日本糖尿病学会アクションプラン「DREAMS」で糖尿病解決先進国を目指す

2014.05.28
第57回日本糖尿病学会年次学術集会

 第57回日本糖尿病学会年次学術集会が、5月22日~24日に大阪国際会議場などで開催された。日本糖尿病学会理事長の門脇孝氏は、2010年に提唱した「DREAMS」の直近の2年間の活動を理事長声明で発表し、「糖尿病臨床と研究のさらなる発展」を実現し、「糖尿病解決先進国を目指す」と呼びかけた。

 「第2次対糖尿病戦略5ヵ年計画」にもとづく日本糖尿病学会のアクションプランである「DREAMS」では、具体的な目標が掲げられている。次の6項目の頭文字をとり「DREAMS」と命名された。
(1)糖尿病の早期診断・早期治療体制の構築(Diagnosis and Care)
(2)研究の推進と人材の育成(Research to Cure)
(3)エビデンスの構築と普及(Evidence for Optimum Care)
(4)国際連携(Alliance for Diabetes)
(5)糖尿病予防(Mentoring Program for Prevention)
(6)糖尿病の抑制(Stop the DM)

 このうち早期診断・早期治療体制の構築(D)としては、HbA1c値と血糖値による1回の検査で診断を可能にした診断基準の改訂、HbA1c測定値の国際標準化(NGSP値への統一)、合併症予防のための多くの糖尿病患者における血糖管理目標値をHbA1c7%未満とし、Patient-figureed approachを強調した血糖コントロール目標の改訂(6%未満、7%未満、8%未満の3段階)、熊本宣言2013(「Keep your A1c below 7%」)による啓発活動などを行った。

 研究事業(R)と人材の育成としては、アンケート調査による日本人糖尿病の死因に関する研究、糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査研究、膵・膵島移植に関する調査研究などを計画していり。また、日本癌学会と共同で「糖尿病と癌に関する委員会」(委員長:春日雅人氏)を立ち上げ、「アンケート調査による日本人糖尿病の死因に関する研究委員会」(委員長:中村二郎氏)では2000~2010年に3万6243例の患者が登録され、近くその集計結果が発表される。

 「東日本大震災から見た災害時の糖尿病医療体制構築のための調査研究」(委員長:佐藤謙氏)からは今年3月、『糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル』が刊行された。「食事療法に関する委員会」(委員長:宇都宮一典氏)からは食事療法に関する日本糖尿病学会の提言を行い、適正な食事療法の普及を促した。

 一方で、この5年間で米国の循環器専門誌への論文投稿が半減しており、日本の研究力の低下を危惧する声が上がっている。これを受けて、米国糖尿病学会の「Diabetes」および「Diabetes Care」について、日本からの論文投稿数の推移を調査した。その結果、投稿論文数はむしろ増加傾向にあり、直接的には研究力の低下が危惧される事態にはないことが確認された。だが基礎研究は増加している一方で、臨床研究の論文は増えていないので、若手研究奨励賞(YIA)の臨床研究については応募年齢の上限を41歳未満に引き上げるなどの対策を行うことにした。

 さらに、DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬が多数発売されているのを受け、疫学研究や臨床研究に関する倫理指針の遵守がますます求められるようになった。これを受けて、会員の研究活動に係る倫理行動規範の具体的指針としてのQ&Aを、学会のウェブサイトで公開する予定だという。

 これ以外にも、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との連携を重視し、例えばSGLT-2阻害薬では65歳以上の患者では全例調査を行いエビデンスを集積し安全性を確認するなどの対策を行う。さらに、女性研究者・専門医の育成(糖尿病専門医の26%が女性会員が占める)や、内科のサブスペシャリティーとしての糖尿病専門医の臨床研修体制の強化を推進する。昨年11月に京都で開催された第9回国際糖尿病連合西太平洋地区会議(会長:清野裕氏)などの国際連携活動を通じて、日本を含むアジア地域の糖尿病の特性を明らかにし、効果的な治療法・予防法の確立を目指す。

 これらの活動によって、ここ数年の糖尿病の血糖コントロールは改善傾向にあり、糖尿病予備群数がはじめて減少に転じ、糖尿病腎症が原因の透析導入患者の増加傾向がこの数年で抑えられているなど成果があらわれているが、合併症予防の観点からはまだ十分ではなく課題が残されているとした。

 そのため、今後は「Breaking up with Diabetes(糖尿病のない世界を目指す)」を目標とすべきとした。糖尿病患者の健康寿命やQOLを改善し人生を謳歌できるようにする糖尿病臨床と研究の開発や社会基盤の整備に加えて、根本的な糖尿病の予防・治療法まで視野に入れる。患者の体質や遺伝的背景にもとづく個別化医療に加え、膵臓・膵島移植やIPS細胞による再生医療なども推進していく必要があるとしている。

特集:第57回日本糖尿病学会年次学術集会

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日本糖尿病学会アクションプラン「DREAMS」で「糖尿病解決先進国」を目指す

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