SGLT2阻害薬「ジャディアンス錠」の適応がすべての成人心不全患者に拡大 FDAが承認
ジャディアンス錠は左室駆出率が保持された心不全患者にとっても選択肢に
FDAによる今回の承認は、第3相EMPEROR-Preserved試験の結果にもとづいている。同試験では、LVEFが40%を超える成人心不全患者5,988人を対象に、ジャディアンス錠10mg1日1回およびプラセボを標準療法に追加し、比較評価が行われた。
主要評価項目でジャディアンス群は、心血管死または心不全による入院の相対リスクを21%低下した(絶対リスク低下3.3%、0.79 HR、0.69-0.90 95% CI)。EMPEROR-Reduced試験も含めた解析では、左室駆出率に関わらず一貫したベネフィットが得られた。
EMPEROR-Preserved試験の重要な副次評価項目の解析から、ジャディアンスが心不全による入院の初回発現および再発の相対リスクを27%減少させることが明らかになった(ジャディアンス407件vs. プラセボ541件、0.73 HR、0.61-0.88 95% CI)。
EMPEROR慢性心不全の臨床試験プログラムは、2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、ジャディアンスの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する2つの第3相無作為化二重盲検試験で構成される。
EMPEROR-Reduced試験では、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者でのジャディアンスの安全性と有効性が評価された。EMPEROR-Preserved試験では、5左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者でのジャディアンスの安全性と有効性が評価された。
ミシシッピ大学医学部長のJaved Butler氏(M.D.)は、次のように述べている。
「第3相試験で、ジャディアンスは、左室駆出率を問わない心不全患者で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるベネフィットを示しました。今回の承認は、実証されたベネフィットによって、治療選択肢が限られている、左室駆出率が保持された心不全を有する米国の約300万人の成人患者さんの大きなアンメットニーズに対応できることを意味しています」。
ジャディアンスは、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクを上昇させる可能性があるため、1型糖尿病の患者には使用できない。また、2型糖尿病の成人患者でeGFR30mL/分/1.73m²未満の患者では効果が得られない可能性があるため、血糖コントロール改善の目的では使用できない。ジャディアンスの対象患者は、eGFRが20mL/分/1.73m²以上の成人慢性心不全患者。
また、ジャディアンスや、添加剤に対する過敏症の既往歴(浮腫など)がある患者、および透析を受けている患者は、ジャディアンスの使用は禁忌となる。
日本でのジャディアンス錠10mgの腎機能障害患者への投与に関連する注意には次の記載がある。
<2型糖尿病>高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者投与しないこと。本剤の効果が期待できない。
<慢性心不全>高度腎機能障害患者でeGFRが20mL/min/1.73m²未満の患者では、投与の必要性を慎重に判断すること。本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがある。eGFRが20mL/min/1.73m²未満の患者又は透析を要する腎機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。
なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は、2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。なお、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠10mg。また、慢性心不全の効能又は効果に関連する注意には次の記載がある。「左室駆出率の保たれた慢性心不全での本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」。
Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction(New England Journal of Medicine 2021年10月14日)
Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure(New England Journal of Medicine 2020年10月8日)
ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)
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