MR拮抗薬「フィネレノン」を臨床ガイドラインで推奨 2型糖尿病を合併するCKD患者に対し 欧州心臓病学会(ESC)

2023.09.20
 バイエル薬品は、MR拮抗薬「フィネレノン」(商品名:ケレンディア)について、欧州心臓病学会(ESC)が発表した2件のガイドラインに、いずれもⅠAで推奨されたと発表した。

 ESCガイドラインでは、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者に対し、フィネレノンおよび/またはSGLT2阻害薬による治療がクラスⅠエビデンスレベルA(ⅠA)で推奨された。

 フィネレノンは、2型糖尿病を合併するCKD患者の心不全(HF)による入院リスク低下についてもⅠAで推奨された。

2型糖尿病を合併するCKD患者に対しMR拮抗薬「フィネレノン」を推奨

 「フィネレノン」(商品名:ケレンディア)は非ステロイド型選択的MRAで、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰活性化による悪影響を抑制する。MRの過剰活性化は、代謝・血行動態・炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性がある心血管系および腎臓の障害に寄与する。

 このほど発表された糖尿病患者の心血管疾患の管理に関する欧州心臓病学会(ESC)のガイドライン2023年版では、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者に対し、標準治療への上乗せにより心血管系と腎不全のリスクを低下させることが反映され、フィネレノンおよび/またはSGLT2阻害薬による治療がⅠAとして推奨された。

 同ガイドラインでは糖尿病患者に対し、推算糸球体濾過量(eGFR)と尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)を測定することにより、CKDのスクリーニングを少なくとも年1回行うことを推奨している。

 さらに、急性・慢性HFの診断と治療に関するESCガイドライン2021年版のフォーカスアップデート版では、2型糖尿病を合併するCKD患者の心不全(HF)による入院リスクの低下に関し、フィネレノンがⅠAとして推奨された。

 ⅠAの推奨は、ESCガイドラインの定義では、その治療が有益・有効であることを証明するエビデンスがある、またはコンセンサスが形成されているとともに、複数の無作為化臨床試験またはメタ解析から得られたデータがエビデンスになっていることを意味する。

 フィネレノンに対するESCガイドラインの推奨は、心腎アウトカムを検討した第3相臨床試験プログラムを構成する第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDにもとづいている。これら2試験には、早期から進行したCKD患者を含め、世界中の2型糖尿病を合併する幅広い重症度のCKD患者1万5,000人以上が無作為割り付けされた。

 同プログラムでは、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、心血管死、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、HFによる入院の発現率低下、また、腎不全および腎疾患の進行抑制に関し、標準治療に上乗せしたときのフィネレノンの有効性と安全性がプラセボと比較検討された。

 なお、「ケレンディア」は日本では、「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く」を効能・効果として2022年3月に承認され、同年6月よりバイエル薬品が販売している。

 これらについて、かわぐち心臓呼吸器病院副院長の佐藤直樹氏は次のように述べている。
 「2型糖尿病を合併するCKDの患者が高い心血管リスクを有していることを認識すべきだ。2型糖尿病とCKDを合併している患者は、CKDを合併しない2型糖尿病の患者と比較して、心血管系が原因で亡くなる可能性が少なくとも3倍高くなる。その際、eGFRだけでなく、尿中アルブミンの定量をしっかり行うことが大切だ。治療法を選択する際には、CKDの進行を遅らせるだけでなく、心血管リスクを低下させることができるかが重要になる。この点がESCガイドラインに反映されたことは、今後の2型糖尿病を合併するCKD患者のマネジメントで重要となる」。

 「2型糖尿病を合併するCKDの患者のHFによる入院リスクを低下させる可能性を含め、心血管系だけでなく腎臓に対するフィネレノンの有用性が認められた。これらの最新ガイドラインは、臨床試験から得られた最新のエビデンスにもとづき、臨床医が患者をスクリーニングし、治療成績を向上させるための戦略となる。また、心腎連関とともに、心血管疾患や合併症の複雑さも示している」と、ドイツ・バイエル社では述べている。

2023 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease in patients with diabetes: Developed by the task force on the management of cardiovascular disease in patients with diabetes of the European Society of Cardiology (ESC) (European Heart Journal 2023年8月25日)
2023 Focused Update of the 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure: Developed by the task force for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure of the European Society of Cardiology (ESC) With the special contribution of the Heart Failure Association (HFA) of the ESC (European Heart Journal 2023年8月25日)

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