【米国糖尿病学会】GLP-1受容体作動薬による筋肉減少を防ぐ ビマグルマブとの併用により筋肉量を維持・増強 筋肉減少を検知するセンサーも開発

GLP-1受容体作動薬とビマグルマブの併用により筋肉量を維持・増強
GLP-1受容体作動薬とビマグルマブの併用は、除脂肪体重を維持し、サルコペニア管理に有用である可能性があることが、セマグルチドとビマグルマブを併用したBELIEVE試験で示された。詳細は、6月にシカゴで開催された第85回米国糖尿病学会学術集会(ADA2025)のシンポジウムで発表された。
ビマグルマブは、骨格筋疾患のために開発された、ヒトアクチビン受容体II型に対するモノクローナル抗体。
「GLP-1受容体作動薬には、主に中枢神経系と末梢神経系を介して食欲を抑制する作用がある。一方、ビマグルマブは、加齢にともなう筋肉減少であるサルコペニアの治療薬として開発され、アクチビン受容体に結合して筋肉の維持と成長を促す。アクチビン受容体は脂肪細胞にもある」と、ペニントン生物医学研究センターのSteven Heymsfield教授は言う。
「GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬をベースとした治療を受けている米国人の数は、この5年間で587%増加した。肥満症の治療は新たな時代を迎えている」と、ジョスリン糖尿病センターおよびボストン医療センターのSamar Hafida氏は言う。
「しかし、体重減少にともなう筋肉量の減少が懸念されている。脂肪量の減少の方が除脂肪体重の減少よりも多いにしても、GLP-1受容体作動薬を使った治療による体重減少のうち、除脂肪体重は最大15~40%を占めるという報告もある。減量だけでなく、筋肉量を維持し、肥満症の治療による健康効果を高めることは重要だ」としている。
第2b相BELIEVE試験は、肥満あるいは過体重の成人を対象に、セマグルチドとビマグルマブの併用および単独投与による効果を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。507人の被験者が、4週目、16週目、28週目、40週目に、週1回のセマグルチド皮下注射、および/あるいはビマグルマブ静脈内注入を受けた。主要評価項目はベースラインからの体重の変化で、副次評価項目はウエスト周囲径、体脂肪量、内臓脂肪組織、除脂肪体重の変化だった。
その結果、セマグルチドとビマグルマブの併用療法は、いずれかの単独療法と比較して、体重、体脂肪、内臓脂肪、炎症マーカーの減少率が大きいことが示された。
脂肪量による総体重の減少は、併用療法では92.8%に上ったが、セマグルチド単独療法では71.8%だった。セマグルチドとビマグルマブの併用により除脂肪体重の減少が抑えられたことが示された。体重減少は、併用療法では-22.1%で、セマグルチド単独療法では-15.7%、ビマグルマブ単独療法では-10.8%だった。
なお、ビマグルマブ単独療法では、体重減少の100%が脂肪量によるものであり、除脂肪体重は2.5%増加した。
「今回の試験は、2型糖尿病と肥満症の治療の進化であの新たな大きな一歩となる可能性がある。セマグルチドの顕著な減量効果を基盤に、ビマグルマブとの併用により患者の転帰の改善を期待できる。得られた知見は、大幅な脂肪減少を達成するだけでなく、その過程で除脂肪体重を維持、あるいは増強することさえ可能であることを示している」と、Heymsfield教授は述べている。
ビマグルマブとチルゼパチドの併用による効果と安全性への影響を評価する試験も進行中としている。
検知するバイオセンサーを開発
第85回米国糖尿病学会学術集会 (ADA2025)
Researchers to share weight loss results from bimagrumab and semaglutide combo (米国糖尿病学会 2025年5月9日)
New GLP-1 Therapies Enhance Quality of Weight Loss by Improving Muscle Preservation (米国糖尿病学会 2025年6月23日)