SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者で改善を示した初の薬剤に

2021.09.01
 ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、EMPEROR-Preserved第3相試験の結果を発表した。同試験で、SGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」は、成人の収縮機能が保たれた心不全(HFpEF)患者で、主要評価項目である心血管死または心不全による入院のリスクをプラセボに比べ21%と低下させた。

 このベネフィットは左室駆出率や糖尿病の有無にかかわらず認められ、ジャディアンスは、成人の収縮機能の低下した心不全(HFrEF)患者とHFpEF患者の両方で有意なアウトカム改善を示した最初の薬剤となった。

 副次評価項目の解析では、ジャディアンスは心不全による入院の初回および再発のリスクをプラセボと比較して27%低下させるとともに、腎機能の低下を有意に遅らせることも明らかになった。

 試験結果は、欧州心臓病学会(ESC 2021)で発表され、「New England Journal of Medicine」に掲載された。

HFpEF患者を対象とした臨床試験
ジャディアンスが心血管死または心不全による入院のリスクを21%低下

 世界中で6,000万人以上が罹患している心不全の約半数は、拡張期心不全としても知られる、左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の患者だ。HFpEFは、その有病率、転帰不良、そして現在までに臨床的に有効であることが証明された治療薬がないことから、「心血管領域で最大のアンメットニーズ」とされてきた。

 EMPEROR慢性心不全の臨床試験プログラムは、2型糖尿病合併または非合併のHFpEF患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、ジャディアンスの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する「EMPEROR-Reduced試験」と「EMPEROR-Preserved試験」の2つの第3相無作為化二重盲検試験で構成される。

 EMPEROR-Preserved試験には、5,988名の心不全患者が参加した。このうち左室駆出率(LVEF)が50%以上の患者は4,005名、LVEFが50%未満の患者は1,983名だった。試験に参加した患者は、無作為化され、ジャディアンス10mg(n=2,997)またはプラセボ(n=2,991)を1日1回服用する群に割り付けられた。この試験での全般的な安全性は、ジャディアンスの既知の安全性プロファイルと一貫していた。

 同試験で明らかにされたベネフィットは、EMPEROR-Reduced試験で得られた結果と同様だった。EMPEROR-Reduced試験では、成人のHFrEF患者を対象に検討が行われ、ジャディアンスは心血管死または心不全による入院からなる複合評価項目のリスクをプラセボと比べて有意に25%低下させることが明らかになった。これらの試験結果は、幅広い心不全の患者におけるエンパグリフロジンのベネフィットを示している。

 ドイツ・シャリテ ベルリン(Charité Berlin)の心不全専門医で、EMPEROR-Preservedの試験責任医師であるStefan Anker教授は次のように述べている。
 「左室駆出率が保持された心不全患者さんの診察にあたる専門医として、これまでその患者さんの状態を大きく改善する臨床的に証明された治療薬がないという厳しい現実に直面してきました。今回の結果は、何百万人もの左室駆出率が保持された心不全患者さんに希望をもたらすことが期待されます。主要評価項目の結果は、性別や2型糖尿病合併の有無、左室駆出率や腎機能の程度によらず、同様に改善を認めました。これらの結果は、エンパグリフロジンの有効性が幅広い患者層で認められ、好影響が期待できることを示唆しています」。

 「心不全は複雑で重篤な疾患であり、入院の主な原因となっています。心不全患者の死亡リスクは、入院回数が増えるほど、腎機能が低下するほど増加します。EMPEROR-Preserved試験でジャディアンスが有意なベネフィットをもたらすことが示されたことは喜ばしいです」と、ベーリンガーインゲルハイムでは述べている。

 ジャディアンスは現在、血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されている。また、欧州と米国では、成人のHFrEF患者に対する治療薬としても承認されている。現在、心筋梗塞後の心不全リスクの高い患者を対象に、ジャディアンスが心不全による入院または死亡に及ぼす影響を検討する試験が進行中。また、慢性腎臓病へのジャディアンスの影響を検討する試験も進行中。

 なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび慢性心不全、腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。

Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction(New England Journal of Medicine 2021年8月27日)
EMPEROR-Preserved: effect of empagliflozin on cardiovascular death and heart failure hospitalisations in patients with heart failure with a preserved ejection fraction, with and without diabetes(欧州心臓病学会(ESC)年次学術集会 2021年8月27日)
Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure(New England Journal of Medicine 2020年10月8日)

ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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