米国糖尿病学会が「ADA診療ガイドライン2024年版」を発表 糖尿病の包括的ケアを実現するために最新アップデート
米国糖尿病学会が「ADA診療ガイドライン2024年版」を発表
米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病の診療ガイドラインとして位置付けられる「糖尿病の標準治療2024」(Standards of Care in Diabetes - 2024)を発表した。
新ガイドラインに追加された主な情報は以下の通り――。
- 治療的惰性(セラピューティック イナーシャ)を軽減し、個別化医療を促進することを勧奨。
- 糖尿病患者の肥満管理の強化。BMIによる肥満度の測定に、胴囲・ウエストとヒップの比率・ウエストと身長の比率を加えるアプローチを推奨。
- 肥満症をともなう糖尿病患者の持続的な体重管理目標を達成するために、新しいクラスの肥満治療薬[GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬]の使用に関する詳細なガイダンスを追加。
- 糖尿病患者の心不全(HF)に対する新しいスクリーニングの推奨事項を更新。
- 糖尿病患者の末梢動脈疾患(PAD)に対するスクリーニングに関する推奨事項を更新。
- プライマリケアおよび糖尿病クリニックでの、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のスクリーニングに関する推奨を追加。
- 1型糖尿病の発症を遅らせる免疫療法薬である「テプリズマブ」のスクリーニングと使用に関するガイダンスを追加。
- 新しい持続血糖モニター(CGM)と自動インスリン送達(AID)システムに重点をおいた糖尿病治療について追加。
- 糖尿病の診断と分類に関するガイダンスを更新。低血糖症の予防と管理に焦点をあてている。
- 骨粗鬆症や骨の健康の評価と治療について情報を追加し、糖尿病患者に多い骨折などの危険因子への注意を喚起。
- AI(人工知能)を用いた糖尿病網膜症のスクリーニングなどの遠隔医療や、糖尿病患者の自己管理教育でのデジタルツールの使用など、医療従事者による糖尿病の新しい医療技術の習得について追加。
- 糖尿病患者の新型コロナ感染と、1型糖尿病の新規発症に関連する最新の情報を追加。
- 60歳以上の糖尿病患者を対象に新たに承認されたRSウイルスワクチンなど、予防接種ガイダンスを更新。
- 糖尿病患者の自己管理教育で文化的感受性を高めることを重視し、償還政策の変更を検討。
- 糖尿病がもたらすストレスや苦痛をよりよく特定するための心理社会的アプローチの必要性を指摘。
- 包括的および個別化したパーソン センタード ケアの継続の要請を強調。
「最新のADAガイドラインは、糖尿病管理のためのエビデンスにもとづく包括的なケアを推奨するもので、今回の改訂では医療従事者にとって極めて重要なアップデートを提示した。これらの変更は、患者中心の医療の実践を通じて転帰を最適化するという、ADAの継続的な取り組みを反映したものだ」と、ジョスリン糖尿病センターおよびハーバード大学医学部のRobert Gabbay氏は述べている。
ADAは診療ガイドラインの策定にあたり、医師・看護師・糖尿病療養指導士・教育スペシャリスト・登録栄養士・薬剤師、医療政策の専門家など、さまざまな専門的背景をもつ21人のエキスパートで構成される専門家プラクティス委員会(PPC)を設け、制作にあたっては19人の専門家の協力を得ているほか、米国心臓病学会や米国肥満学会などとも連携しているとしている。
The American Diabetes Association Releases the Standards of Care in Diabetes—2024 (米国糖尿病学会 2023年12月11日)
Standards of Care in Diabetes - 2024 (Diabetes Care Volume 47, Issue Supplement 1 2024年1月)