超高齢者におけるデバイスの利点と限界 ―SMBGやCGM、AIDなど―

2026.06.11
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シンポジウム 34「超高齢化時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか(日本糖尿病協会合同シンポジウム)」
発表日:2026年5月23日
演題:SMBGやCGM、デバイスの利点と限界
演者:松久宗英(健昭会なにわ病院・栄寿会天満病院/徳島大学先端酵素学研究所)

第69回日本糖尿病学会年次学術集会において、「超高齢化時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか」をテーマとしたシンポジウムが開催された。健昭会なにわ病院・栄寿会天満病院/徳島大学先端酵素学研究所の松久宗英氏は、高齢患者特有の身体的特徴などを背景に、持続血糖測定(CGM)やインスリンポンプ、自動インスリン注入(AID)などのデバイス活用の有用性と、介護職などとの連携の重要性について述べた。

超高齢者ダイアベティスの身体的特徴と治療目標

 まず、「超高齢者」の定義とは何か。2017年に日本老年学会・日本老年医学会が発表した提言1)では、65〜74歳を准高齢者、75〜89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者と定義している。一方、後期高齢者医療制度では75歳以上を後期高齢者としている。

 高齢者ダイアベティスの身体的特徴2)としては、まずインスリン分泌能の加齢性低下が挙げられる。さらに、骨格筋の量・質的障害によるインスリン抵抗性と身体機能低下、高血糖・低血糖が促進する認知機能の低下などがある。加えて、血管合併症や併存症の進行、骨の量的・質的障害による易骨折性など、糖尿病特有の合併症が加わることで大きな問題を抱えることになると松久氏は指摘した。

 実際に、健常人とダイアベティスのある人を比較した報告3)では、ダイアベティスのある人において骨格筋指数(SMI)の低下や握力の低下を示す割合が高いことが示されている。とりわけ1型ダイアベティスにおいては、65歳以上でSMI低下や握力低下が顕著に増加しており、早い時期から加齢による身体的な変化が表れていることが想定される。

 (超)高齢者ダイアベティスの治療目標としては、「血管合併症の発症・進展予防」「健康寿命の延伸」「ダイアベティスのない人と変わらない寿命の確保」といった、非高齢者と共通する項目に加え、「老年症候群の予防・早期診断」「重症低血糖とHHS(高浸透圧高血糖症候群)・DKA(糖尿病ケトアシドーシス)の急性代謝障害の予防」「患者本人や介護者の負担軽減」の3点が重要になる4)と松久氏は強調した。

SMBGの限界と介護職によるCGMサポートの可能性

 松久氏は、多くの超高齢者ダイアベティスに対して血糖測定が必要となるとして、以下の理由を挙げた。

  • インスリン分泌能の低下に対して、SU薬やインスリン製剤が必要な症例が一定数存在
  • 血糖変動が大きくなりやすい
  • 低血糖をきたしやすく、重症化しやすい
  • シックデイを契機に容易に急性代謝障害(HHS、DKA)に至る

 とくに、シックデイを早期に捉え、重症化を防ぐことが、いかに安全に治療を行えるかどうかの大きな課題となると指摘した。

 しかしながら、従来の血糖自己測定(SMBG)には、超高齢者ダイアベティスにとって多くの問題点があると松久氏は指摘。SMBGは煩雑な手技を伴うため、ピンチ力(指先でつまむ力)が低下して穿刺ができなかったり、血液量の低下でうまく測定できなかったりと、超高齢者自身での測定が困難になる場合があるという。また、夜間の血糖値を把握できないという欠点もある。

 患者自身でSMBGを行えない場合、家族や医療者、あるいは介護職がサポートすることになるが、松久氏は介護現場においては制度上の障壁があることを指摘。簡易血糖測定器による血糖値の読み取りや血糖測定は医行為にあたるため、原則として介護職が実施することはできないと、令和6年度老人保健健康増進等事業『原則として医行為ではない行為に関するガイドライン』で明記されている5)

 そこで重要な役割を果たすのが、持続血糖測定(CGM)の活用となる。現在使用可能なCGMである、FreeStyleリブレ2、Dexcom G7、ガーディアンコネクトは、インスリン治療中の全患者で使用できることを松久氏は説明。スマートフォンなどを通じてこれらCGMを使用することで、リアルタイムに血糖値が確認できる、高血糖・低血糖のアラート機能によってリスクを低減できるといったメリットがあるとした。さらに、非インスリン治療者においても、選定療養(施設基準有)や生活習慣病管理指導料(Ⅱ)の算定により短期間の使用が可能である。

 また制度面でも、利用者の同意を得た上で医療職と連携すれば、センサーの貼付などは介護職が行っても医行為にはあたらないと、前述の老人保健健康増進等事業のガイドラインで明示されている5)

 松久氏は、CGMは介護職との連携においても、決してハードルの高いものではないことを強調。介護職側とでCGMの知識を共有し、医療者側との連携をぜひ推し進めてほしいと述べた。CGMは装着が簡便であり家族の方や介護職でも可能であること、そしてアラートにより高血糖・低血糖への早い気付きが得られ即時的な対応も可能である。また、スマートフォンのデータを介して遠隔での家族の見守り、さらには医療者の介入までもが可能となる。

 一方でCGMには、皮膚トラブルや皮下出血、視力障害による機器使用の困難さ、高い医療コスト6)といった課題も存在するとしたが、少なくともSMBGよりも周囲のサポートが得やすいという点において、アドバンテージがあるのではないかと松久氏は述べた。

高齢者1型ダイアベティスへのインスリン治療の単純化

 続いて松久氏は、高齢者1型ダイアベティスに対するインスリン治療の単純化に関する知見として、TANGO studyのサブ解析結果7)を紹介した。

 本試験では、カーボカウントや補正インスリンの計算を排し、食事の大小に応じた固定インスリン用量を用いたり、食事時のボーラスにのみ簡略化したインスリン量を設定したりするといった手法がとられた。同時に、CGMの低アラーム閾値を高めに設定して軽い低血糖への過剰な補食を防ぎ、高アラームはオフにして高血糖に対する反応的な追加インスリンを避けるといった「反応しない行動」を重視した結果、1週間の食後低血糖回数および食後高血糖回数が減少したと報告されている。

AID(自動インスリン注入) の有用性と期待

 NDBデータによると、1型ダイアベティスにおけるインスリンポンプの利用は、5~64歳の就労・就学世代が多くを占めており、高齢者への普及率は依然として低いのが現状である。しかしながら松久氏は、高齢者でもインスリンポンプが安全かつ有用であることを示す一例として、ポンプ治療歴16年となる90代女性の実例を講演内で提示。TIR(Time in Range)など非常に安定した血糖管理が実現できているという。

 また近年では、日本でもAID(自動インスリン注入)が臨床で実現しつつあるが、海外では高齢者1型ダイアベティスでのAIDの有用性がすでに報告されている8)。高齢者1型ダイアベティス(軽度認知障害〔MCI〕27%含む)を対象に、ハイブリッド型クローズドループ(HCL)、予測インスリン停止機能付きセンサー活用ポンプ(PLGS)、センサー活用ポンプ(SAP)の3機器によるクロスオーバー試験では、HCL群は70mg/dL未満の低血糖(TBR)の時間を有意に減少させた。

 松久氏は、すべての超高齢者に必ずしもAIDが推奨されるとは限らないとしつつも、ADLが自立している早期から導入することで、長期にわたってトラブルを低減させる可能性があることを指摘。また、遠隔による見守りに加え、AIDでは摂取糖質量の入力による補正インスリン量の自動調整などにより、一定程度の血糖管理が期待されうるとした。

 なお、超高齢者におけるAID利用にあたっては、① 本人または家族による装着・利用が可能、② トラブル時にペン型インスリン注射器で対応可能、③ 摂取糖質量の入力ができること(基礎カーボカウントでも十分)が必要な条件となりうるとした。また、最も危惧される点として、トラブル放置によるDKA発症のリスクがあるが、これには基礎インスリンを別途補充するなどの対応が検討されうるとした。

地域医療・介護連携に向けた今後の課題

 地域での医療・介護連携の取り組みとして、松久氏は徳島市の事例を紹介した。現在、徳島市では、市医師会と行政により介護士やケアマネージャー、社会福祉士等を対象に「徳島市糖尿病サポーター(TCDS)」制度を実施し、糖尿病に関する正しい知識をもつ医療・介護専門職を育成しているという。しかし、本サポーターの勤務する介護施設へのアンケート調査(18施設回答)では、CGMの装着・測定やCSIIの利用が「可能」と答えた施設はまだごく一部にとどまっているといい、今後の課題であるとした。

 最後に松久氏は、超高齢者時代におけるデバイス等の使用について、血糖測定が必要な場合、在宅医療者や介護職の装着支援によるCGMの活用が期待されると強調。その際、CGMのセンサーグルコース値はスマートフォンを介して家族や医療者に共有できる体制が望ましいとし、またAIDが必要な症例に対しては、ADLが自立している早期からの導入を行い、家族の支援によって継続性の向上を目指すことが重要であると述べた。一方で、地域単位でのデバイスに習熟した介護職スタッフの育成が急務であるとし、講演を締めくくった。

文献

  • 日本老年学会・日本老年医学会: 石川和幸著:高齢者の定義と区分に関する、日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言(概要). 2017.
    https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/definition_01.pdf
  • Zhu M, et al. : Aging (Albany NY). 2021; 13(5): 7691-7706.
  • Mori H, et al. : J Diabetes Investig. 2021; 12(6): 1050-1059.
  • 日本糖尿病学会・日本老年医学会編・著: 高齢者糖尿病治療ガイド2021. 文光堂, 東京, 2021
  • 厚生労働省: 令和6年度老人保健健康増進等事業 原則として医行為ではない行為に関するガイドライン. 2025. 2017.
    https://www.mhlw.go.jp/content/001489487.pdf
  • Kim H, et al. : BMC Geriatr. 2025; 25(1): 1021.
  • Toschi E, et al. : Diabetes Technol Ther. 2026; 28(2): 175-179.
  • Kudva YC, et al. : NEJM Evid. 2025; 4(1): EVIDoa2400200.
[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]
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