MR拮抗薬「フィネレノン」 ハイリスク患者集団の心血管・腎アウトカムと死亡率の統合解析 ESC2024で発表

2024.09.11
 バイエル薬品は、MR拮抗薬「フィネレノン」(商品名:ケレンディア)について、心・腎・代謝疾患を有するハイリスク患者集団の心血管・腎アウトカムと死亡率に関する統合解析の最新データが、2024年欧州心臓病学会学術集会(ESC2024)で発表されたと発表した。

 フィネレノン群でプラセボ群より、主要評価項目である心血管死の発現割合は低値だったものの統計学的有意差にはわずかに達しなかったものの、フィネレノン群は全死亡、心血管および腎アウトカムは改善し、心血管死のイベントの発現リスクを12%減少した。

フィネレノン群は全死亡・心血管・腎アウトカムがプラセボ群よりも改善

 バイエル薬品は、MR拮抗薬「フィネレノン」(商品名:ケレンディア)について、心・腎・代謝(CKM)疾患を有するハイリスク患者集団の心血管・腎アウトカムと死亡率に関する統合解析の最新データが、2024年欧州心臓病学会学術集会(ESC2024)で発表されたと発表した。

 統合解析FINE-HEARTは、幅広い層の心・腎・代謝疾患患者を対象に、フィネレノンの有効性と安全性を検討する最大規模の解析。同統合解析は、第3相臨床試験FINEARTS-HF、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKDに登録されたHFおよび/または2型糖尿病を合併するCKD(慢性腎臓病)患者約1万9,000人を対象としている。

 FINE-HEARTは、LVEF 40%以上のHF(心不全)患者の主な特徴である併存疾患の負荷が高い患者を含め、HFおよび/または2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、心血管および腎臓のアウトカム対するフィネレノン(ケレンディア)の効果を検討するためにデザインされた。

 完了した第3相臨床試験3試験の事前規定されたFINE-HEARTで、主要評価項目である心血管死の発現割合は、フィネレノン群でプラセボ群より低値だったものの、統計学的有意差にはわずかに達しなかった[相対リスク11%減少、ハザード比(HR)0.89、95%CI 0.78~1.01、p=0.076]。

 一方、重要な点としてFINE-HEARTの主要評価項目の事前規定された感度分析で、原因不明の死亡を加えて心血管死を評価した場合、フィネレノン群は心血管死のイベントの発現リスクを12%減少させた[相対リスク減少、HR 0.88、95%CI 0.79~0.98、p=0.025]。心血管死に対するフィネレノン群の効果は、FINE-HEARTで検討された16のサブグループでおおねむ一貫していた。

 また、全死亡、心血管および腎アウトカムについては、フィネレノン群はプラセボ群よりも改善を示した。

 FINE-HEARTの結果より、心・腎・代謝疾患を含む幅広い層のハイリスク患者で、フィネレノン群の心腎ベネフィットが示された。FINE-HEARTから得られた知見は、2024年欧州心臓病学会学術集会のホットラインセッションで発表され、「nature medicine」に掲載された。

 ブリガム アンド ウィメンズ病院循環器専門医、心代謝性疾患実装科学センター共同ディレクターで、ハーバード大学医学部教授であるムタイア・バデュガーナサン氏は次のように述べている。
 「心・腎・代謝疾患は疫学的に大きく重複しており、メカニズム経路が共通していることを考えると、FINE-HEARTのデータは臨床医にとって歓迎すべきニュースだ。フィネレノンが、心臓と腎臓の病態生理の基本的な要因に対処していることが分かった。フィネレノンを用いた個々の第3相臨床試験では、主要なサブグループでの心血管死や有効性を評価するための検出力が不足していたが、FINE-HEARTでは解析に含めた被験者数が多かったため、これらのアウトカムを検討することができ、multimorbid(多疾患併存)の患者の治療に関し、臨床医にとって重要で勇気づけられる知見を得ることができた」。

 FINE-HEARTの主要評価項目である心血管死は統計学的有意差に達しなかったが、副次評価項目はすべて、プラセボ群と比較したときのフィネレノン群のベネフィットが示されたとしている。

 なかでも注目すべきこととして、フィネレノン群が全死亡を9%減少させ[HR 0.91、95%CI 0.84~0.99、p=0.027]、腎複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から50%以上の持続的な推算糸球体濾過量[eGFR]低下、腎臓死の最初の発症までの時間)を20%減少させ[HR 0.80[95%CI 0.72~0.90、p<0.001]、HFによる入院の発現割合を17%低下させた[HR 0.83、95%CI 0.75~0.92、p<0.001]ことを挙げている。

 「HF、CKD、2型糖尿病は共通のリスク因子を有する。3つの第3相臨床試験の被験者約1万9,000人を含むFINE-HEARTによって、フィネレノンのこれまでの良好な結果が補完され、裏付けられる。これらの知見は、フィネレノンがアンメットメディカルニーズの高い患者のアウトカムを改善できることを示しており、臨床医にとって非常に意義深い研究結果と考えられる」と、ドイツ・バイエル社では述べている。

 フィネレノンは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、MRおよびレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰活性化を標的とすることで、HFとCKDに強く関連することが知られている慢性的で進行性の炎症や線維化の促進因子に対応する。

 統合解析FINE-HEARTでのフィネレノン群の忍容性は良好であり、フィネレノンの既知の安全性プロファイルと一貫しているとしている。

Finerenone in Heart Failure and Chronic Kidney Disease with Type 2 Diabetes: the FINE-HEART pooled analysis of cardiovascular, kidney, and mortality outcomes (nature medicine 2024年9月1日)

ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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