SGLT2阻害薬の中止の理由で多いのは「頻尿」 日本の糖尿病患者が対象のリアルワールド研究 京都府立医科大学
日本人患者がSGLT2阻害薬を中止する理由でもっとも多いのは「頻尿」
SGLT2阻害薬は血糖降下作用に加え、心腎の保護効果があることが知られおり、単剤では低血糖を起こすリスクが低いこともあり、日本で処方が増えている。一方で、SGLT2阻害薬には、尿路・性器の感染症、多尿・頻尿、脱水、ケトアシドーシス、ケトン体増加などの副作用がともなうことがあり、投薬の中止が必要となることは少なくない。
SGLT2阻害薬の投与が中止された糖尿病患者のうち、中止の理由として多いのは、投与期間に関係なく、「頻尿」であることが、京都府立医科大学の研究により明らかになった。
研究は、同大学で進行中の後ろ向きコホート研究である「KAMOGAWA-A研究」の参加者のうち、2014年1月~2021年9月にSGLT2阻害薬の投与を開始した糖尿病患者766人を対象としたもの。
対象となった患者は、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、カナグリフロジン、ルセオグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン)のいずれかを2年にわたり投与されていた。
全体として、12.7%(97人)の患者が、追跡期間中にSGLT2阻害薬を中止しており、中止した期間は、開始後3ヵ月未満が22.7%、3ヵ月以上12ヵ月未満が44.3%、12ヵ月以上24ヵ月未満が33.0%だった。
投与を中止した理由で多かったのは、「頻尿」(19.6%)、「性器感染症」(11.3%)、「血糖コントロールの改善」(10.6%)、「腎機能障害」(8.2%)、「尿路感染症」(7.2%)だった。糖尿病ケトアシドーシスによる中止は3.1%(3例)で、いずれも正常血糖ケトアシドーシスではなく、うち2例が1型糖尿病患者だった。
SGLT2阻害薬を中止した患者数は、投与の3ヵ月以内に、疲労や尿路感染症を理由に増加する傾向がみられた。また、血糖管理の改善によりSGLT2阻害薬を中止した群を除くと、中止群の患者は継続群の患者に比べ高齢だった(64歳[53~71歳] 対 68歳[55~75歳]、p=0.003)。
なお、対象となった患者は、男性が57.6%、いずれも中央値で年齢は64歳、BMIの25.3(中央値)、HbA1cは7.9%(中央値)だった。6.9%(53人)が1型糖尿病と診断されており、22.8%(175人)がインスリンを使用していた。
研究は、京都府立医科大学大学院内分泌・代謝内科学の西條優斗氏、福井道明教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。
「日本人の糖尿病患者では、SGLT2阻害薬の中止の理由としてもっとも多いのは頻尿であることが、リアルワールド研究により明らかになった。投薬中止を避けるためには、頻尿を引き起こす可能性のあるさまざまな要因に対する予防措置を講じる必要がある」と、研究者は指摘している。
京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学
KAMOGAWA-DMコホート