日本循環器学会・日本心不全学会が「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表

2023.06.22
 糖尿病治療薬として広く使用されているSGLT2阻害薬について、心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者における心不全予防のみならず、2型糖尿病の合併や左室駆出率を問わず、心不全患者での標準的治療薬のひとつとして、その使用機会が増加しているのを受け、日本循環器学会と日本心不全学会は、「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表した。SGLT2阻害薬の位置づけや使用上の注意点などをふまえた内容になっている。

日本循環器学会・日本心不全学会が「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表

 SGLT2阻害薬が心不全患者に対する標準的治療薬のひとつとして使用機会が増加しているのを受け、日本循環器学会と日本心不全学会は、日本循環器学会と日本心不全学会は、「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表した。

 SGLT2阻害薬が、心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者における心不全予防のみならず、2型糖尿病の合併や左室駆出率を問わず、心不全患者での標準的治療薬のひとつとして、その使用機会が増加しているのを受けたもので、SGLT2阻害薬の位置づけや使用上の注意点などをふまえた内容になっている。

 SGLT2阻害薬は、2015年以降に公表された心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者を対象とした心血管アウトカム試験で、入院を要する心不全イベントのリスクを低下させることが、相次いで報告された。

 これを受けて、日本循環器学会と日本心不全学会は「急性・慢性心不全診療ガイドライン」(2017年改訂版)で、SGLT2阻害薬について、心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者での心不全予防として、推奨クラスI・エビデンスレベルAに位置づけた。

 さらに、2021年フォーカスアップデート版同ガイドラインでは、心不全を合併した2型糖尿病患者での糖尿病治療薬として、推奨クラスI・エビデンスレベルAに位置づけた。

 その後、2019年以降に公表された、2型糖尿病の有無にかかわらず左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象とした大規模臨床試験で、同薬が心不全イベントリスクを低下させたことから、2020年以降に心不全患者への適応が拡大された。

 同ガイドラインでも、最適な薬物治療が導入されている症候性の慢性心不全患者(HFrEF)に対する心不全治療薬として、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンが、推奨クラスI・エビデンスレベルAに位置づけられている。

 さらに、2型糖尿病の有無にかかわらず左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者を対象とした大規模臨 床試験でも、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンが心不全イベントを抑制することが明らかになり、HFpEFに対しても適応となった。

 SGLT2阻害薬が、心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者における心不全予防のみならず、2型糖尿病の合併や左室駆出率を問わず、心不全患者での標準的治療薬のひとつとして、その使用機会が増加している。

 そこで両学会は、日本循環器学会と日本心不全学会は、「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表した。

 「心不全患者にSGLT2阻害薬を使用する場合には、本Recommendationをもとに、心不全診療ガイドラインや、日本糖尿病学会および日本腎臓学会のSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationもあわせて参考にしていただきたい」としている。

心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation

  •  心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬は入院を要する心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  •  心不全患者において、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジンとエンパグリフロジン)は2型糖尿病の合併・非合併および左室駆出率にかかわらず、心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  •  心不全患者では利尿薬を使用する頻度が高く、SGLT2阻害薬の併用により過度の体液量減少をきたすリスクがあるため、腎機能や電解質等のモニタリングを適宜行い、必要に応じて利尿薬や降圧薬の用量を調節する。
  •  2型糖尿病を合併したSGLT2阻害薬を使用中の心不全患者が、食事摂取制限をともなう手術を受ける場合には、手術3日前から休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。一方、2型糖尿病を合併しない心不全患者では、術前の終日絶食日にSGLT2阻害薬を休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。なお、2型糖尿病の合併・非合併にかかわらず、SGLT2阻害薬を服用中の心不全患者が緊急手術を受ける場合には、同薬の休薬についてリスクとベネフィットを十分に勘案して現場での判断を許容する。いずれの場合においても、心不全患者においてSGLT2阻害薬を休薬する場合には、休薬にともなう心不全増悪時も含め必要に応じて循環器専門医への紹介を考慮する。
  •  SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の合併の有無にかかわらず心不全患者においても尿路・性器感染症の発生・増悪が懸念されるため、リスクとベネフィットを十分に勘案して適応を検討し、投与後は注意を払う必要がある。
  •  心不全患者においてSGLT2阻害薬を使用する場合、各薬剤の添付文書および本Recommendationを踏まえて適正に使用する。糖尿病や慢性腎臓病の併存する病態に応じて日本糖尿病学会および日本腎臓学会のSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationも参考にする。

一般社団法人 日本循環器学会
一般社団法人 日本心不全学会
日本循環器学会・日本心不全学会「心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」 (日本心不全学会 2023年6月16日)
急性・慢性心不全診療ガイドライン(日本循環器学会)

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~
妊婦の糖代謝異常(妊娠糖尿病を含む)の診断と治療 糖尿病を有する女性の計画妊娠と妊娠・分娩・授乳期の注意点 下垂体機能低下症、橋本病、バセドウ病を有する女性の妊娠・不妊治療
インスリン・GLP-1受容体作動薬配合注 GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド) CGMデータを活用したインスリン治療の最適化 1型糖尿病のインスリン治療 2型糖尿病のインスリン治療 最新インスリン注入デバイス(インスリンポンプなど)
肥満症治療薬としてのGLP-1受容体作動薬 肥満症患者の心理とスティグマ 肥満2型糖尿病を含めた代謝性疾患 肥満症治療の今後の展開
2型糖尿病の第1選択薬 肥満のある2型糖尿病の経口薬 高齢2型糖尿病の経口薬 心血管疾患のある2型糖尿病の経口薬

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料