SGLT2阻害薬が急性心不全による入院・死亡リスクを低減 ダパグリフロジンが急性心不全の潜在的な治療法になる可能性

2024.05.08
 SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン」が、急性心不全(AHF)による入院・死亡リスクを低減する潜在的な治療法となりうることが、米国のヴァンダービルト大学医療センター(VUMC)とリップスコム大学による医師主導の多施設試験で示された。

 ダパグリフロジンは、肺からの過剰体液の除去を促す利尿作用により、うっ血性心不全を緩和し入院期間を短縮するとしている。

 「急性心不全による入院後1日目以内にダパグリフロジン投与を開始することの安全性と有効性を実証した。ダパグリフロジンは、体重ベースの利尿効率の有意な低下とは関連していなかったが、AHF患者の利尿増強と関連していた」と、研究者は述べている。

急性心不全患者でのダパグリフロジンの有効性と安全性を検証

 SGLT2阻害薬「ダパグリフロジン」が、急性心不全(AHF)による入院・死亡リスクを低減する潜在的な治療法となりうることが、米国のヴァンダービルト大学医療センター(VUMC)とリップスコム大学による医師主導の多施設試験で示された。

 ダパグリフロジンは、肺からの過剰体液の除去を促す利尿作用により、うっ血性心不全を緩和し入院期間を短縮するとしている。利尿薬や診療ガイドライン推奨の心不全治療(GDMT)と異なり、ダパグリフロジンの早期開始によりAHFの治療目標を達成できる可能性があるとしている。

 SGLT2阻害薬であるダパグリフロジン(フォシーガ)は、当初は2型糖尿病の治療薬として承認されたが、その後は1型糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病に対する追加承認も取得している。心不全に関しては、入院や心血管死のリスクを軽減する効果が示されている。

 研究は、リプスコム大学救急医療研究イノベーションセンター(CERI)のSean Collins教授、同大学薬学部のZachary Cox教授らによるもの。研究成果は、「Journal of the American College of Cardiology」に掲載された。

 急性心不全の治療に関しては十分なエビデンスはなく、体液の蓄積による症状や肺うっ血を改善するために利尿薬が投与されることが多いが、利尿薬療法の最適なアプローチは十分に定義されておらず、これが入院期間の長期化と高い死亡率および再入院率の一因となっている。

 さらに、利尿薬に反応しない患者も多く、半数の患者は持続的なうっ血とともに退院している。そうした患者は退院後に短期間でさらなる心不全治療のために再入院する可能性がある。

 そこで研究グループは2020年4月に、急性心不全により入院した患者を対象に、SGLT2阻害薬により無作為化臨床試験を開始した。

 240人の患者を、血液量過多による急性心不全による入院から24時間以内に、ダパグリフロジン10mgを1日1回投与する群、あるいは利尿剤の漸増をともなうプロトコール化された通常治療群に無作為に割り付け、5日目あるいは退院まで検討した。

 主要評価項目である利尿効率を、ループ利尿薬の累積用量あたりの累積体重変化としてあらわし、ベースラインの体重に対して調整した比例オッズモデルにより比較した。副次的および安全性の結果は、盲検化された委員会によって判定された。

 その結果、利尿効果に関しては、ダパグリフロジン群と通常治療群とのあいだに差はなかった[OR 0.65、95%CI 0.41~1.02、P=0.06]。ダパグリフロジンは、ループ利尿薬の用量の減少[560mg〔Q1~Q3:260~1,150mg〕 対 800mg〔Q1~Q3:380~1,715 mg〕、P=0.006]、および静脈内利尿薬の漸増量の減少と関連し[P≤0.05]、通常治療群と同等の減量を達成した。

 さらに、ダパグリフロジンの早期投与開始により、糖尿病、腎臓、心血管の安全性事象は増加しなかった。ダパグリフロジンは、24時間ナトリウム利尿の中央値[P=0.03]および尿量[P=0.005]の改善と関連しており、5日間の研究期間中により早く退院した。

 「今回の研究で、急性心不全による入院後1日目以内にダパグリフロジン投与を開始することの安全性と有効性を実証した。ダパグリフロジンは、体重ベースの利尿効率の有意な低下とは関連していなかったが、AHF患者の利尿増強と関連していた」と、Cox教授は述べている。

 「ダパグリフロジンは、診療ガイドライン推奨の心不全治療の選択肢となりうる要素を満たすと考えられる」としている。

 米国ではAHFにより毎年、80万人が緊急治療室に搬送されており、そうした患者は長期入院や死亡のリスクが高い。米国でのAHFによる治療費は年間340億ドル(5.6兆円)を超えると推定されている。

 なお今回の研究は、アストラゼネカが資金提供した医師主導試験で、ヴァンダービルト大学医療センターの医師が独自に実施したものとしている。同センターによる急性心不全の研究は、米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)による部分的な支援を受けている。

Advance in the treatment of acute heart failure identified (ヴァンダービルト大学医療センター 2024年4月25日)
Efficacy and Safety of Dapagliflozin in Patients With Acute Heart Failure (Journal of the American College of Cardiology 2024年4月9日)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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