2型糖尿病患者にCGMとインスリンポンプを使用 開発中の血糖降下薬 他【第84回米国糖尿病学会(ADA 2024)ダイジェスト2】
2024.07.03
第84回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA 2024)が、2024年6月21日~24日にオーランド コンベンション センターで開催された。発表された研究のダイジェストをご紹介する。
- 2型糖尿病患者に対するCGMとチューブレス インスリンポンプは有用 HbA1cが大幅に改善
- プラスチック製品のビスフェノールAが2型糖尿病に直接影響 治療にも関与
- 管理困難な2型糖尿病患者の4人に1人が高コルチゾール血症
- 新規のGIP/GLP-1/グルカゴンのトリプル受容体作動薬を開発
- GLP-1/グルカゴンのデュアル容体作動薬の第2相試験 除脂肪体重を減らさず大幅の体重減少
- 妊娠糖尿病を初期に管理し合併症を予防すれば健康状態を長期的に改善できる Lancetで特集
- [ADA2024 ダイジェスト1]GLP-1受容体作動薬など糖尿病研究のブレイクスルー 他
- [ADA2024 ダイジェスト2]2型糖尿病患者にCGMとポンプを使用 開発中の血糖降下薬 他
- [ADA2024 ダイジェスト3]1型糖尿病の最新情報 幹細胞由来膵島細胞移植 他
2型糖尿病患者に対するCGMとチューブレス インスリンポンプは有用 HbA1cが大幅に改善 |
---|
2型糖尿病患者に対する、持続血糖モニター(CGM)と自動インスリン投与システム(AID)の併用により、血糖管理とQOLが大幅に改善したと発表された。 2型糖尿病成人を対象としたSECURE-T2D ピボタル試験は、新規のインスリン ポンプであるOmnipod 5 AID システムを評価した初の大規模多施設研究。さまざまなインスリン療法(基礎・追加インスリン、混合インスリン、基礎インスリンのみ)を行っている、ベースラインのHbA1cが12.0%未満の18~75歳の2型糖尿病の成人305人が参加した。 主な結果として、同システムの使用により、HbA1cはベースライン平均値の8.2±1.3%から試験終了時には7.4±0.9%に大幅に低下し[治療効果: マイナス0.8%、95%CI マイナス1.0~マイナス0.7、p<0.001]、もっとも大きな改善がみられたのは、ベースラインのHbA1cがもっとも高い患者だった。 Omnipod 5 AID システムは、CGMで取得したデータにもとづきインスリン投与量を自動的に調整するチューブレス インスリンポンプ。血糖値にリアルタイムで反応し血糖管理を改善し、糖尿病患者の手動インスリン投与の負担を軽減するとしている。 「CGMとインスリンポンプの使用により、2型糖尿病患者の血糖コントロールが大幅に改善し、QOLも向上する」と、エモリー大学グローバルヘルスの Francisco J. Pasquel氏は述べている。 |
プラスチック製品のビスフェノールAが2型糖尿病に直接影響 治療にも関与 |
---|
プラスチック容器など多くの製品に用いられている工業用樹脂の原材料であるビスフェノールA(BPA)が、成人の2型糖尿病リスクに直接影響をおよぼし、インスリン感受性を低下させることが、カリフォルニア州立工科大学の研究で示された。 同大学運動生理・公衆衛生学部の教授および学部長のTodd Hagobian氏らは、BPAのインスリン感受性への影響を評価するために二重盲検試験を実施。40人の参加者(男性 18人、平均年齢 21.3歳、平均BMI 22.1)に、米国での安全用量のEPA(体重1kgあたり50μg)あるいはプラセボを4日間投与した。 その結果、BPA投与の4日後に末梢インスリン感受性が低下したことが示された[P=0.01]。体重や空腹時血糖値などは両群で有意差はなかったが、末梢インスリン感受性はBPA群で有意に低下し[0.11±0.01、0.10±0.01mg/kg/分/uU/mL、P=0.01]、プラセボ群では安定していた[0.09±0.01、0.10±0.01mg/kg/分/uU/mL]。 「ステンレススチールやガラスのボトル、BPAフリーの缶の使用など、BPAへの曝露を減らすことで糖尿病リスクを下げられる可能性がある」と、Hagobian氏は指摘している。「BPAへの曝露により2型糖尿病のリスクが増加する可能性があることが、はじめてエビデンスとして示された」と、米国糖尿病学会(ADA)の最高科学・医学責任者でハーバード大学医学部の准教授であるRobert Gabbay氏は述べている。 |
管理困難な2型糖尿病患者の4人に1人が高コルチゾール血症 |
---|
血糖管理が困難な2型糖尿病患者では、高コルチゾール血症が関与している可能性があることが、複数の治療薬を投与しているにもかかわらず2型糖尿病の管理が困難(HbA1c 7.5~11.5%)な成人患者を対象に実施されている前向き第4相試験であるCATALYST研究で示された。 研究グループは、1,000人以上の患者をスクリーニングし、夜間の1mgデキサメタゾン抑制試験(DST)を実施し、DST後の朝のコルチゾール値が1.8μg/dL超え、デキサメタゾン値が140ng/dL以上である高コルチゾール血症の患者を検出。24%の患者に高コルチゾール血症が認められ、とくに3種類以上の高血圧薬を投与している患者では有病率は約3人に1人に上った。 さらに、CTスキャンでは、高コルチゾール血症患者の約3分の1に副腎異常が認められ、約4分の1に副腎腫瘍が認められた。このことから、外科的介入により高コルチゾール血症を解消し、糖尿病管理を改善できる可能性も示唆された。 「研究は、コントロールが困難な2型糖尿病患者での高コルチゾール血症のスクリーニングの重要性を強調するものだ」と、ノースカロライナ大学糖尿病センターなどのJohn Buse氏は述べている。 |
CATALYST: A Phase 4 Study of Hypercortisolism in Patients with Difficult-to-Control Type 2 Diabetes Despite Receiving Standard-of-Care Therapies Assessing Prevalence and Treatment with Mifepristone (American Heart Journal 2024年1月) |
新規のGIP/GLP-1/グルカゴンのトリプル受容体作動薬を開発 |
---|
イーライリリーが開発中の新規のGIP/GLP-1/グルカゴンのトリプル受容体作動薬であるretatrutideの第2相試験の結果が発表。retatrutide 8mgと12mgの48週間の投与により、それぞれ22.8%と24.2%の体重減少が示された。 retatrutideの投与により、インスリン分泌指標であるHOMA2-Bとアディポネクチンが増加することが分かり、さらにインスリン前駆体であるプロインスリンとインスリン抵抗性指標であるHOMA2-IRが改善したことから、インスリンを産生するβ細胞にかかるストレスのマーカーを減少させることも示された。 Retatrutideは現在、2型糖尿病患者あるいは2型糖尿病ではない肥満患者を対象とした第3相試験であるTRIUMPH およびTRANSCENDが進行中。 |
A review of an investigational drug retatrutide, a novel triple agonist agent for the treatment of obesity (European Journal of Clinical Pharmacology 2024年2月) |
GLP-1/グルカゴンのデュアル容体作動薬の第2相試験 除脂肪体重を減らさず大幅の体重減少 |
---|
バイオ製薬会社のAltimmuneが開発中のGLP-1/グルカゴンのデュアル容体作動薬であるpemvidutideの第2相試験MOMENTUMの結果が発表された。糖尿病のない過体重・肥満成人391人に対する48週間のpemvidutideの投与により、最高用量では体重は平均して15.6%減少した。除脂肪体重の減少はわずか21.9%で、体重減少の78.1%は脂肪によるものだった。 pemvidutideによる、心血管疾患のリスク軽減に役立つ可能性がある血液や肝臓中の脂質(コレステロールやトリグリセリドなど)の大幅な減少など、いくつかの潜在的な利点が特定された。さらに、体組成サブスタディでは、除脂肪体重の維持率がクラス最高であることが示された。筋肉を含む除脂肪体重の維持は、身体機能の維持と骨折リスクの低減に不可欠と考えられる。 「pemvidutideの投与が減量の質と肥満にともなう心血管代謝関連合併症に重要な影響をおよぼす可能性があることを実証した。長期的な体重管理では、除脂肪体重の維持が患者のケアにとって重要になる」と、コーネル大学病院の内分泌代謝・糖尿病学のLouis J. Aronne氏は述べている。 |
Altimmune Presents Data From Phase 2 MOMENTUM Trial Of Pemvidutide In Obesity During Oral Presentation At The American Diabetes Association’s 84th Scientific Sessions |
妊娠糖尿病を初期に管理し合併症を予防すれば健康状態を長期的に改善できる Lancetで特集 |
---|
「Lancet」に掲載されたシリーズ論文によると、妊娠糖尿病(GDM)は世界的にもっとも一般的にみられる妊娠合併症であり、妊娠7回に1回(14%)が罹患している。GDM発症の基礎は妊娠前に形成され、代謝の変化は妊娠初期(14週前)に検出されることが多い。ただし、GDMの検査と治療は一般的に、妊娠後期(24~28週)の後半になってから行われている。 妊娠・出産の合併症を減らし、その後の人生で健康状態の悪化を発症するリスクを減らすために、早期の検査と診断を行うことを含め、女性の生涯を通じてGDMを予防し管理するための戦略を早急に導入するよう必要がある。 「GDMの病態は複雑であり、管理するための万能のアプローチはない。患者の個別のリスク要因と代謝プロファイルを考慮し、妊娠期間中のガイドとして役立て、その後もサポートを継続すれば、母子ともに最良の健康成果を達成できる可能性がある」と、オーストラリアのウェスタンシドニー大学のデイビッド シモンズ教授は述べている。 世界的な肥満の増加にともない、生殖年齢の女性の耐糖能障害および2型糖尿病の比率は、過去20年間で複数の国で2~3倍に増加している。GDMと診断された女性は、GDMを経験しなかった女性と比較して、後に2型糖尿病を発症するリスクが10倍高くなることが知られている。 |
The Lancet Series on gestational diabetes (Lancet 2024年6月20日) |
[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]