SGLT2阻害薬「ジャディアンス」がDPP-4阻害薬と比較して2型糖尿病患者の心血管イベントおよび心不全による入院のリスク低下と相関

2021.07.14
 EMPRISEリアルワールドエビデンス研究で、欧州、イスラエル、東アジアから得られたデータが発表され、SGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」は、DPP-4阻害薬と比較して、心血管アウトカムのリスク低下と相関することが明らかになったことを、ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーが発表した。
 心血管系疾患既往の有無を問わない成人2型糖尿病患者13万人以上を対象としたこの研究の結果は、全死亡の相対リスク減少(RRR)は45%、心不全による入院の相対リスク減少は29%、心筋梗塞、脳卒中、または全死亡を含む複合評価項目の相対リスク減少は33%となり、心血管系疾患既往の有無にかかわらず一貫していた。
 研究結果は、第81回米国糖尿病学会(ADA)学術会議で発表され、さらなる欧州の解析結果が2021年8月のESC総会で報告される予定。

全死亡、心不全による入院、透析を必要とする急性腎障害のリスク低下と相関

 EMPRISEリアルワールドエビデンス研究の中間解析により、SGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」は全死亡、心不全による入院、および透析を必要とする急性腎障害のリスク低下と相関することが示された。

 EMPRISEリアルワールドエビデンス研究では、12ヵ国の2型糖尿病患者約38万2,000人を対象に、2型糖尿病治療でのジャディアンスの包括的な臨床への影響をDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬(2種類の実薬対照)と比較し検討した。EMPRISE研究の目的は、米国、欧州、イスラエル、東アジアでの治療の有効性、安全性、医療資源の利用、医療費を評価すること。

 EMPRISE研究の結果から、ジャディアンスの安全性があらためて確認された。ジャディアンスは急性腎障害のリスクと関連しておらず、解析によると、透析を必要とする急性腎障害の相対リスク減少率は51%だった。下肢切断や骨折のリスクは、DPP-4阻害薬と同様だった。また、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが上昇したが、これはジャディアンスの既知の安全性情報と一貫した結果だった。

 EMPRISEリアルワールドエビデンス研究の結果は、ジャディアンスが心血管系疾患既往の2型糖尿病患者で、代謝だけでなく心血管および腎臓へのベネフィットを示すことを明らかにしたEMPA-REG OUTCOME試験の結果を補完している。同試験では、プラセボと比較して、心不全による入院は35%、全死亡は32%、腎症の発現または悪化は39%、それぞれ相対リスクが減少した。

 発表の筆頭著者である、テルアビブ大学サックラー医学部の教授兼副学部長のAvraham Karasik教授は、次のように述べている。
 「2型糖尿病を合併している場合、心不全による入院のリスクは最高5倍にまで上昇します。心不全は、患者さんのQOL(生活の質)と予後だけでなく、関連する医療費にも大きな影響を及ぼします。最新のEMPRISE研究の結果は、欧州、イスラエル、および東アジア全域のリアルワールドでのジャディアンスの影響を明らかにし、ジャディアンスが2型糖尿病患者さんの心血管合併症の減少に貢献することを裏付けています」。

 ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPOWERプログラムを策定し、幅広い心腎代謝疾患での心血管および腎臓の主要な臨床アウトカムに対するジャディアンスの影響を調べている。同プログラムを通じて、両社は、相互に関連する心腎代謝疾患に関する知識を進歩させるために取り組んでいる。8つの臨床試験と2つのリアルワールドエビデンス研究から構成されるEMPOWERプログラムは、心腎代謝疾患の患者の予後向上を目指す両社のアライアンスによる長期的な取り組みだ。世界で40万人以上の患者が参加している同プログラムは、これまでにSGLT2阻害薬について実施された臨床試験プログラムの中で最も幅広く包括的なものとなっている。

 なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび慢性心不全、腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。

Effectiveness and Safety of Empagliflozin in Routine Care in Europe and East Asia: Results from the EMPagliflozin compaRative effectIveness and SafEty (EMPRISE) Study(第81回米国糖尿病学会年次学術集会 2021年6月25日~29日)
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2015年11月26日)
The EMPagliflozin compaRative effectIveness and SafEty (EMPRISE) study programme: Design and exposure accrual for an evaluation of empagliflozin in routine clinical care(Endocrinology, Diabetes & Metabolism 2019年11月26日)

ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

スポーツとメンタルヘルス関連ホルモン 骨格筋ホルモンの代謝への影響・関連
糖尿病合併高血圧のマネージメント CKD合併高血圧のマネージメント(生活習慣修正・降圧薬治療) 本態性高血圧と血管調節異常、神経調節異常、ナトリウム調節異常 内分泌性二次性高血圧アップデート
肥満の外科治療-減量・代謝改善手術の最新エビデンス- 甲状腺結節の診断・経過観察の最新エビデンス 原発性アルドステロン症治療の最新エビデンス
糖尿病の各薬剤を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) 糖尿病関連デジタルデバイスのエビデンスと使い方 血糖推移をみる際のポイント!~薬剤選択にどう生かすか~ 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプや持続血糖測定器など)
タンパク質とアミノ酸の代謝 脂質の代謝 糖代謝の調節機構

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料