Vol.17 腎症重症化予防にむけて 『CKD診療ガイドライン2023』改訂ポイントを☑
関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 前部長
浜野 久美子 先生
診断前も後も、定期的に尿中アルブミンをチェック
糖尿病性腎症の診断において重要なのが、アルブミン尿です。典型的な糖尿病性腎症では、早期の段階で、微量のアルブミン(30〜299mg/gCr)が尿中に出現します。そのためアルブミン尿の検査は欠かせません。
では、診断された後はどうでしょうか?実は、腎症発症後も、尿中アルブミンの経過観察がとても重要です。一つは、早期の時点で適切な治療を行えば、腎症は改善する可能性があるためです。もう一つは、アルブミン尿が腎症の予後のみならず、心筋梗塞などの心血管疾患、さらには死亡のリスクに関わることが昨今わかってきたためです。
そのため『CKD診療ガイドライン2023』では、糖尿病性腎症の診断後も定期的な尿中アルブミン検査を行うことが強く推奨されるようになりました。検査は、3カ月に一度算定が可能です*。尿検査は定期的に行われているでしょうか。
糖尿病性腎症よりも広義の概念、Diabetic Kidney Disease(DKD:糖尿病関連腎臓病)には、アルブミン尿とeGFRの低下が乖離している例を含みますので注意が必要です。このような背景により、昨年日本糖尿病学会でも「糖尿病性腎症病期分類」が改訂されました。病期名が変更され、第1、2、3期はそれぞれ「正常アルブミン尿期」「微量アルブミン尿期」「顕性アルブミン尿期」となりました。「正常アルブミン尿期(第1期)」はアルブミン尿が正常でeGFR30以上のみで定義し、糖尿病性腎症あるいは他のCKDの存在を否定している訳ではありません。
*尿蛋白陰性の患者で微量アルブミン尿を疑う場合に限る
腎症に効果のある新しい薬剤
糖尿病の治療薬では近年、複数の臨床研究で、SGLT2阻害薬による腎症の抑制効果が示されており、『CKD診療ガイドライン2023』でも糖尿病性腎症の患者への使用が推奨されるようになりました。CKD患者に対する使用における注意点などについては、日本腎臓学会より公開されている「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」もあわせてご確認ください。
また、最近ではCKDに対する治療薬も新しく登場しています。非選択性ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬というタイプの薬剤で、「2型糖尿病を合併するCKD」を適応症としています。またSGLT2阻害薬でも、一部の薬剤で同様の適応が追加されており、2型糖尿病の有無にかかわらず使用できるものもあります。
腎症は早期の段階ですと自覚症状に乏しく、治療のイメージが付きづらいかもしれません。このような薬剤が処方される際は、ぜひその意味や期待される効果を説明いただくとよいと思います。