬とビマグルマブの併用は、除脂肪体重を維持し、サルコペニア管理に有用である可能性があることが、セマグルチドとビマグルマブを併用したBELIEVE試験で示された。詳細は、6月にシカゴで開催された第85回米国糖尿病学会学術集会(ADA2025)のシンポジウムで発表された。

 ビマグルマブは、骨格筋疾患のために開発された、ヒトアクチビン受容体II型に対するモノクローナル抗体。

 「GLP-1受容体作動薬には、主に中枢神経系と末梢神経系を介して食欲を抑制する作用がある。一方、ビマグルマブは、加齢にともなう筋肉減少であるサルコペニアの治療薬として開発され、アクチビン受容体に結合して筋肉の維持と成長を促す。アクチビン受容体は脂肪細胞にもある」と、ペニントン生物医学研究センターのSteven Heymsfield教授は言う。

 「GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬をベースとした治療を受けている米国人の数は、この5年間で587%増加した。肥満症の治療は新たな時代を迎えている」と、ジョスリン糖尿病センターおよびボストン医療センターのSamar Hafida氏は言う。

 「しかし、体重減少にともなう筋肉量の減少が懸念されている。脂肪量の減少の方が除脂肪体重の減少よりも多いにしても、GLP-1受容体作動薬を使った治療による体重減少のうち、除脂肪体重は最大15~40%を占めるという報告もある。減量だけでなく、筋肉量を維持し、肥満症の治療による健康効果を高めることは重要だ」としている。

 第2b相BELIEVE試験は、肥満あるいは過体重の成人を対象に、セマグルチドとビマグルマブの併用および単独投与による効果を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。507人の被験者が、4週目、16週目、28週目、40週目に、週1回のセマグルチド皮下注射、および/あるいはビマグルマブ静脈内注入を受けた。主要評価項目はベースラインからの体重の変化で、副次評価項目はウエスト周囲径、体脂肪量、内臓脂肪組織、除脂肪体重の変化だった。

 その結果、セマグルチドとビマグルマブの併用療法は、いずれかの単独療法と比較して、体重、体脂肪、内臓脂肪、炎症マーカーの減少率が大きいことが示された。

 脂肪量による総体重の減少は、併用療法では92.8%に上ったが、セマグルチド単独療法では71.8%だった。セマグルチドとビマグルマブの併用により除脂肪体重の減少が抑えられたことが示された。体重減少は、併用療法では-22.1%で、セマグルチド単独療法では-15.7%、ビマグルマブ単独療法では-10.8%だった。

 なお、ビマグルマブ単独療法では、体重減少の100%が脂肪量によるものであり、除脂肪体重は2.5%増加した。

 「今回の試験は、2型糖尿病と肥満症の治療の進化であの新たな大きな一歩となる可能性がある。セマグルチドの顕著な減量効果を基盤に、ビマグルマブとの併用により患者の転帰の改善を期待できる。得られた知見は、大幅な脂肪減少を達成するだけでなく、その過程で除脂肪体重を維持、あるいは増強することさえ可能であることを示している」と、Heymsfield教授は述べている。

 ビマグルマブとチルゼパチドの併用による効果と安全性への影響を評価する試験も進行中としている。

GLP-1受容体作動薬による筋肉減少を
検知するバイオセンサーを開発
 ADA2025では、GLP-1受容体作動薬などによる筋肉損失を防ぐためのツールとして、筋肉の減少を検知する新規タンパク質センサーを開発しているという研究も発表された。

 この研究では、インクレチンをベースとした治療を受けている患者での除脂肪筋肉量(LLMM)の減少とタンパク質摂取を追跡するためのバイオセンサーを評価。このセンサーは、DNAベースのバイオレセプター(アプタマー)を用いて、筋肉の分解時あるいはタンパク質摂取後に放出される重要なバイオマーカーであるフェニルアラニンを検出するように設計されている。

 健康な成人のフェニルアラニン濃度は、高タンパク食摂取時には100µM/L以上だが、同バイオセンサーの試験では、最大1500µM/Lのフェニルアラニン濃度で検討された。

 その結果、同センサーは、生理学的範囲内および範囲外で、低い検出限界(4µM/L)でフェニルアラニンを効果的に検出することが示された。センサーの経時安定性、直線的な性能、さらには7日間にわたる感度低下が最小限であることも示された。

 「GLP-1受容体作動薬などは、糖尿病と肥満症の治療に革命をもたらしたが、同時に筋肉量の減少リスクを高める可能性も示されている」と、センサーを開発してBiolinq社の先進センサー技術担当副社長のRebecca Gottlieb氏は言う。

 「筋肉量を維持するために、患者はより多くのタンパク質を摂取することが勧められることが多いが、十分な量を摂取できているかを知るのは困難だ。リアルタイムにフィードバックを提供するソリューションを開発することは、とくにGLP-1受容体作動薬などによる治療・管理を受けている患者、高齢者、サルコペニアのある患者では重要になる」としている。

第85回米国糖尿病学会学術集会 (ADA2025)
Researchers to share weight loss results from bimagrumab and semaglutide combo (米国糖尿病学会 2025年5月9日)
New GLP-1 Therapies Enhance Quality of Weight Loss by Improving Muscle Preservation (米国糖尿病学会 2025年6月23日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料